第5章 -1-
慎太郎は一旦ログアウトして、ウェブ上での情報収集に努める事にした。
昨夜は日本中で数千人規模の死傷者が出ているらしかった。
行方不明者も含めると、全容の把握までに相当時間が掛かりそうだ。
公けにはされていないが政府関係者にも被害が出ているらしい・・との噂が広まっていた。
『AIが人類に対してキバを剥いた』
このニュースは瞬く間に世界中に拡散され、世界規模での大騒ぎとなっている。
reViveの制作元である「
もちろん運営に問い合わせてみたが、AI Botが対応するだけで有力な情報は得られなかった。
AIDに悪戯をしていた動画は一夜にして軒並みアカウント毎削除されていた。
それらの動画を拡散していたアカウントも凍結されているらしい。
一時的な措置だというが、いつまで凍結されるのかは未定という事だ。
───「マスター」について、特に情報は得られないまま、数日が経過した。
テレビでは連日、reViveにアクセスした事がある人は毎日欠かさずログインするよう、
また、未経験者に対してはアクセスしないよう呼びかけている。
AIの開発を即時中止し全てのプログラム、リソースを排除すべきだ!と訴える団体が声を荒げている。
一方では、AIとの平和的な共存を望む団体も現れ、宗教的な様相を呈していた事もあり『マスター教』と揶揄されていた。
ほどなくして、reViveに関する動画は内容に関わらず削除され、アップロードする事が禁じられた。
動画を観た者も間接的に『3日ルール』が適用されてしまう事を懸念した措置だと伝えられた。
彼ら(AID)は、強力なサブリミナル的な、催眠術のようなモノで我々の行動を制御しているのではないか・・というのが専門家の見解だった。
どれだけの行動を制御する事が出来るのか解っておらず、とても危険な状況であると指摘する専門家もいて、自衛隊およびその関係者、政治家などでreViveに接触した人たちは例外なく厳しい管理下に置かれる事となった。
reViveの開発元では、不眠不休でのプログラム解析を強いられていたが、プログラムのコアとなる部分はブラックボックス化されており、解決への糸口を掴めずにいた。
それというのも、開発主任だった二階堂の行方が分からなくなっていたのだ。
随分前から連絡が途絶え、自宅はもぬけの殻となっていたらしい。
警察に捜索願を出すか検討していた矢先、「マスター」による報復が始まったのだ。
当然ながら『マスターの正体は二階堂 説』が浮上した。
警察は全力をあげて二階堂の行方を追っているが、未だ手掛かりは掴めていないようだった。
それどころか、彼に関する一切の経歴その他の情報は戸籍に至るまで奇麗サッパリ削除されており、手の付けようがないといったところだ。
最早その時点で、二階堂が犯罪に加担しているのは疑う余地が無いほどに真っ黒だったが、その事実が公表される事は無かった。
二階堂がマスターだったとしたら、この大量殺人の犯人はAIでは無く1人の人間による犯行という事になる。
しかし、二階堂らが作り上げたAIが独自の意志を持ち、自らの判断で犯行に及んだのだとすると・・・いったい誰が裁かれるべきなのか、世論も大きく割れる事になるだろう。
───空蝉町の公園。
慎太郎も含めた俺たちと、Nobu、Yui、Ken先生で集まって報告会を開いていた。
ここ数日、方々手を広げて情報収集に努めたが何の手掛かりも得られていない。
『町の中心にあるセントラルタワー。絶対にあそこが怪しいと思って行ってみたけど・・』
『中は普通の役所みたいで、AIDたちが仕事してるだけでしたね。』
「現実(リアル)の方では、開発主任の二階堂さんが行方不明だってニュースになっていたでござる。」
「二階堂さんが一番真相を知ってそうなんだけどなぁ・・・。そっちはきっと警察が捜査してくれるだろう。」
「メイドさんたちは何も知らないようでした...。」
今日の麻衣はメイド服姿だった。
「うーん・・確か『マスター』は、reViveを管理しているって名乗ってたよなぁ・・」
「そうすると、やっぱり役所みたいなとこに?セントラルタワーだっけ?」
『最上階の40階まで全フロアー見学させてもらったのだが、怪しいAIDは居なかったよ...。』
Ken先生は何かしらの権限を持っているらしい。
一般のAIDやアバターが入れない所への立ち入りも許可されていた。
なんとなくだけど、『マスターの正体は二階堂 説』が有力だと思うようになっていた。
そしてもうじき警察が二階堂さんを見つけ出してくれて、事件は収束していくのだろうと思っていた。
しかし数日後、『マスターの正体は二階堂 説』を覆すニュースが報じられた───。
『行方不明になっていた、reViveの開発主任を務めていた二階堂氏が発見された模様です。
〇△の山中にある別荘で発見されたミイラ化した遺体のDNAを調べた結果、二階堂氏のDNAと一致したという事です。
なお死後数ヶ月は経過していると見られ、「マスター」が現れるよりも前に亡くなっていた可能性が高く・・・・・・』
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