スピード感がありつつも重厚で先が気になる展開の構成力、繊細な表現をクドくなく清涼な水のように飲み込ませる文章力、散りばめらた伏線を後半で回収して大きな余韻と満足感を残したシナリオ、どれをとっても完璧でした!素晴らしかったです!
特にこれは凄いと思った箇所は、人体実験に使われた三人の症状の違いに仕掛けられた伏線です。意味に気付かされた時は本当に脱帽しました!序盤では「そんなもんか」とただの描写だと思わせて、後から意味が含まれていることに気付かせるという教科書にも乗りそうな完璧な伏線、まさに圧巻の一言。お見事です!
他にも魅力はありますので、是非とも本編を読んでお楽しみください!
失踪した天才科学者の元恋人から、とあるウイルスについての研究記録を送り付けられた沙耶。彼は何をするつもりなのか。自分に彼を止めることはできるのか――。
タイムリミットを予感させる緊迫した状況下で、過去の記憶と情景が交錯し、事件の背景となる出来事や、恋人同士だった二人の情感溢れるやり取りがスリリングに明かされていきます。
人類の生み出した革新的な技術は、諸刃の剣となり得る。
その剣から愛する者を守る盾を、同じ人類が生み出せるのか。
作品の根底に流れるテーマは、愛です。
緻密な科学的描写に圧倒された次の瞬間、理屈では語れない美しい風景が垣間見える。
知的かつ文学的詩情に溢れた、今読むべきメディカルクライムサスペンスです。