S級店長

 アルメリアと出会った僕は、二人で旅をするようになった。


 アルメリアは、怪物と称される『シェイド』を倒してあっちこっち歩き回っていたようだ。だから、嫌な気配を感じたアルメリアは洞窟ダンジョンまで来てしまった――と。


「そのシェイドは何なんだい?」

「モンスターとは違う怪物です。聖なる者にしか浄化できない敵なんですよ」


 モンスターとは違う。

 昔見た本にそんな怪物の伝承があったような気がした。一度は世界を支配しかけたという魔の王。それがシェイドだとすれば大変かもしれない。



「分かった。アルメリアひとりじゃ大変だろうから、僕も手伝うよ」

「いいんですか、カインさん!」

「いいよ。僕は『商人』であり『店長』だけど、昔よりもかなり強いんだ。頼りになると思う」


「わぁ、ありがとうございます。わたし、ずっと独りぼっちだったので、心強いです!!」




 こうして、僕とアルメリアは共和国周辺のダンジョンを巡るようになった。僕は、アルメリアのシェイド浄化を補助しつつ、露店販売。お金を稼いでアルメリアをサポートした。



 そうして一週間が経ち、お互いの信頼関係も深くなった。



「アルメリア、今日もダンジョンへ行こうか」

「はいっ、今日もシェイドに気を付けましょう」



 南の氷河ダンジョン『ホワイトアウト』。



 そこには危険な『アイスゴーレム』がうじゃうじゃいた。僕はアイスゴーレムから氷の拳で殴られて体力を削られる。けれど、その度に僕は強くなる。



 そう、僕は“ピンチになればなるほど強くなる店長”だ。



 今や最高のステータスを手に入れた僕は、拳ひとつで敵を駆逐できるほどに成長していた。さあ、刮目せよ『極店長』の力を――!!




「たぁぁぁあぁぁああッッ!!!」




 向かって来る氷の拳に対し、こっちは生身の拳。普通なら、氷が勝つだろう。けれど、『極店長』となった僕は無敵状態。


 更に、アルメリアの支援魔法が掛かっている。



「カインさん! ファイトですっ!」



 更に更に、アルメリアの応援がある。

 それだけで元気が出た!!



 拳と拳が衝突すると、氷の拳が砕け散っていく。バラバラの粉々に!! 僕はそのまま拳をアイスゴーレムのボディに打ちつける。




 ボゴォッと破砕していく氷の体。

 一瞬で弾けて氷の塊になった。




「おおおおおお!」「すげえ!!」「店長って強いんだな!」「マジかよ、ボスゴーレムだぞ、あれ」「かっけええ」「商人ってこんな強いの!?」「あれって、噂の店長だろ?」「うひゃー、どうなってんだよ」「攻略組が一ヶ月掛かっても倒せなかったゴーレムだぞ!?」「ありえねー」



 氷塊の影に多数の冒険者。

 どうやら隠れて見ていたらしいな。

 まったく。



「カインさん、カッコ良かったです!!」

「アルメリア!」



 抱き合って生存を確かめる。

 まあ、余裕だったんだけど……!

 だけど、こうして勝利する気分は最高だ。




 その場で露店を開き、アイテム売買をした。今日もたくさん稼いでウハウハだ。その後、シェイドも現れ討伐完了。



 僕の名もアルメリアの名も広まっていった。

 でも、それよりも僕はアルメリアと二人きりで旅が出来るという事に喜びを感じていた。多分、好きになっていた。でも、この気持ちを打ち明けるのは先だ。



 お金をもっと貯めて、もっと贅沢ができるようになれる『豪商』になって――きっと、幸せを掴むんだ。



「カインさん、取引も終わりましたし、氷河ダンジョンをちょっと歩きませんか?」

「そうだね、アルメリア」



 手を握り合い、僕達は歩き出す。




 この半年後――

 僕は『S級店長』に昇進した。

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