始まる陰謀

第11話「聖夜の決戦(前編)」

新たな戦士ジーグが加わり心強い仲間が増えた音楽の戦士達。


だが、それぞれは一旦日常生活に戻っていた。

12月も下旬に入りいよいよクリスマスが近付いていた。

今日も練習で集まるブラックレイドのメンバー。

「なぁ太一、あれからスカウトの話どうだ?」

「どうもこうもないよ……しょっちゅう電話が来てうるさいのなんの……」

「やっぱ来てんのか……」

そこへ栞が入って来た。

「皆お疲れ〜。はい、コーヒー買って来たよー!」

「おっ!サンキュー」

「ありがとう栞ちゃん。いつも、悪いな」

「いいのいいの!さっ、温かい内に飲んで」

4人はホットコーヒーを飲んで一息つく。

「はぁ〜……温まるな〜」

「ねぇねぇ、皆は何かクリスマスの予定あるの?」

だが、その日は全員バイトが入っていた。

クリスマスの時期は休みを希望する人が多い為、休みは争奪戦になる。

3人とも争奪戦に負けた様だ。

「まっ、何も予定が無いからいいけどさ……」

茂はそう呟く。

「ねぇ、皆バイトならその日は練習しないよね?」

「だな。時間合わせるのも難しいし……」

「じゃあさ……2人でどっか行かない?」

栞が茂を誘った。

「え〜……」

「ちょっ……バカ!行って来いよ!」

辰哉と太一が茂の首根っこを掴んで無理やり立たせる。

「いててっ!!何だよ!」

「お前、いつも栞ちゃんに世話になってるんだからこんな時位付き合ってやれ!」

「たまには気の利いたプレゼントでもしろって!」

「わ……、分かったよ……」

「じゃあ、行くか。場所はちょっと考えさせてくれ」

茂は頭を掻きながら照れくさそうに言った。

「うん。楽しみにしてるね」


その頃、奏での戦士団本部では……。

「グランディオーソ……」

ミューズが王堂に声を掛けた。

「ミューズさん!声、もうすっかり治ったな」

「ええ、皆のお陰様で。それより、何を考えていたんですか?」

「いや……ちょっと……」

「裏切り者の事ですか?」

「!!……フッ……ミューズさんに隠し事は通用しませんね……」

「奏での戦士団の中に裏切り者が居るなんて考えたくありませんが……」

「しかし……そうで無ければノイズが神の楽譜の存在を知ってるはずが……」

「ええ、それは分かっています……」

「二人共、何深刻そうな顔してんだよ」

そこにやって来たのは深見だった。

「深見……いや……」

「ほら、もうすぐクリスマスなんだから飾り付けの準備手伝ってくれよ」

「そっかぁ……そうだな。やるか!」

「もうそんな時期ですか……」

「しかし……大人達だけでクリスマスってのもな……」

音曽根が言って来た。

すると……。

「そうだ!今年は皆を呼んで盛大にクリスマスパーティーをしましょう!」

とミューズが提案。

「えっ?皆って……」

「やっぱり新しくメンバーになったビートは呼びたいですね。それから……フェローチェの御一家も招待しましょう!」

「なるほど!それじゃあ、海人君へのプレゼントも用意しなきゃですね!」

王堂も話に乗って来た。

「なら折角だから、皆でプレゼント交換しようぜ!」

深見も話に乗って来た。

「いいねー!子どもの頃に戻ったみたいで楽しそうだ!やろうやろう!」


奏での戦士団でもクリスマスムードで盛り上がっていた。


勿論街でも人々はクリスマスを楽しみにしていた。

サンタさんへの手紙を書く子ども達……ケーキ屋でクリスマスケーキの予約をする人々。

クリスマスを楽しみにしている人は大勢いた。

しかし……。

ノイズのアジトでは……。


「あ〜もう!このクリスマスって時期は人間共の笑顔や楽しげな音楽に溢れてて不快だ!!不快だ!!」

ドレイクはイライラしていた。

「ならば、その怒りの有り余ったエネルギーでクリスマスを破壊して来るが良い」

ベルアゼスはドレイクにクリスマスの破壊を命じた。

「そうですね……ならいっちょ暴れてやりますか!」

ドレイクは去って行った。

「クリスマスと言えば……そろそろアイツが来る頃じゃありませんか?」

ゼレーバがベルアゼスに尋ねる。

「ああ……奴ならまた来るよ……クリスマスの惨劇を引き起こしにな……」


それから数日後のクリスマスイブの午後、茂と栞は駅で待ち合わせをしていた。

「ごめーん!待った?」

「いや、大丈夫。俺も今来た所。よし、行くか」

「うん!」

茂と栞のクリスマスデートスタートだ。


「今日は何処に連れてってくれるの?」

「そうだな……まずはショッピングモールにでも行こうぜ。そこで面白そうなイベントやってんだ」

「へぇ〜」

「昼飯はそこのフードコートになるけど、夜はミューズさん達が本部でクリスマスパーティーやるって言うから行こうぜ。栞も是非って言ってたから」

「楽しみ〜!」


そして2人はまず電車でショッピングモールがある最寄り駅へ。

そのままショッピングモールへの直通バスに乗り到着。

様々な店を見て回る茂と栞。

「コレ可愛い!あっ、コレも可愛い!あっ、コレも……」

「めちゃめちゃ目移りしてんじゃん……やれやれ……悪い、ちょっとトイレ行って来るからここに居てくれ」

「分かった!」


茂はトイレで栞から離れた隙にプレゼントを買おうと別の店へ。

「え〜っと……何が良いかな〜?栞へと今日のプレゼント交換用意にも買わないとな〜」

茂が色々な店を見て回っていると、1人の男とすれ違った。

それは冬とは思えない程の薄着で長いとんがり帽子を被った風変わりな男だった。

その男の背中にはギターらしき物が背負われていた。

「何だあの人……寒くねぇのかな……?まっ、いいや。えーっとプレゼントは〜……」


その男はショッピングモールの屋上の駐車場に上がるとギターを取り出した。

「さぁ……クリスマスの惨劇の始まりだー!!血のクリスマスプレゼントをくれてやるぜ!!」

男は怪人の姿に変身。

そして、ギターも禍々しい闇の姿に変わった。

この男の正体はノイズの新たな幹部、ムザンだった。

「ハハハハッ!!派手に滅べ!!」

ムザンがギターを演奏すると衝撃波が発生し、駐車場の車が吹き飛ぶ。

車はそのまま屋上から落下し人々の上に落ちて来る。


その光景はまさに惨劇となった。

騒ぎに気付き茂も外の様子を見に行く。

「何だ?何があったんだ?」

茂は周りを見渡し、屋上にムザンが居る事に気付く。

「あのノイズラーの仕業か……」

そこに栞も出て来た。

「茂〜!どうしたの?」

「栞……ノイズラーだ……隠れろ」

「えっ……う、うん……」

そして茂はムザンと戦う為、屋上へ向かった。

「あ〜あ……折角のクリスマスなのにな……」


その頃、奏での戦士団でも事件の発生は察知していた。

「これは……間違いない……奴の仕業だ……」

王堂は拳を強く握り締めた。

「ムザン……やはりやって来ましたね」

「深見、手を貸してくれ!今年こそ奴を倒す!!」

「ああ……」

王堂と深見は現場に向かう。


そしてドレイクは……。


「フンッ、ムザンの奴め……今年も派手に始めたな……んじゃ、俺も暴れますか!」

ドレイクはクリスマスツリーに飾られているベルに闇のエネルギーを送りベルノイズラーを誕生させた。

「行け!ベルノイズラー!クリスマスに浮かれた人間共を恐怖のどん底に叩き落としてやれ!」

ドレイクの命令によりベルノイズラーは街で暴れ始めた。


茂は屋上に上がりムザンの前に現れる。

「おい!ノイズラー!テメェ折角のクリスマスを台無しにしてんじゃねぇ!!」

「あん?何だテメェ?俺はノイズラーじゃねぇ。そんな雑魚達と一緒にすんな」

「はぁ?じゃあ何だってんだ!」

「俺はノイズの幹部の1人、ムザン……」

「ムザン?幹部だと!?まだ姿を現してない幹部が居たのか……」


そこに……。

「茂!そいつの相手はお前じゃ無理だ!」

王堂と深見が到着。

「王堂さん、深見さん……」

「ムザン……貴様……」

「ほぉ……お前は数年前に俺にボロ負けして死にかけた奴か!生きてたのかぁ……」

ムザンはそう王堂に語りかける。

「えっ?王堂さんが負けた?」

「ああ……数年前のクリスマス……奴は突如俺達の前に現れた……その当時俺はまだ未熟で……多くの仲間達と共に奴と戦った……だが、仲間達は次々に倒れ最後に残った俺も死にかける程の大怪我をした……」

「王堂はその時に負った怪我の後遺症でギタリスト生命を絶たれた……王堂にとって奴は因縁の相手と言う訳だ」

「そんな事が……」

「これ以上お前の好きにはさせねぇ……これ以上俺の仲間を傷付けさせはしねぇ……今日ここで……お前を倒す!!」

王堂は『変身』

グランディオーソがムザンに挑む。

「俺達も行くぞ」

「はい!」

深見が促し、茂と共に『変身』

ビートとジーグも戦いに加わりムザンとの壮絶な戦いが幕を開けた。


続く……。

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