第6話


 葵たちを国道まで見送った後、俺と彼岸は弥勒亭へと向かった。弥勒亭は昔ながらの小さな定食屋だ。入り口にたぬきの像があることだけが気に食わないが。

「いらっしゃい!」

 元気よく挨拶をしてくれた弥勒、それから奥の厨房から顔を出した大将は彼岸をみて満面の笑みだ。

「おや、にいちゃんが噂の……へぇ、彼岸ちゃんもやるじゃんな。優しそうないい男じゃねぇかっ。おいちゃん嬉しいぜ」

「ちょっと、やめてくださいよ。尾崎は弟子ですから」

「弟子じゃねぇ!」

 そんなやりとりをしていると、弥勒が店の扉に<準備中>の札をかけると鍵を閉めてしまった。

「さ、なんでも好きなの頼んでいいわよ。尾崎、今日はあなたにたくさん働いてもらわなくちゃ」

 彼岸がニヤリと笑う。

 俺は店のお品書きを眺める。俺の知っている料理も知らない料理もたくさんあって、無論酒もあるようだ。きつねうどん、きつねそば……。油揚げのカリカリニンニク炒め……。鮎の塩焼き。どれもこれも美味そうで決められない。

「き、きつねうどん……それから、特選稲荷寿司を」



 結局、俺が頼んだきつねうどんと特選稲荷寿司の他にも大将のサービスでたくさんの料理が並んだ。元気な時の彼岸の食欲はすごいからな。

 特にこの「餃子」とかいう饅頭はうまい。最高にうまい。

「そんだけ美味しそうに食べてくれるとこっちも嬉しいっすよ」

 弥勒は得意げに笑いながら「きつねうどんは俺が作ったんすよ」と自慢をする。大したもんだ。

「尾崎はすごく気に入ってるのよ。大将、今夜弥勒を借りてもいいかしら?」

「おうよ、今日は予約も少ないからな。弥勒、彼岸ちゃんに力を貸してやんな」

 と言いながら大将はうまそうな狐色の何かをテーブルに置いた。

「これは?」

「カニクリームコロッケさ」

 蟹? ころっけ……?

「尾崎のにいちゃんの反応がおもしろくてな。是非食ってくれよ。絶対にうんまいからよ」

 ほかほかと湯気を上げるその俵状の塊はほのかに甘い香りがする。蟹といえば川にいるあのゴツゴツトゲトゲしたやつだろう? 食っても美味しくなった気がするが……。

「ふぅふぅするのよ、尾崎」

「うるせえ、平気だよ」

 彼岸にバカにされたような気がして俺はガブっとカニクリームコロッケとやらに噛み付いた。

「あらまあ……」

 噛みついた途端、サクッと小気味良い音がして中から灼熱の、あつあつのドロリとした何かが一気に広がる。口の中に炎でも入ったように熱いがうまい。甘くて、とろとろで香ばしい風味が絶妙だ。外側のサクサクと中のとろとろ……ごくんと飲み込んでしまえば美味い風味だけが口に残る。

「うんまっ……」

 熱いのを忘れてまた噛みついては、はふはふと口の中をさますために空気を送り込む。なんだ、これ……!

「いい反応だなぁ、まるで揚げ物初めて食ったみたいじゃねぇか」

 大将が満足げに俺を眺めている。俺は2個目のカニクリームコロッケを箸で割ってふぅふぅと良い温度に冷ましていた。

 蟹ってのはこんなに美味かったんだ。料理に関しては人間の右に出るものはいねぇな……。そりゃそうだ、数百年前の握り飯だって美味しかったんだ。今の料理は人間と同じように進歩して上手くなっているに決まってるじゃねぇか。

「ね、大将は絶対に尾崎を気にいると思ったわ」

「おぅおぅ、かわいいやつじゃねぇか。ほら、もっと食いな食いな」



 カニクリームコロッケを満喫して、俺と彼岸は彼岸堂へ戻ることにした。弥勒との約束は21時。それまでは先ほどの葵とさよの話を深掘りするのだ。

 お昼過ぎの太陽は眩しく、深い森の近くだが非常に明るかった。森の緑は太陽の光を浴びて気持ちよさそうに揺れている。花粉や虫たちの匂いが俺の鼻腔をかすめ、森にいる多くの生き物たちを感じ取った。俺だって、社に住んでいたあやかしの端くれだ。森が元気なら嬉しくもなる。

 彼岸堂にやってきて5日ほど、すっかり人間の暮らしに慣れてしまったが、やはりこの森が好きだ。

「お腹いっぱいかしら?」

「そうだな。このまま日向で昼寝でもしたい気分だよ」

「死神様は日向ぼっこをするのね」

「ふんっ」

 彼岸はクスクスと笑うと、彼岸堂の玄関を開ける。「ただいま」と小さくいうとリビングの椅子に腰掛けた。

「尾崎、あの子たちの記憶に入った時のことを教えてちょうだい」


 彼岸は暖かい茶を入れて、それから煎餅を二人の間に置いた。さっき腹一杯食ったはずなのに、煎餅を見ると口寂しくなる。

「そう、そんなことが」

 俺は事細かに、葵の記憶とさよの記憶を話した。彼岸は手帳に書き取りながら少しずつ事実を整理していった。葵の心に嘘はなかったこと、さよがいじめにあっていたこと。

「じゃあ、本当にさよは自殺じゃなくてあの美紅とかいう女に殺されたのか?」

「それはわからないわ」

「でも、さよだって何か訴えてたろ?」

「訴えてた。でも、否定か肯定かはわからない……でしょ?」

 確かに、さよの主張は否定か肯定かわからなかった。自殺じゃないかもしれないし、自殺かもしれない。

「わからないな。彼岸はわかるのか?」

 彼岸は煎餅を齧ると、薄笑いを浮かべた。何日も一緒にいるのに俺は全くこの女のことがわからない。

「でも、私たちのお客さまは生きている人だけじゃないのは確かよ」

「じゃあ、さよも?」

「えぇ、あなたは気がつかなったけど、峰田さんの時だって真奈美さんの思いも水に流したのよ」

 ちょっと自慢げな彼岸。ムカつく。俺は特大の煎餅をがりっと自慢の犬歯で砕く。悔しいけどうまい。こうやって彼岸に弄ばれるのも慣れたもんだ。ま、俺様の気まぐれで一緒にいてやってるんだ。小娘の戯れに付き合ってやってるだけだし。

「でもね、生きている人間はこれからも前に進まなくちゃならないわ。あやかしや幽霊のように悠久の時を生きることはできない。だから誰かに頼って、忘れていかないと前を向けないのよ」

 彼岸の言う通りだ。俺たちあやかしと人間は全然違う。人間は愚かで、バカでそれでいて……俺たちなんかよりもずっとずっと弱くて脆い。そのくせ、いじっぱりで強欲で優しい。

「俺はさ、さよの死体。気になってる。布が頭にかぶさってて……この箱」

 彼岸の描いた絵を指差す。記憶の中で葵はそれを「跳び箱」と呼んでいた。台形のバラバラになる箱だ。

「この箱が踏み台で、すっぽり顔に布かぶって……自殺なんかできんのかよって思ったんだよ。ほら、なんか変だろ」

 彼岸は口角を上げる。

「確かに、そうね。まるで絞首刑のようだわ」

 不気味な言葉を楽しそうに話しながら本棚から本を取り出すと俺の方に開いて見せた。その本は「死刑全集」とかいう非常に物騒なもの。彼岸がすごく楽しそうだからいいか。

「ほら、これ」

 絞首刑とかかれた頁には頭に布袋のようなものを被せられた人間が、まるでてるてる坊主のようにぶら下がっている絵が描かれていた。

 俺の脳裏に蘇るのは葵の記憶。体育倉庫でぶら下がった女学生の遺体。死体の匂い、縄のぎぃぎぃという音、葵の感情……。

「あぁ、確かにこんな感じだったよ」

「嫌なことを思い出させたわね」

「別に、俺は死神だし、このくらい……」

 大したことない。とは言えなかった。うら若き少女というのは美しいものだ。まだあの森が神聖なものだとされていたころ、俺の社は少女たちの溜まり場になっていたことがあった。少女というのは清らかでそれでいて危なっかしくて、少女である一瞬の時はとても儚いものだ。箸が転がっても笑い、その感情は大人のそれよりも豊かで、柔軟だ。



「お狐様、お狐様。私の恋は叶うかしら」

「ねぇお狐様、聞いてよ!」

「私幸せになれるよね? お狐様、お願いよ」



 いつの時代も少女たちの笑顔は俺たち人間が「神さま」と呼ぶあやかしにとって一番の幸福だ。俺を参拝する人間がすっかりいなくなって、森に訪れるのは死にに来る人間ばかりになって忘れてしまっていた。

「さ、かわいい死神さん。続きを話しましょうか」

「わかったよ」

 俺は次に、さよの記憶について、さらに細かく彼岸に細かく共有した。さよが北山美紅という女にいじめられていたこと。そのいじめの内容から、さよの感情全てだ。さよはあんなにもひどい仕打ちに遭っていたにもかかわらず、学校に通い続けた彼女は一体何を思っていたのだろうか。

「日記からしか記憶を辿れなかったから、さよの心の全てはわからなかったよ」

「それはそうかもしれないわね」

 彼岸は死刑大全を艶かしく撫でると、

「人は文章の中でも気取ってしまうものなのよ。本心を日記に落とし込もうと思っても、やっぱりどこか格好をつけてしまうもの。きっと、さよもそうだったのね。日記の中の彼女は、どこか格好つけでいじっぱり。さよのなかの理想のさよ。だから私は、彼女が死んだ場所に行くべきだと言ったのよ」

 彼岸は、力の弱い幽霊は命が潰えた場所でなら言葉を発するくらいの力は取り戻せるらしいと語った。さよの幽霊は葵のそばにいる状態で、姿こそ見えるものの力はほとんどない状態らしい。

「じゃあ、あの場所にいけばさよと話せるってか」

「えぇ、さよが望めばきっと話せるでしょうね」

「そうだな、けど……きっとそれが最後になるんじゃないか。あいつらの会話のさ」

「そうね、今夜……さよの声を聞き、葵が真相を知ったら二人は今回の死を水に流すのよ。そうすればさよは成仏し、生きている葵は前に進まねばならない。死んだものはもうこれ以上前に進めないのだから」

 殺されたにしろ、自殺したにしてもさよがこの世にいないことは変わりのない事実だ。どんなに葵が願ってもさよは生き返らないし、起きてしまったことを変えることはできない。

「でも、しないと彼岸は死んじまうんだから、やるしかないか。俺も、弥勒亭のきつねうどんを食えなくなるのはゴメンだしな。彼岸、もしも……葵とさよが望めば俺ちょっとやりたいことがあるんだけど」

「やりすぎたらダメよ」

「命までは取らないさ」

 彼岸は「お好きにどうぞ」と珍しく俺を肯定する。彼岸ですら、さよが受けた仕打ちに嫌悪感を感じているらしい。なぁに、いじめっ子をちょっと驚かしてやるくらいだ。俺様はオサキキツネ、それが本業的なところもあるんだしいいだろう。

「あなたがここに来てからお客さまが絶えないわね。さすが、死神様というところかしら」

「じゃあ、今日の夕食はうまい味噌にぎりと油揚げを用意してくれてもいいんだぜ。彼岸さんよ」

「そういうと思って、弥勒亭からの帰りにちゃんと買ってきているわよ。油揚げ大好きな死神さん」

「う、うるせ。薪割ってくる」

「ふふふ、ありがとう」


 あ〜、あいつといると調子が狂うぜ。

 日が沈み始めている。俺は昨日、峰田が彼岸花を流したことを思い返していた。ぼんやりと光る彼岸花を小川に流す光景は、あやかしである俺が見たって幻想的で不可思議で美しかった。

 彼岸は無欲だ。葬儀屋とかもっと毎日死に触れる仕事はたくさんあるんだ。こんな一か八かみたいなことしなくなって生きていける。わざわざこんな場所でいなくてももっとハイカラな場所で幸せに暮らすことだってできるのだ。

「ちぇっ、彼岸がもっとハイカラなところにいたら、俺ももっとうまいもん食ったり、スマホ? だっけか、あぁいうこうハイカラなもんで遊べたのによぉ」

 パコン。乾いた薪を錆だらけのナタで割っていく。風呂釜は小さいからできるだけ細く、火が入りやすいように……。幸い、今回は彼岸の余命が少なくなる前に客が来たからいいものの、これからそうはいかない可能性だってあるんだしな。できることはやっておかないと。

 それに、万が一彼岸が死んだら俺がこの家をもらおう。ここで生活をしながら、お社をきれいにして……弥勒たちの店を手伝ったっていいんだ。

(って俺、何考えてんだよ!)

 びゅうびゅうと強い風が吹いて、積み上げていた薪が倒れる。

「おっとっと」

 彼岸花が風に煽られて激しく揺れる。強い蜜の香り、妖しいほどに美しい夕日と彼岸花の朱が俺をいっぱいに包む。轟々と樹海の奥は山鳴りし、夜の始まりを告げるようだった。

 今夜風呂に入る分の薪と、これから彼岸が料理をするのに使う分だけなら十分にあるか。俺は細く割った薪を抱えると勝手口の方へと向かった。



 弥勒との約束の時間まで俺と彼岸はゆっくりと過ごしていた。彼岸の書斎にある本はどれもこれも江戸時代から大切に保管されたものらしく、俺でも楽しんで読むことができたし、この彼岸堂の歴史というのが大変興味深いものだった。彼岸堂は江戸時代に小曳椿という女性が始めたものだった。小曳椿は小曳家の人間が抱える呪いを受けた当事者らしい。

 ただ、肝心なことは黒く炭で塗りつぶされていて解読はできないとのことだ。

「あなたの記憶に入る能力を使ってもみえないかしら」

 俺は試しに<彼岸堂の書>に手をかざしてみたが、記憶に入ることはできなかった。

「古すぎて難しいみたいだな。ここに小曳椿の幽霊でもいたら記憶を辿れたかもしれないけどな」

「そうよね、残念だわ」

 彼岸堂の歴史は古いが、空白の期間も長い。特に近代になってからは相談屋をする一族はおらず、この土地も死んだままになっていたようだった。彼岸がこの書を家の蔵から見つけ出して彼岸堂を再開するまで100年弱。通りで俺が知らないわけだ。

 いや、正確には知っていても覚えていないだけかもしない。

「ってことは、ここの他に彼岸には家があるのか?」

「えぇ、実家があるわ。うちには兄さんと姉さん、それから両親がいるわね。葬儀屋と墓地の経営をしているから少し田舎なのだけれど」

「へぇ、広いの?」

「かなり、広いわ。うちの父は商才があってね。かなり裕福な暮らしをさせてもらっているわ。この彼岸堂だって少しは支援をしてもらっているし」

「どんくらい広いんだよ」

「そうねぇ……この彼岸堂の敷地の十倍くらいかしら」

 小曳家は呪われながらもうまいことやっているらしい。そう言えば、彼岸は全く金を客から受け取っていないが毎日うまいもんが食えるのは金があるからだよな。俺、彼岸の実家の方に住みたいかも……。

「今度帰省することができたら尾崎も連れて行ってあげるわ。きっと家族はあなたを気にいると思うわ」

「ま、行ってやらなくもないがな」

 彼岸が淹れたほうじ茶を啜る。緑茶と違って風味が豊かでなんだか懐かしい味がした。彼女の実家の話を聞くに、こう言うのももしかしたら高級品なのかもしれない。きゅうりの糠漬けを摘んで口に放り込む。甘い茶菓子よりも俺はこう言うのが好きだ。

「そろそろ弥勒が来る頃よ。着替えてちょうだい」

「あの窮屈な服に?」

「そう、あれはスーツというのよ。現代ではあれが男性の正装ね。紋付袴みたいなもの。あぁ、でも……尾崎が来ているのは少し派手ね。あなたが使っている体の主はホストだったのかもしれないわね」

 何がおかしいのか彼岸はケラケラと笑うと、きれいになったスーツを俺に手渡してくる。歩きにくいし、手も広がらないし、最近の人間は窮屈な服を着るのが趣味なのか? 馬鹿じゃないのか、全く。

「あいよ」

 俺はスーツを受け取って、彼岸の寝室で着替えた。着心地の良い作務衣と違って非常に動きにくい。まともに座るのだって窮屈だ。

 ま、でもこれを着るといい男感は増すんだよな。この優男によく似合っているのだ。

「着替えたぜ」

「もう弥勒が到着するわ。外で待ちましょうか」

 彼岸はいつも来ている着物のままだ。なんて理不尽! だったら俺も作務衣でよかったんじゃないか……?

「荷物は?」

「彼岸堂の鍵だけで大丈夫ね。弥勒がいるし、それに特に持って行くものはないわ。尾崎、あなたも特に持ち物はないでしょう」

「ま、そうだな」


 しばらく国道に向けて歩くと、向かい側から強い光が俺たちを照らす。ブンブンと大きな音、独特の香りは車のそれだった。

「お二人さーん!」

 車の窓から手を振るのは弥勒だ。なんだか彼はワクワクした様子で目を輝かせている。4人乗りの車、俺と彼岸は後ろの席に乗り込んだ。

「尾崎、シートベルト」

「しーと……?」

「おや、尾崎さんもしかして車は初めて? ほら、そこのそれを……」

 弥勒が運転席から振り返って身振り手振りで何かを教えてくれるがよくわからない。こいつは何を言っているんだ……?

「これよ」

 彼岸が隣でやってみせる。シートベルトというやつを斜めにかけて、ぱちっと留め金にカチッと嵌める。俺の座席の方にも同じのがあるので彼岸の真似をして留めてみる。

「なんだよこれ、動きにくい」

「これをつけないと、道の途中でお上の御用になってしまうのよ」

 それはまずい。最近のお上はでかい犬を連れているからな。あんなのけしかけられちゃ俺だってどうしようもない。犬は嫌いだ。

「よし、しっかりシートベルトしたっすね。じゃあ、出発進行! 行き先は……えっと」

「森の里女子高等学校よ」

「あいあいさ〜!」

 弥勒はぶるるん、と車を唸らせると一気にスピードを上げた。夜風が窓から入りこみ、非常に心地がいい。俺が大狐の姿になって走るよりも早いかもしれない。馬車よりも早いこの鉄の塊……しかも乗り心地も最高じゃないか!

 森をこんなに離れるのはいつぶりだろうか。まぁ、元々俺はあの森に土着のあやかしではないから森を離れても力が弱くなったり、消えたりすることはない。

 むしろ、俺は俺の好きであの森にいたんだ。たまにはこうして気分転換しても良いよなぁ。俺が思ったより人間は進化しているようだし、なんならちょっといいものちょろまかして毎日の暇つぶしにしてやろうじゃないか。

 弥勒がラヂオようなもののボタンを押した。小気味良い音楽が流れ、俺も思わず体を揺らした。聞いたことのない楽器の音だがまるで耳の横で聴いているように鮮明だ。心地よい、俺はこの車に乗りながら夜道を走り音楽を聴くのが好きだ。

 彼岸は何を考えているのか、じっと車窓を眺めていた。


 



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