二章 指名手配編
第1話 等活地獄①
「クソッ! なんなんだアレ!?」
現在のステータスは、女王蜂討伐によりレベルが大幅に上がった事によって100レベ分のステータス、つまりAll1000程度。
中堅に片足を突っ込んだ程度のステータスしかない今、戦闘などもってのほかだ。
だから誰にも会わずに、ダンジョンかや一刻も早く抜け出そうと最短ルートを駆け抜けた、加速系のスキルも全て使った。
しかし脱出は不可能。
何故ならば……。
「出口に繋がる広い道に、100以上の冒険者が群がってるってどう言うことだ!?」
それは人の壁。又は渦。
一度呑まれれば抜け出せない、それだけははっきりと分かる。
だが進まなければ行けない。
餓屋が何のために逃してくれたのか、その意味を無くしては行けない。
思いきって踏み出した一歩は、戦いのトリガーとなった。
「[狂乱の宴]」
瞬間、激しい違和感に襲われる。
そして同時に、渦から統一感が溢れ出す。
一見それらは全く統一してないように見える。
むしろ乱れに乱れまくっていると言う印象を抱くだろう。
しかし尚感じるこの統一感。
全員が、何かしらの目的を持っているからとしか思えない。
ならばその目的は?
考えるまでもない。
「[[[[[[[[]]]]]]]]」
瞬間、何十ものスキルが発動する。
声が重なりすぎて、唱えられたスキルの名を認識することは不可能。
だがその必要性は無い。
「分かったところで、避ける以外の選択肢はねぇ……俺じゃなきゃな」
亮はそのスキルを全て受け止めようとする。
この場にいる100人のスキルやステータスを吸収すれば、100人を皆殺しに出来ると。
しかしその思惑は、謎のノイズと共に否定される。
「……っ! [高速移動]」
上に跳ぶと、先程まで自分がいた場所を炎や水や黒や光の万物が通過していった。
しかし先程流れたノイズは、アレに当たると重大なダメージを受けてしまう、などと言う理由で流れたものではなかった。
アレは、何かを思いださせるような——
——そうだ、俺が攻撃を受ければ[ダメージ吸収]の効果が確定してしまうんだ。
何故こんな事を忘れていたのか。
いや、忘れてはいなかった筈だ。
何か別の事に重きを置いていた、最も重要な[ダメージ吸収]についてよりも大事なことなどあるはずがない。
本来ならばあり得ない思考状態になっている。
自分は先程攻撃を受け何をしようとしたのか?
それは、100人を皆殺しにする為である。
いや待て、それはおかしいと本能が否定する。
元々の目的はここを抜けて群馬支部まで向かう事だ。
何故皆殺しに拘るんだ?
その思考に達した瞬間、脳にガキンッと衝撃が走る。
それと同時に皆殺しと言う思考は完全に消え去った。
「まさか、あの時の違和感は俺も術にかかってたって事か……?」
そうして気づく、[ダメージ吸収]には大きな弱点があると。
[ダメージ吸収]は、状態異常や精神攻撃に対する抵抗は持っていないのだ。
B級ダンジョンで吸収できたのは物理的な攻撃と共に毒が送られてきた事、毒がダメージを明確に与えられる事の2点があったからであって、異常状態になると吸収出来るわけでは無い。
今回の相手は、まだ暴力的な思考に染める精神攻撃しかしていないが、そういった物も隠し持っているかもしれない。
だとしたら、一刻も早く相手を倒さなければならない。
しかしステータスはこれ以上増やせない。
今更モンスターを倒しに後退するのは無理だと言うのはわかりきっている事であり、ステータスを吸収する事も同じく無理だ。
ならば、自前で上げるしかない。
「[転換〔紫〕]」
女王蜂との戦いで参加したそのスキルを、亮は迷いなく発動した。
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