第4話 悪魔の王

 薄暗い部屋。

 そこには豪勢な玉座と、それに座る王、そして跪く従者が居た。

 王の目は、その黒より黒い髪が隠しているが、それでも尚威圧感を感じさせる。

 

「廻様、現在我々の死亡者数は10万を超えてるのに対して、神側は僅か1000程度の犠牲しか出ていません」

「奴らは蘇らない、我等悪魔は死ぬ度強くなり蘇る。あちら側に犠牲が出ている時点で我々が有利だ」

「では、前より進めていた通り行きますか?」

「ああ、もっと数を投入だ。もっと死んで死んで殺しまくれ」


 指示を受けた参謀の男は、足早に部屋から去っていく。


「天使は産まれ続けるって伝えてあげないの?」

「そんな事して戦況が悪くなったらどうするつもりだ? この戦争は、悪魔の存続がかかって居るんだぞ」

「確かにそうね、でも、貴方が出ればこの戦争は一瞬で終わると思うのだけれど」

「俺には用事がある、それに悪魔に任せていればいずれ勝てる」

「なんで言い切れるの?」

「言い切れる根拠を、今から作ってくるからだ」


 王は右手で髪をかきあげ、その黄色の眼を煌びかせ虚空を睨む。


「今世代の神は滅ぼさなければならない。そうだろう? ならばこれは良い口実が出来たと考えるべきだ。出来たからには——」


 王は虚空をグッと掴み、槍を生み出しそれを無駄の無い最大限の動きで飛ばす。

 

「徹底的に潰す」


 刹那、遠く離れた戦場において極大の爆発音が響き渡る。

 それにより戦況は悪魔側の圧倒的有利へと進む。


「指揮は頼んだぞ、カミラ」

「任せて」

「俺は、コイツらとやる事を済ませてくる」


 部屋の入り口。

 気づけばそこには、剣を持った男と、それに付き添う女の姿があった。


「聞くなよカミラ」

「何の事かしら?」

「……良い秘書だ」


 王は玉座から立ち上がり、ゆっくりと近づく。

 まるで、これまでの時の流れを表すかのように。

 

「久しぶりだね! くん!」

「俺の親はどうなった?」

「聞くか? お前のお望み通りだ」

「持ち主は?」

「只今ルシファー君を襲名中の——」

「俺の弟子だ」

「私が言おうと思ったのに!」

「はぁ……、相変わらず仲がいい様だな」


 二人はハッとしてピタリと止まる。


「とりあえず、行こっか!」

「あんま時間ねぇしな」

「ああ、行こう」

 

 目指すのは『鏡』、天界へ無限に存在するそれを、一夜で全て破壊し尽くす。


 それが、運命を操る条件の一つ。

 

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