第40話 拓弥の異変
私は、再びチャレンジを再開した。私は、拓弥さんのマンションに向かい、合鍵を使って部屋に潜り込んだ。彼を説得するために、言葉の選び方やアプローチ方法、訪問時間を変えながら、何度も挑戦を繰り返した。それまでに9回のチャレンジを試みたが、どれも同じ結末に終わっていた。
成功まであと一歩のところまで行っても、突然彼の様子がおかしくなってしまい、全てが水の泡に帰してしまうのだ。
ループの効果で肉体的な疲労はリセットされるため、体力的な問題は起きなかったが、同じことを繰り返すストレスや、彼から受ける罵倒のストレスは、回復しないまま蓄積されていた。
徐々に、私自身が精神的に不安定になっていくような気がしてきた。状況が進展しないことに苛立ちを感じる一方で、心身共にリフレッシュする必要性を感じていた。
そこで私は今回の周は、ループが発動するまでの間、拓弥さんとの関係を一時的に置いておくことを決めた。その代わりに、以前集めていた少女漫画を一巻から読み返したり、外出して美味しいものを食べたり、映画館で映画を楽しんだりして、自由気ままに過ごした。心身ともにリフレッシュされた私は、ループが発動する直前まで自由行動を楽しんでいた。
ループが発動すると、私は元の時間に戻された。ループが発動する前に目標を達成しなければ、失敗とみなされるのだろう。それでも私は、次の周も同じように自由気ままに行動してから、再び拓弥さんのもとに向かうことにした。
バスに乗って拓弥さんのマンションに向かう途中、再びレジャックさんからLaneが届いた。
『彼の様子がおかしくなることには気づいているね。では、その時に彼のことを注意深く観察してごらん。』
レジャックさんからの連絡は、それだけだった。私も疑問に思っていることをLaneに書いて彼に送信しているが、これまで私の質問に返事が届くことは無かった。
予定通りに拓弥さんのマンションに到着し、いつも通りに説得を開始する。
「うぅ…。」
いつも通り説得の途中で彼は頭を抱え始める…。いつもこうなると様子がおかしくなることは分かっているのだ。ここでレジャックさんの言葉通り、彼の様子を注意深く観察することにした。すると…。
黒いもやのようなものが突如として表れて、彼を覆い尽くしていった…。
「えっ?これは一体…?」
不気味なもやの正体は、今のところ謎に包まれている。しかしその後、彼を見つめ続けていたとき、彼の周囲に何かが現れた。それは文字のようなもので、浮かび上がっているのである。私は文字を読む。どうやら『洗脳』と表記されているようだ。
「洗脳?まさか、拓弥さんが…」
もし彼の状態がこの文字通りの状態であるならば、彼がおかしくなってしまったのは、何者かによる洗脳が原因だということになるだろう。それを知る手がかりがあるというのは、驚きの極みだ。この不可思議な力も、レジャックさんによるものなのだろう。
とはいえ、洗脳とは怖ろしい言葉だ。彼を洗脳から解放する方法があるのだろうか?また、洗脳という概念自体、私にとってはあまりにも抽象的だ。そんなことが実在すること自体、私の中に疑念を抱かせてしまう。そんな恐ろしい力を持つ者が、現実に存在するなんて信じがたい。
あれこれ脳裏を様々が考えが飛び交うが、気づけば拓弥さんのマンションから離れて再び真っ白な空間に移動していたのであった…。
―――― to be continued ――――
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