第24話 ショウゴ、雷撃魔法を食べまくる

「グフフ~威勢が良いのう。ショウゴだったか? その生意気な口もすぐにしゃべれなくしてやるわい」


 男爵が剣を抜き放ち、その切っ先を俺たちの方に向けて詠唱を開始する。


「雷撃よ敵を貫け! 雷撃魔法サンダー!」


 男爵の剣先より放たれた稲妻が、俺やナターシャ隊長と数名の騎士に襲い掛かる。

 もはや彼女たちには防ぎきる体力も残っていないだろう。


 が……その稲妻がナターシャたちに届くことは無かった。


 パクリっ!


魔力マナイーターの発動により、サンダーを吸収しました』


「おお……これはぁああ! きたぁああああ!」


 両手の拳にギュッと力が入る。


 ―――ついに出会ったぞ。


 旨味が凝縮されているルーに白い米という最強の組み合わせ。パンチの効いたスパイスがしっかりと馴染んでおり、肉もトロトロ。


 そう……


 ――――――ビーフカレーじゃないかぁ!


 王国にはカレーに類するものが無いのだ。

 王都内の店もある程度まわったが、今のところ出会っていない。


「ま、魔力を吸収だと……まさかおまえが例の魔力喰らいの変態か!」


 いや……変態ってなんだよ。魔王教団の中で俺はどういう呼ばれ方しているんだ。


「だが、魔力吸収にも限界はあるだろう! 喰らって死ねぃ!」


 男爵は立て続けに、雷撃魔法サンダーを連発してくる。

 限界? ようやくカレーに出会えたんだぞ……まだ1皿目だぜ……


 ―――2皿目がないなんてあり得ないだろうがっ!


「よっしゃ! どんどん撃ってこいっ!」 


 男爵は宣言通り電撃を連発してくるが、すべて魔力マナイーターの大口がパクパク食べていく。



 ムシャ! ムシャ! ムシャ! 



『サンダーを吸収』

『サンダーを吸収』

『サンダーを吸収』


 こりゃうまい! ヤバイ! 久しぶりのカレー、ヤバイ!


 俺がビーフカレーを堪能していると、ミーナが「ほげぇええ」とこちらへ吹っ飛んできた。

 そうだった、魔族ボアロスとタイマンさせていたんだった。


「ふわぁああ~ショウゴ~~」


 見習い女神ミーナは、その手になが~い髭を持っていた。

 魔族ボアロスは口元を抑えてもんどりを打っている。なるほど……力任せにひっこ抜いたぽい……うわぁ痛そう……


「ショウゴ~~~あたし頑張ったよぉおお。グスっ」

「よしよし、頑張ったな。偉いぞミーナ! ステラたちの円陣に加わってくれ!」


 半泣きミーナが、ビキニアーマーにムキムキ筋肉を躍動させながらステラたちの方へ向かう。


「ステラ~~あたし頑張ったよぉおお。給料上げてぇええ」


 ステラたちの円陣へ飛び込んでいく、ムキムキ筋肉の塊。


「はい? ―――ってあなた誰ですか!?」

「ええ! ステラ~可愛いミーナだよぉお! なんで忘れちゃうのぉおお!」

「え? み、ミーナ…? 随分たくましい…」

「やっぱり可愛くないんだぁ!」

「ああ……いえ。ミーナの可愛さが出ていますよ……そのあまりのムキムキぶりに驚いただけで」 

「ふわぁああん! ムキムキって言わないでぇええ!」


 若干の混乱はあったものの、ミーナも合流して円陣が強化された。今のミーナなら強力な戦力になる。


 さて……俺の方はと言うと。食べ続けている。もちろんカレーを。

 魔法を連発する男爵に視線を移すと、すでに肩で息をしているではないか。


 ええ~~疲れちゃってるじゃないの。


「まさかとは思うが、これで撃ち止めなわけないだろうなぁ。もっとこい! デカいのでもいいぞ!」


「な……なんなのだ魔力ゼロのクセに……おまえはいったい何者なのだ」


 いやいや、だから序盤戦で何を驚くんだ? まだ10皿程度しか食ってないぞ。これで終わりとかマジで勘弁してくれ。前回のブルーボア戦も、俺の胃袋エンジンがかかる前に終わってしまったからな。


「いいだろう。ステラを生け捕りにするため下位魔法を使用していたが、お望み通り特大の魔法で消し飛ばしてくれるわ!」


 男爵は剣を天に掲げて、詠唱を開始する。今までの魔法とは明らかに違う。

 周辺の空気がビリビリと電気を帯び始めた。


「雷の化身よ、我との契約において命ずる。一条の光となりて、雷の裁きを降り降ろせ! 上級雷撃魔法ハイサンダーボルト!!」


 上空から、極太の稲妻が俺に落ちてくる。

 しかしもはや俺の目には……


 特大カレーにしか見えないっ!


 ムシャ! ムシャ! ムシャ! 

 スパイスが効いてるし、コクのある味わい! こりゃうめぇええ! 


上級雷撃魔法ハイサンダーボルトを吸収』


「ば、バカな……きさまには限界がないのか。無限に魔力を吸収するなどあり得ん! いったいおまえは……」


「俺か? 俺は…」



 □-------------------------------


 使用可能アイテム

 ・火炎魔法ファイアーボール×17

 ・上級火炎魔法ハイファイアーボール×1

 ・聖王女の上級回復魔法ハイヒール×2

 ・光物理殴打ライトナックル×29

 ・風魔法ウィンド×47

 ・「えいっ!女神風魔法」×8

 ・「やあっ!女神火魔法」×8

 ・聖剣斬撃ライトスラッシュ×24

 ・聖剣極烈斬撃ギガライトスラッシュ×2

 ・水魔法ウォーターボール×68

 ・雷撃魔法サンダー×30

 ・上級雷撃魔法ハイサンダーボルト×3


 使用方法

 ・単発使用

 ・複数同時使用

 ・合体使用


 ☆特殊スキル

 魔力マナイーター →稼働中


 ・吸収率3倍(LV2) 

 ※吸収した魔法を吸収率に応じてアイテム化


 □-------------------------------



「ただの元大食いチャンプだよ! 撃ち止めならお返しだ!」 


 ステータス画面にてアイテム合体使用。

 上級雷撃魔法ハイサンダーボルト風魔法ウィンド×10を選択。


上級雷撃十連竜巻魔法ハイサンダーテンストームボルト!」


 ステラを含む円陣の外側に、強力な雷撃の嵐が四散して降り注ぐ。

 そこらじゅうで雷撃の光がバチバチと荒れ狂い、男爵やその兵と魔族ボアロスを包み込んだ。


 雷撃の嵐が静まったあとには、男爵や一部の兵たちがピクピクと黒焦げになっている。難を逃れた残りの兵は逃走し始めていた。

 倒れているやつらは、全員息があるようだ。辛うじてだけど。


 そこへ怒り狂った大声がひびき渡った。


「ぐぁあああ! 俺様の髭をちぎった上に稲妻をぶち込み上がってぇええ! 痛てぇええじゃねぇえか!」


 湖畔側にぶっ倒れていた、魔族ボアロスだ。

 むくりと起き上がったボアロスは、怒りに体を震わせて全身に魔力を集中させはじめる。


「がぁああ、人間ごときが調子に乗るなよぉおお! もう聖王女など知ったことかぁ! 全員まとめてあの世に送ってやるぜぇえ!」


 ボアロスが両手をこちらに向けて、詠唱を開始する。湖面がユラユラと震え始めた。


「ショウゴさま! あれは最上級魔法です! 気を付けて!」


 ステラが俺に向かって叫ぶ。最上級魔法とは上級魔法よりもさらにもう一段上の魔法だったな。

 ってことは……


 おお! 追加の別大皿料理ってことかよぉおお!


 待ってましたぁあああ! 無制限一本勝負だぁああ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【胃袋無限のマナイーター】元大食いチャンプ、魔王討伐のために転生したが、女神の手違いで魔力ゼロのモブに。ところが与えられた外れスキルが俺にとっては最高だった~魔法が使えない? なら全部食べればいい~ のすけ @nosuke2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ