第10話 VS最高神②

「[夜天連星]」

「[渦]」


 現れたのは、激しく渦巻く竜巻を模様にした丸い壁。

 

「……っ! 気をつけろ、それは触れた物を強制的に殺す!」

「天使1万人くらいで作れるコスパの良い装備なんだ、どうだい? 触れて見ないかい?」

「[波閃はせん」」


 何重にも重なった剣撃『波』を、不可避と言う意味を込めた『閃光』として飛ばす。

 重なった斬撃は継続性を持つ為、まさに遠距離攻撃と言える剣技だろう。


 狙い通り[波閃]は[渦]を、まるでティッシュを取るかの様にサッと消し去る。


「ふぅん……まあでもこんなのは失敗作にすぎないしいいや」

「一万の犠牲を出したもんをそんな言い方、天使をなんだと思ってるんだかか……あぁ、答えはライラックとかいう奴に教えてもらったから言わなくてもいいぞ」

「そうか、ならばこんな話で研究を中断するのは勿体無いな」

「オレにとってはガチな殺し合いなんだがな?」


 最高神は、また壁を出す。

 しかしそれは、[渦]ではない。

 それよりももっと渦巻いている、これは言うなれば、一つの点に細かく強く凝縮しているかのよう。


「攻め待ちがダメならこちらから攻めればいい、そうだろう? 天使10万の生命エネルギーを濃縮したそこそこの攻撃だ、ご賞味あれ」

「ひょっとして挑発してたりするか? だとしたら大成功だ。[悪食]」

「[縮]」


 攻めではなく受け、飲み込むような斬撃は、確かに[縮]を止める。

 しかしそれで終わりではない。


「[縮]を100個ほど出してみよう。どうだい、殺意の加減は? ほらほら、怒ってみなよ……どうせ無駄だけど」

「消し飛ばしてやるよ、[竜巻]」


 攻撃全てを巻き込み最高神に迫る、そこに被弾は……あった。

 全てを防げない、記憶を失ってからの初めての被弾、剣を使っている自身に対して初めて対処不能だと判断した攻撃。

 突破は出来る、しかし、最高神はこれをいくらでも用意できる。

 その事実こそが、最高神の恐ろしさ。


「変えてみようか? [炎]」


 名前の通り、ただの炎。

 ただし範囲も、熱量も、速度も桁違い。


「[嵐]」

「無駄だねぇ、[水]」


 これもただの水。

 なのになんなんだろうか、この圧力は。

 対抗できない、切っても切っても、無限に押し寄せる。

 一度でも対処を忘れれば即死。


「まさに実験だな最高神、殺そうと思えばいつでも殺せるがまだまだしらべたいってか?」

「そうだよ、よく分かったね」

「さっさと殺しちまったらどうだ? こっから覚醒したどうすんだ?」

「どうぞしてくれたまえ、それこそ素晴らしいデータだ」

「そうかそうか、——じゃあ死ね」


 神降ろしと[風牙]の同時発動、間違いなく、この世で最も素早い技。

 これを防ぐには、そう、予めこの攻撃が来ることを読んで居なければ不可能だ。


 だからこそ、オレは初めて恐怖を抱いた。


「それはだ」

「あ……?」


 この日初めて、オレの剣は破壊された。

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