第2話

 それで、冒頭の「あっぶねぇ、異世界転移するかと思った」につながるのだ。

 でもそれは夢だったので、現実の俺は死ぬことなく校門をくぐることができた。


「なんでそれで異世界転移になるんだよ。アニメの見すぎか?」

「俺は流行を追わない主義だし、アニメを見る暇などない」


 洛と話しているうちに、玉藻はどこかに消えてしまった。


「しまった。お前と話している場合じゃなかった。俺は生徒会室に行くぜ」

「へいへい」


 肩をすくめて二年生の教室へ向かう洛をしり目に、俺は一階の生徒会室へ向かう。職員室の隣にある小さな部屋が生徒会室。

 俺は生徒会副会長だった。


 何を隠そう……いや、全然隠していないのだが、俺が生徒会副会長に立候補したのは生徒会長・尾又玉藻に近づくためだった。

 そしてアニメを見る暇もないのは勉強をするためだ。何なら運動部に所属しているわけでもないのに筋トレもしている。

 すべては完璧超人である生徒会長の隣に立つためだ。


「おっはようございます」


 無駄に元気を出した挨拶がむなしく響く。生徒会室には誰もいなかった。

 まぁ朝から生徒会室で何をするかといえば、別に今のところ急ぎの仕事はないわけだが。


 玉藻がこの中学に入学するまでは、ふつう生徒会役員というのは最高学年の中学三年生が務めるものだった。

 しかし尾又玉藻のカリスマ性によって、現在の生徒会メンバーは中学二年生が占めている。生徒会室を、占領している。


 生徒会長 2年A組 尾又玉藻

 副会長  2年B組 俺(尾形虎之介)

 書記   2年A組 尾原多津美おはらたつみ

 会計   2年C組 西尾友莉にしおゆうり


 尾原と西尾の学生カバンが無造作に会議用のデスクに置かれている。お手洗いでも行っているのかもしれない。


「あいさつぐらいしてから教室に行くかな……」


 目的である玉藻の気配はないが、俺は紳士的に他の女子二人を待つことにする。


「……」


「…………」


「………………おかしい」


 始業ギリギリまで粘ってみたが、誰も来ない。女子の持ち物を勝手に覗くということは俺にはできないが、おそらくこの取り残されたバッグには授業で必要なものが入っていると思う……いいのか? 取りに来なくて?


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