第3話 いざ王城へ
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また、夢を見ていた…
「✕✕✕✕! 死してもなお、必ずや民のために国のの存続を死守しなければならない。
それが我々恵まれた我々の義務なのだ!」
「✕✕✕✕?ちゃんと聞いてるかい?
僕たちは誇りある者たちなんだよ。だけど、それに奢ってしまったら、僕たちはおしまいなんだ。盛者必衰の理をあらはすって言うでしょ。
そう、おしまいなんだ。」
「✕✕✕✕。貴方はあなた自身のために、必ず幸せになりなさい。
与えられる機会、与えられた環境は人それぞれかもしれないけど、幸せになる権利は誰にでも、平等にあるのよ。」
そう、私達は義務を果たそうとした。
そう、私達は、決して奢らなかった。
そう、私達は幸せになりたかった。
なのに、城は燃えた。
何がいけなかったの?
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「うぅぅ……おしまいだ……わ……」
「全く!お嬢様! 何を寝ぼけていらっしゃるんですか!?」
そう、今日は王城に文句をつけに行く日だ。
昨日あのあと、鬼い様ことお兄様が、婚約破棄についての説明を求める書簡を送った。が、その日中に返答があるはずなのになかったため、今日は王城に直接伺う旨の書簡を送ったのち、すぐにみなで出発する予定だ。
お気に入りのライラック色のシンプルなドレスを身に着け、日差しが強いので、淡い黄色の帽子をのせる。
昨日まで、寒かったのに、もう春らしさが出てきたのか、今日はとても暖かい。
しかし、天気と反対に、エリシアの心は重かった。
(絶対、これは王城についた途端、断罪されて、重い刑罰を与えられるんだわ! 私、悪いこと何をしたっけ?)
(王城の花壇の花を勝手に変えたこと?王城の大広間の厨房で盗み食いしたこと?テオドール様に渡すプレゼントは実はどれもサターシャに選んでもらってるとか?)
馬車の中で、主人の考えていることが読めてしまったサターシャが、そういうのじゃないと言いたげにしていた。
馬車は着実に王城に近づいている。
エリシアはとうとう、断頭台にあがるまでの時間を数え出し始めた。
思えばテオドールとエリシアの婚約は、エリシアが12才、テオドールが19歳のときに決められた。王城からの提案で決まったという。
テオドールとエリシアの年が少し離れているということから反対意見もあったが、王城からの強い希望という事で、この婚約は成立したのだった。
(強い希望だったくせに、なぜ今頃になって婚約を破棄するの?)
とエリシアは思うが、破棄されたことで自分が喜んでいるのも事実である。
テオドールとは必ず月に一度、王城にあるテオドールの庭の東屋でお茶をふたりでしなければならなかった。王太子であり、かなりいそがしいのにもかかわらず、テオドールは毎回のお茶会に現れてくれた。
これだけ聞くと、普通の婚約者に聞こえるのかもしれない。
(けどね、顔が死んでるの。話す内容はにこやかなのに、顔はちっとも笑っていない。)
テオドールが笑っているのをエリシアは見たことがない。
彼が常に自分には無表情を向けてくることは、自分がつまらないからかもしれないが、それにしても7年間一度も微笑みかけられたことがないというのは婚約者としては複雑だ。
その事実は、お茶会へ行くごとに、徐々にエリシアの心に疑念を抱かせたのだった。
『この人と愛し合い、幸せになるなんてむりかもしれない。』
そして、テオドールがくだんの姫巫女と笑いあって仲睦まじい姿を見てからは、その疑念は確信に変わった。
「お嬢様、到着しましたよ。」
いろいろ考えているうちに、王城に到着したようだッタ。
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