第6話 孔雀丸

 ところ変わって、ここは越後国えちごのくに──


 1410年、越後えちご守護上杉房方うえすぎふさまさに三男となる元気な赤ん坊が生まれる。幼名は「孔雀丸くじゃくまる」。


 ちなみに上杉房方ふさまさは関東管領山内やまのうち上杉憲定のりさだの兄である。


「おおっ! 無事に産まれたか!! よく頑張ったのう」

 房方ふさまさは正室である妻にねぎらいのことばをかける。


「この子はいずれ関東管領かんとうかんれいになるやもしれぬからのう。儂が手塩にかけて育ててみせようぞ!」


 房方ふさまさは今は亡き父親から、もし山内やまのうち上杉家に後継者が無い場合には、兄である自分が山内上杉家と関東管領かんとうかんれいを継ぐように命じられている。


 なお山内やまのうち上杉家の次期後継者候補は、においては弟である山内やまのうち上杉憲定のりさだの長男上杉憲基のりもとである。


 前述した通り、憲基のりもとはまだ19歳の若者でしばらくは寿命の心配はないが、憲基に子が出来ない場合などは、越後えちご上杉家を継いだ上杉房方ふさまさに白羽の矢が当たる可能性があり、その際この孔雀丸くじゃくまる関東管領かんとうかんれいを引き継ぐかもしれないという背景がある。



「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」


 そんな背景など微塵も知らない孔雀丸くじゃくまるは元気に泣きわめいており、今はしっかりと赤ん坊としてのまっとうしている。



 この孔雀丸くじゃくまる関東公方かんとうくぼうである幸王丸こうおうまるがのちに宿命的な出会いを果たす訳だが、それはもう少し先の事となる──

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