第2話

性に目覚めたのは遅かったと思う。


小学生の低学年の頃は男女なんて関係なく遊んでいたし、その中には花崎もいた。


一緒にアスレチックで遊んだり、サッカーしたり、ブランコから飛び降りるなんてやんちゃなことだってやっていた。


きっかけは日向の告白事件だ。


日向が告白しているシーンをみて、そして振られたときの表情と膝から崩れ落ちたその姿をみて、男女の好きがあるっていうことを知った。


それでもあまり意識せず、むしろそのことで揶揄われている日向が不憫に思えて、そのことには触れないように日向と話すようにした。


日向は揶揄われていることに対して怒って反抗していたが、それを周りは面白がって揶揄い続けていた。


それでも俺が違うことで話をしていくにつれて、みんな他の話題もするようになっていき、次第に揶揄われることも少なくなっていった。


日向は今でもそのことを感謝していると言ってくれた。


俺も日向がクラスになじめるようになって本当に良かったと思った。そうして一連の騒動が落ち着いたころにふと考えた。


「俺がもし女の子と付き合うってなったら、誰なんだろう」


そう考えた時に仲がいい女子を思い出すと、花崎の顔が浮かんだのだ。


その後もみんなで一緒に遊んでいたのだが、花崎の顔を見て目が合うのがなんとなく気まずくて、だんだんよそよそしくなっていった。


中学生になり、クラスの人数が増え、女子は女子、男子は男子で遊ぶようになった。あえて女子に話しかけに行くのも目立つと思い、花崎とも話すことは少なくなった。


そうなるとたまに話すときには緊張し、話さない期間が長くなるとますます意識してしまうという悪循環にも陥った。


気づいたときには好きという気持ちを否定することができなくなっていた。


しかも花崎はその間にもどんどん可愛くなっていった。


可愛い子がいると学校の男子全体で話題になり、上級生から下級生まで紳士協定を結んで告白する順番まで決めたという噂もあったほどだ。


自分はそこまでする熱意もないし、特別仲が良くない自分が選ばれることもないと思っていたため、告白するという気持ちにはならなかった。


そして今に至るわけだ。


「俺は盛大に振られたからもうスッキリしてるけど、涼風は告白しないのか?」


「……なんのことだ?」


日向が心の痛いところをつついてくる。が、同じ相手を好きになる状況というのも気まずいと思い、日向には花崎のことが好きだとは言っていない。


「涼風ってあんまり顔に出なくてわかりづらいけど、花崎さんを目で追ってること多いよなー」


意外と鋭いやつである。


「……そうかな、自分ではあんまり意識してなかったな」


「またまたー。……俺に気を使わなくていいんだよ?」


「今更日向に気を遣ったりなんかしないよ」


「…はは、そういうことにしておいてやるよ」


どうにも俺は自分の感情を出すのが下手のようである。


そんで普段は脳筋なのに、こういうところで気を遣うのがこいつのずるいところである。


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隠した恋の探し方 趾下薄板 @junnya52112

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