下野・九尾の復活
第1話
ボクは九尾の狐である。名前は数多ある。何分長く生きているもので、どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。
物心ついたときには中国にいた。そこでは
ここでボクが考案したのが
ずいぶん楽しませてもらったが、周の
二人で象に乗って、囚人たちをいたぶるのが趣味だった。身ぐるみ剥いで鞭で打ち、毒蛇をけしかける。天竺は仏の国。仏法を滅ぼして魔界に堕とすことを目標にして、日夜悪虐の限りを尽くした。班足太子は一日のうちに千人の首を斬り落とし、古塚にそなえようとしたが、最後の一人というところでしくじった。
それからもう一度中国に戻ったのだったか。周の幽王の妃となってこの国を破滅へ追いやった。
それからしばらく姿を隠していたが、気まぐれに遣唐使船なるものに忍び込み、
あまり最初から派手にやりすぎると上手くゆかないことを、ボクは学んでいた。日本という国をブラブラと歩き回り、どうやら一番偉いのは
この時からボクは玉藻御前となった。
鳥羽院はやがて病に伏せるようになる。もちろん原因はボクなのだが、ボクは甲斐甲斐しくオジサンの枕元で優しい声をかける。鳥羽院はボクのことを信じて疑わなかったが、僕の正体に近づいたものがいる。
仕方なしに、ボクは東国へ逃げる。
院宣によって妖狐討伐にやってきたのは、源氏から
いよいよボクは三浦介の黒い矢に首筋を射抜かれる。上総介の白い矢は脇腹に刺さる。
もう痛いのは御免こうむりたかったので、ボクは物言わぬ石となった。しかしこの屈辱を晴らさないでは黙っておられず、それから百年もの間、毒気を放って道行く人畜を殺していった。
そうしてボクは殺生石へと名前を変える。
やがて石の前を、かの三浦介の子孫が通りかかる。名を
この戯れがいよいよボクの運の尽きとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます