第4話 神殿進軍

『亮、お前と俺は少し似ているな』

「急にどうしたルシファー?」

『例えば戦いの事になると口調が変わったりするところ——そして、明確な目標も無くフラフラとした状態で進んでいる事だ』

「……俺には、世界一の冒険者になるって夢が」

『それは俺達が目指させた物だ』

「それは前に話した通り——」

『悪魔は自分と思考が合うやつとしか契約しない。故にお前は悪魔王廻が求めていたと一致した夢があった筈。俺が器にした為に隠れてしまったと考えると矛盾した言葉になるが、思い出せ。それは最高神との戦いで必要になるだろう』

「それは、コイツら相手にしながらでもいいか?」

『俺の指導を受けながらのマルチタスクとは、余裕だな?』

「過密スケジュールすぎんだわ!」

『悪かったな!』


 俺は[瑠璃]を顕現させ、優しく握りダンジョンへと潜り込む。


『俺の器になった以上、その体には動きの記憶が刻まれている。ならばお前はどうすべきか? それは体を自由にして、その上で制御すればいい』

「何矛盾したこと言ってんだ! ま、やるんだけどなァ!」


 初見殺しかのように頭上から降ってきたモンスターに、俺は剣をぐるりと回すように振るう。


『一発で成功させるとは、やるじゃ無いか、亮』

「[嵐]」


 嵐は凄まじかった。

 しかしながら、使用者の自分ですらダメだとわかってしまう程に


『安心しろ、練習台の天使なら幾らでもいる。躊躇う必要は無いぞ、あの天使共は激痛共に洗脳されている、殺してやるのが唯一の救いだ』

「胸糞悪い話だな」

『だろう? だからこそ殺さなければならない、なんとしても』


 天使がまた襲ってくる。

 よく見てみれば、なんと残酷なことか。

 血管は今にも叩かれそうになって居て、血走った目で口元をぎゅっと噛んでいる。

 声をあげれば、その痛みに耐えきれなくなるからだろう。


 攻撃が、鋭く、そして単純に感じる。

 コイツらは怒って居る、そしてそれを俺にぶつけているんだ。

 俺さえ殺せばお役御免。

 なるほど、殺意も高まる。


「[嵐]」


 巫山戯ている。


「[嵐]」


 神にとって天使が道具という思考は、どうやら紛れもない事実らしい。


「[嵐]ッ!!」


 その一撃を振るった自分は、恐らく怒りに満ちて居る。

 しかし、その一撃自体は、酷く落ち着いた静かで完璧な一撃であった。


『……本当に、良い動きだ。神化を使った時よりも、瑠璃が活性化したよりも、その何倍も凄まじい威力。……これならば、も使えるだろう』

「勿体ぶるならちゃんとすごいのを見せてくれよ。最高神は確実に殺さなきゃいけない」


 気づけば、大きな扉の目の前に居た。

 誰もがこの中に誰が居るのかと聞かれたら神と答えるだろう。それほどまでに神々しい……。


 拳を握る。

 血が出るほどでは無い、そんな事をすれば威力が下がってしまうかもしれない。

 今、自分が出せる最大出力で、これを破壊しなければ気が済まないッ!!


「[一通]」


 ピカピカとヒビが入っていく……なんてノロノロしているわけが無い。


『いい挨拶の仕方だ』

「だろ?」


 扉はまるで、風船が弾けた様に木っ端微塵に消え去った。



 扉の先には、底も天井も無い円柱状空間と、この世で何よりも美しいとさえ感じてしまうまさに“究極”を体現した存在が浮遊していた。


『『早いね、褒めてあげようか』』

「[再臨]」

『即発動か……任せろ、!!』


 

 

 


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