第20話 雨隠裂蛙

「 “グロロロロロロロッ!!!” 」

< 魔獣 〝雨隠裂蛙うおんれつあ〟 アマツブサキガエル >


「なんか変なの出てきたーー…!?」


まさかベナルユングとまったく関係ない魔獣に襲われるとは思わなかった…。これ戦わなきゃダメか…? もしもの為に力温存したいんだけどな…。


コイツが岩族ロゼ達の脅威にならないんなら、なんか適当に追っ払ってしまいたいが…。どうかな…岩族ロゼ達意外と天敵多そうだしな…。


「メラニ…? 流石にコイツは君達の命を脅かしたりはしないよねェ…? 爪生えてるけど硬いから平気だよねェ…?」


雨隠裂蛙アマツブサキガエルは大きな口で獲物を丸吞みにするから、ゴロ達の頑丈さは何の意味もなさないゴロ」


「ねぇ~ほんとにもう山に住むのやめよう~?! 多分人族私達より山暮らし合ってないよっ?! 知り合った以上気が気じゃないんだけど…」


色々思うところがあるが…ガッツリ岩族ロゼの天敵であることが分かった為、コイツもスルーできなくなった…。


コイツを通しても…多分集落壊滅する…。何なら舌伸びるし謎に見えなくなるし…、強さはともかくとして…恐らくこっちの方が危険だ…。


面倒くさいが戦わざるを得ない…、誰も食べられなければいいが…。特にルーク・メラニの天敵組…。


「ニ…?! また見えなくなっていくニ…!」


ニキの声で顔を向けると、みるみるうちにあの巨体が見えなくなっていく。〝消える〟というより本当に〝見えなくなる〟に近い感覚だ。


ぼんやりと姿がぼやけていき、また完璧に見えなくなってしまった…。原理は分かんないが…この世に透明になれる生き物はいない筈だ…。


アクアスの炸裂弾も当たってたし、実体は確実に存在してる。捉えられれば問題なく仕留められる…! 焦らず機を窺っていこう。


「全員離れるなよ…! ナップ…! ルーク…! メラニ…! オマエ等は私達に1人ずつ付け…! 2人1組でサポートし合うんだ…!」


2人いっぺんに舌で巻き付かれたりはしないだろうから、片方が巻き付かれたらもう片方が助けに入る、これで食われるリスクは格段に減る筈。


よってアクアスにはナップが、ニキにはメラニが、私にはルークが付いた。ルークならきっと衝棍シンフォンで助けても無事だろう。でなきゃ謝ろう…。


残す問題はどこから仕掛けてくるかだな…。いかんせん生態が未知数なのが怖いところだ…、岩背蟹オオイワショイクラブの粘液みたいなことになるやもだ…。


あの背ビレにも毒があるかもだし…注意しないとならないことばかりだ…。ほんの少しの油断も許されない緊張で鼓動が速くなる…。


“──キーン…!!”


危機の報せが耳を通って頭に響く…──だが一向に何も見えてこない…。口も舌も…〝音〟だけで何も感じられない…。


だが間違いなく危機の〝音〟は鳴り続けている…。私は衝棍シンフォンを前に構え、見えない攻撃に備えた…。


直後体の左側面に強烈な衝撃が走り、私の体は思いっ切り右側にぶっ飛ばされた。濡れた地面を転がった体は、岩に衝突することで止まった。


痛みに耐えて立ち上がると、手が擦り傷と切り傷で血が滲んでいた…。痛みからして…恐らく腕や脚も同様の状態だろう…。


特に痛むのは左腕…、何をされたのか分からんが…恐らく攻撃が直撃したのが左腕なのだろう…。痛みが骨にまで響く…。


「カカ様…!」


「私は平気だ…! それよりルーク…! オマエはアクアスかニキのもとに行け…! 奴はまだ近くにいる筈だ…!」


ルークに注意を呼びかけ、未だに姿が見えない敵に警戒しながら、私は走って皆のもとに戻ろうとした。


その時、また視界の端に何かが映った。皆とは少し離れた場所に見えたそれは、雨隠裂蛙アマツブサキガエルの尾ビレに見えた。


だが先程と同様にまたすぐ見えなくなった…。今のはなんだ…? 何故尾ビレだけが一瞬見えたんだ…?


なにか引っ掛かる…、それが分かれば…雨隠裂蛙ヤツの姿が見えなくなる原理を突き止められそうなんだけどな…。


気持ち悪いモヤモヤを抱えたまま、もう少しで皆のもとに着くところで…予想外の攻撃がメラニを襲った…。


突如上空から伸びてきた舌がメラニの頭部にくっつき、舌に引っ張られてメラニの体が上空に浮き上がった。


見えはしないが…弧を描くように音もなくアクアス達の上を飛び越えたのだろう…。メラニはどんどん口元へと運ばれていく…。


「ゴロ~?! 食われて堪るかゴロー!!」


「 “グロロォ!!?” 」


口の中に含まれる直前に、メラニは持っていた槍を口元にぶっ刺した。何もない空中から雨隠裂蛙カエルの鮮血が溢れ出した。


「そのまま踏ん張ってろ…! 〝華天かてん〟…!!」


「──〝迅通弾じんつうだん〟…!!」


私が半分勘で何もない空中に衝棍シンフォンを投擲した直後、折畳銃スケールの轟くような発砲音が鳴り響いた。


私が顔を向けるより早く目に入ってきたのは、メラニを捕えている舌から飛び散った血。メラニと口内との僅かな隙間を、アクアスが撃ち抜いてくれたらしい。


痛みに驚いてか、メラニは舌先からぽろっと零れ落ちた。舌を傷つけられ、怯んで動けていない雨隠裂蛙カエルに、私の衝棍シンフォンが追撃を加える。


どの部位に当たったかは分からないが…衝棍シンフォンは空中で止まり、雨隠裂蛙カエルは苦しそうな声を上げた。


それと同時に…今まで見えなかった姿がまた現れた。それも薄っすらとではなく、パッと一瞬で出現した。


「ニキキッ…! 姿を現したがオマエの最期ニッ…! いくニよルーク…! ニキとの合体技をくらわしてやるニ…!!」


「やったるゴロ…! メラニを食べようとした罪を味わえゴロー!!」


何故かニキはルークを肩車しており…その状態のまま雨隠裂蛙カエルに向かって勢いよく跳び込んだ。


「くらえニ…! 〝ゴロ突貫天哭とっかんてんこく〟…!!」


ニキは握り拳、ルークは槍を構え、ルークの重さを生かして物凄い速度で落下していく。即興にしては良くできた技だな…当たればいいが…。


真っ直ぐ雨隠裂蛙カエルの頭上に落ちていくニキ達…、だが雨隠裂蛙カエルは直前に大きく跳んで離れてしまった。


「「 うわああああ…?!! 」」


案の定ニキとルークは物凄い勢いで地面に落下した…。粉塵が辺りに立ち上がり…その威力を物語っている…、当たらなかったわけだが…。


肝心の雨隠裂蛙カエルは、私達を囲うように飛び跳ねていた。思わぬダメージに驚いているのか…攻撃するタイミングを図っているのか。


だが仮にどうであっても、このチャンスを逃す手はない…! 雨隠裂蛙ヤツの姿はまた見えにくくなっているが、まだ視認できる範囲…! 今のうちに攻めまくる…!


「アクアス、炸裂弾だ…! アイツの足元を狙え…!」


「かしこまりました…!」


アクアスに指示を出し、私は今にも消えそうな雨隠裂蛙カエルの方に走って距離を詰めていく。


直後背後から銃声が響き、雨隠裂蛙カエルと少し離れた場所が小爆発を起こした。その瞬間、私は雨隠裂蛙ヤツの姿が消える原理を理解できた。


爆風に煽られた雨隠裂蛙カエルは、被弾していないのにも関わらず、今まで同様にパッと姿が見えるようになったのだ。


これまでのと今のではっきり理解した…雨隠裂蛙コイツが消える原理…──今のこの天気…〝雨〟だ…!


全身に生えた細い毛で雨粒をキャッチして、雨の中に溶け込んでいるのか。恐らく足裏にも毛が生えてるんだろう…でなきゃあんなに足音が静かな説明がつかん…。


だが擬態に使うのが〝雨粒〟なだけあって、自分の意思とは無関係に擬態が解けてしまうのだろう。強い衝撃で簡単に雨粒を払いのけられる。


酷く環境依存な擬態は、非常に恐ろしく…かつとても脆い…。原理さえ理解できれば、こっちにも対処できる…!


だが皆に伝えるのは後…! 今は追撃…! 炸裂弾の爆風に怯んでいる今のうちに、できるだけの深手を与えておきたい…!


擬態で身を守るタイプの生物は、本来外傷を負うことがまず無い。故に痛みや反撃に対して過敏、ただの爆風であっても小パニックを起こす程だ。


今も驚いて体が硬直している雨隠裂蛙カエルに接近し、その顔面に一切の容赦なく衝棍シンフォンを叩き込んだ。


「〝竜撃りゅうげき〟…!」


「 “グロロァ…?!!” 」


これ以上ない程完璧な突きを左頬にくらわせ、深追いはせずにすぐに皆のもとへと戻った。擬態原理は知れたが…、私も手負いなので万が一を考慮する…。


「スゲー攻撃だったな! よくやるぜ怪我してんのに…」


「おう、次はオマエの番だぞ無傷君。それより皆に伝えなきゃならないことがある…! ニキとメラニは無事か…?!」


「えっとですね…、先程の攻撃が失敗に終わったのが不服だったのか…より気付かれにくいようにと崖を登り出しまして…」


「オイ戻ってこいバカ共ォ…!! 固執すんな命中率悪い技に…!!」




     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼




「…なるほどニ~、そんな擬態方法があるとは…世界は広いニね~。じゃあいい感じの場所に誘導お願いニ、ニキ達はスタンバイの方を──」


「行くな行くな…固執すんなっつたろ…。原理が分かっただけで油断ならないのに変わりないんだから…カバーし合えるようそばに居ろ…」


諦め悪く崖を登りたがるニキとメラニ…あと何故かついて行こうとしてるルークをいさめ、反撃の態勢を整える。


恐らく雨隠裂蛙ヤツは既に雨に紛れているだろうし、なんなら今もどこかで私達に狙いを定めているだろう…。


「でも実際のところどうやって突発するのニ? アクアスのその…あの…例のやつでなんとかならないニ?」


「万能じゃねえんだ…なってりゃこんな苦労してねえよ」


アクアスが視認できる〝軌跡〟は、5日前のものまで見ることが可能だが…天候に大きく左右されてしまう不安定な能力チカラだ。


雨が降れば洗い落とされ、雪が積もれば覆い隠されてしまう。今日は土砂降りだから…アクアスにも動きの跡がまったく見えてない筈…。


「申し訳ありません…わたくしの力不足で…」


「大丈夫だ、オマエに頼らずともあの擬態を破る秘策がある。それがコレだ…!」


ポーチから取り出したのは、以前にも使った〝光烈玉こうれつだま〟。強烈な閃光を発する、知性生種が生んだ優れ物。


「これを使えば間違いなく擬態を打ち破れる…! まずは火を点けて──…あっ点かねえや…雨で濡れちゃうじゃん…」


「カカってたまにバカよニ…」

「ちょっと抜けてますよね…」


うるさい野次には耳を塞いで、どうにか次の策を練らねばならない…。どうしよう…気合いでアクアスに足跡辿ってもらおうかな…。


でも今から新しい策を練る時間もないし…──よし強引に推し進めよう…!


「うらっ…! いけアクアス…! 撃ち抜け早く早く早く早く…!!」


「ええっ…!? そんな急に…!? う…撃ちます…!」


空高くぶん投げた光烈玉こうれつだまを、アクアスは戸惑いながらも一発で撃ち抜いた。あんな小せえ物をよく一発で…。


撃ち抜かれた光烈玉こうれつだまは強烈な青い光を放ち、私達の立つ地面を眩しく照らした。


光烈玉こうれつだまを知らないナップを含むシヌイ組は大騒ぎしているが、アクアスとニキも別の意味で驚いていた。


私達から少し離れた場所に、雨粒を纏った状態の雨隠裂蛙カエルの姿があったのだ。雨隠裂蛙カエルも不思議そうに光を見つめている。


「衝撃を与えていない筈なのに…何故見えるのですか…?! 一体何が…?!」


「〝光の屈折率〟だ。光の強さと当て方を変えれば、纏った雨粒にも影が生まれて擬態は成立しなくなる…! 若干賭けだったが…成功したな…!」


しかも雨隠裂蛙ヤツはまだそのことに気付いてない、逆に虚を突くことができるだろう。これで優位に戦いを進められる。


とは言え光烈玉こうれつだまの効力は永続ではないし、数にも限りがある…。残り2つを有効に使って…確実に仕留めなければ…。


やがて落下してきた光烈玉こうれつだまの光は消え、また周囲は薄暗くなった。それに伴い雨隠裂蛙カエルは雨に隠れ、また緊張感が場を包む。


「カカっ! またさっきの光る玉投げるニ! そしたらニキが反撃に出るニ!」


「無暗に攻めても意味がねえ…、結局躱されるのがオチだ…。身体能力諸々…私達の方が劣ってんだからな…、私等人族ヒホ組は特に…」


使うなら十分引き付けてがベスト…。雨隠裂蛙アイツは皮膚が硬いから、アクアスの弾じゃ仕留めきれない可能性は高い…。


「そこはニキに任せるニ! ニキが絶好のチャンスを作るから、そこを皆で袋叩きにするニ! 光烈玉こうれつだまのタイミングは任せるニ~!」


「ちょっオイ…?!」


リュックをこの場に置いて1人勝手に駆け出したニキは、私達から離れた場所で構えも取らずにただ立ち尽くした。


何か策があっての行動だとは思うが…あまりにも無防備過ぎる…。私と違って事前に危機を察知することもできないだろうに…何を考えてるんだ…?


そう思いつつも下手に動けず、私はただニキを見つめることしかできずにいた。雨降りしきる音だけが鳴る場は、不気味なほどに静かだった。


「…っ!」


「ニキ…!!」


突如右から伸びてきた舌がニキの右腕に巻き付き、私が声を出した時には既に、ニキは姿見えない雨隠裂蛙カエルの方へと引っ張られた。


脳に体が追い付き、なんとか一歩踏み出せたものの…ニキの体はバクンッと食べられ…私達の視界から姿を消した。


「ニキ様ァ…?!!」


「マジかよ…?! 食われちまった…!」


一瞬で全員に動揺が伝播し…アクアスは軽度のパニックに陥りそうな雰囲気だ…。私はすぐにポーチへ手を突っ込み、光烈玉こうれつだまを取り出したその瞬間とき──


「 “グゥ…!? グロロロロロロロォ…” 」


「ぶへェ…! ドロドロニー…」


なんだか不快な鳴き声と共に…粘液まみれのニキが吐き出された…。だがダメージを受けているのは雨隠裂蛙カエルのようで…、必死に舌を雨で洗っている様子…。


しかしなんだな…、岩背蟹クラブの時といい今回といい…ニキは粘液と妙な繋がりがあるように思えるな…。当の本人は願い下げだろうが…。


「ニー! 舌さえ見えればこっちのもんニよっ! くらえ〝纏哭てんこく〟!!」


ニキの強烈な左拳が炸裂し、雨粒を全て払いながら私達に近い場所にぶっ飛んできた。私は光烈玉こうれつだまをナップに渡し、起き上がろうとする雨隠裂蛙カエルに接近していった。


私の接近に気付き、真っ直ぐ舌を伸ばしてくるが、〝音〟と予測を駆使すれば避けるのは容易い。私はすぐに懐まで入れた。


「〝竜撃りゅうげき〟…!!」

「〝纏哭てんこく〟!!」


「 “グロァァァァァ…?!!” 」


衝棍シンフォンを突き立てた瞬間に、まったく別の強い衝撃を感じた。私が腹に攻撃をすると同時に、ニキも背面から攻撃を加えたのだろう。


挟まれるように浴びせられた攻撃は、丈夫な魔獣と言えども大ダメージは必至だ。すぐにお腹の下から離れると、雨隠裂蛙カエルは勢いよく地面に倒れた。


これで終いかと思ったが…まだ雨隠裂蛙カエルは抵抗を見せ、上に向かって巨大な粘液の玉を吐き出した。恐らく毒ではないだろうが…浴びるのは嫌だ…。


私とニキは急いで雨隠裂蛙カエルの傍から離れたが、それを察して雨隠裂蛙カエルも別方向に跳んでいく。


「ナップ…! アクアス…! 今だ…!!」


私の呼びかけに、ナップは光烈玉こうれつだまを空に向けてぶん投げ、間髪入れずアクアスが撃ち抜く。


再び強烈な光が辺りを照らし、隠れようとしていた雨隠裂蛙カエルの姿を浮き彫りにした。もうこれ以上戦闘を長引かせはしない…! ここで決め切る…!


衝棍シンフォンを回しながら進行方向に先回りすると、相も変わらず舌を伸ばして反撃しようとしていた。


問題なく躱せる──そう頭をよぎった瞬間…私の体が少しぐらついた…。受けたダメージが今になって響いてきたのか…、詳しくは分からないが…ヤバい事態だ…。


なんとか転ばず持ち堪えられたが…舌が私に向かって伸びてきていた。もし巻き付かれれば…私に抗う術はないだろう…。


ニキほど怪力でもないし…今私はアクアスの射線上に居てしまっている…。つまり…食われる運命しか残っていない…。


ヤバい…ヤバいヤバい…!!


「──…ぉぉぉおおおおっ!! おりゃアアア…!!」


私の後方に居た筈のナップが、何故か空から落ちてきて、持っていた剣で舌を突き刺した。剣は深々と地面に突き刺さり、完璧に舌が固定された。


「なっ…! ナップ…!? オマエどうやって…!?」


「説明は後で…! ルーク来てくれー! 剣を押さえるんだー!!」


「任せるゴロー!!」


雨隠裂蛙カエルは必死に舌を戻そうとするも、ナップと重たいルークに押さえられ、びくともしない。


つまりもう逃げられず、擬態もその意味を半分失った状態だ。舌を辿れば必然と雨隠裂蛙カエルの顔面にぶち当たる──攻撃を当てられる…!


「よっしゃー! いくニよー! 〝合技ごうぎ ゴロメテオ〟ォォ!!」


いざ攻め込もうと気持ちが前を向いた直後…ニキの声が聞こえ、次に目に入ってきたのは…高い位置から勢いよく落ちてきたであろうメラニの姿…。


メラニは見事に雨隠裂蛙カエルに直撃しており、苦しそうに悶えている姿がはっきりと現れた。


崖登ってニキがぶん投げたのかな…? なんて余計なことを考えながら、苦しそうな雨隠裂蛙カエルのもとへ衝棍シンフォンを回しながら近付いた。


せめてもの抵抗と言わんばかりに前脚で反撃してきたが、それを余裕で避けて、眉間目がけて振り下ろす。


「〝震打しんうち〟…!!」


地面の小石が少し浮かび上がる程の一撃を受け、ようやく雨隠裂蛙カエルは動かなくなった。──これにて討伐完了、…はぁ、疲れた…。


だが思いっ切り休んでる場合じゃない…──何故ならまだ私達の目的は終わっていないからだ…。まだベナルユングの件が残っている…。


私は気怠い足運びで…勝ちを喜ぶ皆のもとに戻った──。



──第20話 雨隠裂蛙〈終〉

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