第21話

 海鳥の鳴き声と、ダンプカーのエンジン音が響き渡っている。

 

 辿り着いた先は、見渡す限りのゴミの山だった。

 

 幾台もの重機が広大な敷地を動き回り、新しい土地がゴミによって作り上げられていく。突然現れたベルカに、ここを餌場にするカラスどもが一斉に舞い上がった。

 ゴミの大地を前に、ベルカは途方に暮れたまま立ち尽くしていた。


 ▽……向こうに管理センターがある。そこに言って聞いてみよう。


 ここまで来て、諦めろとか、無駄だとか、そういう言葉をかけたくなかった。せめてベルカが納得するまでは、手助けをしてやろうと、俺は腹をくくっていた。




 突然現れて荷物のことをあれこれ訊ねるベルカに、ゴミ処理場の職員はあからさまに面倒くさそうな顔をした。


「そう言われましてもね、毎日ここに運び込まれるゴミの量、知ってます? それにね、我々はゴミを埋め立てるのが仕事なんです。いつどんなゴミが来てどこに埋めたかなんて、いちいち覚えちゃいませんよ」

「あなたにとってはそうでも、ぼくには大切なものなんです……!」


 必死になって食い下がるベルカに、さすがの職員も申し訳なさそうに眉を寄せた。


「そりゃそうかも知れませんけどね……。探し物は我々の専門外です。探すのは好きにして構いませんから」





 ▽どうする? もう少し探してみるか?


 管理センターの玄関脇に座り込んだベルカに、俺はそんな声をかけるくらいしか出来なかった。

 ここで、ベルカが「もういい」と口にしてくれればそれでいい。「まだ探す」と言うなら、それも仕方がない。諦めがつくまでゴミ漁りに付き合うさ。


 ゴミ処理場のゲートから、新しい地面の素材を満載にしたゴミ収集車が何台も入ってくる。土埃を舞い上げながら、真っ黄色の収集車がベルカの前を勢いよく走り去っていく。

 玄関前に座り込むベルカの姿に、運転手たちが野次馬のような視線を投げかけていく。

 見るんじゃねえよ。

 彼らに伝わるワケでもないが、うな垂れるベルカに代わって俺がガン飛ばしておく。


 それが、功を奏した。


 ▽……あ? あ! 


 立てた膝に頬を付けたままベルカは黙っている。


 ▽おい、ベルカ! あった、見つけた!

「……なにを?」


 ▽俺の荷物だ!


「え?」

 ▽今の収集車だ、追いかけろ!

「え、え? どういう──」

 ▽早く!


 石段につまずきながら、俺の声に尻を叩かれながら、ベルカが走り出す。

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