(ちょこっと短い話)気持ち良い新卒ハイキングはどう?「VR版・邪教の館アプリ」

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話  意味、わかった?「新卒がいないと気持ち良くなれない、皆のハイキング」

 「今後とも、よろしく…」

 今、「VR版・邪教の館」が、熱い!

 「新卒男子と一緒のハイキングアプリ」というものが、大バズリ!

 新卒世代の俺と友だちも、大注目さ。

 そのアプリの中の、「邪教の館」に登録する。登録後、日時などを指定して、申し込むと…。

 日本全国から、仲間が集まってくる。

 「今後とも、よろしく…」

 ハイキングアプリを楽しむためには、ある条件があった。

 「仲間の 1人は、新卒世代であること」

 ふうん。

 SNSで、俺と友だちを入れて、 7人。見知らぬ仲間たちが、集められることになった。

 「それじゃあ、ここに集合ってことで」

 「はい」

 「わかりました」

 「俺、既卒」

 「俺も、既卒」

 「私も」

 「新卒は、いるよね?」

 「 2人、いるらしいよ?」

 「決まりだもんな」

 「ああ」

 「ルールだ」

 「そうか。 2人か」

 「ひひひ」

 「新卒がいないと、気持ち良くなれない」

 「だよな」

「…?」

 「…?」

 俺たち 2人は、余計なことは、返信できなかった。

 何なんだ、この会は?

 仲間って、何だろう?

 俺と友だちを入れて、 7人のグループができた。

 ハイスペックなハイキングが、はじまる。

 ハイキングが終わると、皆、「気持ち良いー」って、思えるようになるらしい。

 俺と友だちは、うれしかった。

「やった」

「注目されているぜ」

皆が、俺たちを、じろじろ見ていた。

 新卒は、やっぱり、世界に 1つだけの花なんだな。

 集められた仲間は、俺と友だち以外、りりしい顔付き。どこかで聞いたこの言葉が、思いだされた。

 「過保護世代」

「顔が、ヘラヘラしている感じ」

 「危機感のない生活でな」

 へえ!

 へえ!

 へえ!

 ハイキングの目的地は、ハードルが高かった。

 標高2000メートル以上の山の頂上まで、やってきたから。もはや、登山。

 「ここだな…」

 「やりますか?」

 「そうね」

 「ここなら、誰も見ていない」

 「チャンスは、ここだけだろ」

 「やるしか、ないよな?」

 「ああ」

「気持ち良く、なるためにはな」

 「やろうよ」

 「やるしか、ないんだよな」

 …はい?

 俺と友だち以外の皆が、意味不明なことを言いだしたが。

 「ちょっと!」

 「何、するんですか!」

 俺と友だちの胸に、ナイフが、突きつけられはじめた。

 うげえ…。

「気持ち良いー!」

 うげえ…。

 リーダーより、声がけ。

 「皆、お疲れさま。さあ、作ってくれ」

 俺と友だち以外の皆が、疲れてヘトヘトになった顔を作った。

 そして、 1人が、救助隊に連絡を入れた。

 「助けてください!山の頂上付近で、人食いクマに襲われました!仲間が、仲間が!」

 救急隊が到着したとき、皆は、涙まじりに叫んだ。

 「うう…。山で事故があって、仲間を失ってしまったんです!」

 「本当なんです!」

 「仲間、だったのに…!」

 「仲間が…」

 「仲間が…」

 集まった 7人のうち、 5人が、無事に、町に戻ってきた。

 わかるか?

 シューショクヒョーガキ世代の子とかは、勝ち逃げ世代や新卒世代に、こういうことをされたんだよ?

 社会は、厳しいんだからな。





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