経営者も神様です。

鳩原

第1話経営者も神様です。

 天才、秀才、超人、鬼人。世の中には「すごい人」を表す言葉がごろごろあります。しかし、彼にピタリと当てはまる言葉はひとつも存在し得ないでしょう。いや、全てに当てはまるとも言えます。彼は、完璧なのです。どんなに素晴らしい人間にも欠点はあります。しかし、彼は無欠なのです。思うに、彼を表すことの出来る言葉が存在しないのは時代が彼に追い付いていないからに違いありません。さて、そんな彼のお話です。


 彼は、全てを持ち合わせていました。才能、性格、地位、財産、そして容姿。しかし、彼はそれでも努力し続けました。今持っているものに満足し、現状維持を望むのでは完璧な人間とは言えません。強欲が人間の本能であり、性なのです。さて、話が逸れました。最終的に彼は、知的好奇心を満たす、お金を稼ぐ、この二つに尽力することにしました。彼は宇宙開発を中心に様々な科学分野を手掛ける会社を開発し、自分も社長兼研究所長としてその欲望を満たしていきました。利益を確実に上げつつ、研究成果も、素早く進めます。彼の名前は世界中に広がっていきました。しかし、彼が世界を震わせ、宇宙に突き進んだのも束の間。彼は死にました。死因は不明です。体は健康で、寿命というわけでもない。彼が才能を見出だした優秀な医者や科学者も、首をかしげるばかり。まるで神が嫉妬したかのようだ、と誰かがこぼしました。神からのギフトとも呼ばれる類い希な才能を持っていたというのに、神の嫉妬で死ぬとはよく言ったものです。まあ、間違っていないとは言いきれません。


 また失敗した。うちみたいな弱小企業はどんどん営業して名前を売っていかないといけないのに、今手がけてる案件が全く終わらない。この「地球」、全く滅びないじゃないか。氷河期と温暖期の繰り返しでさっさと潰す予定だったのに、生物が多様化しちゃって何かしら生き残ってるんだもんなあ。特に人類。どんどん独裁者になりうる個体を生み出してるのに、滅びる気配がない。独裁者に世界統一させてから殺せば、混乱で潰れると思ったのになあ。保険で創った気候変動ももうすぐ来そうだけど、次の仕事の納期過ぎちゃうんだよなあ。……え?また失敗した?そっか、完璧な人間でも無理かあ。いいよ、そいつ早く殺して次の個体出さないと間に合わない。え?運と身体能力マックスにしたから事故死できない?性格も補正かけたから人に恨まれてなくて殺人も不可能?いいよ、じゃあ「神の裁き」使っちゃって。おんぼろだけど動くだろ。え?時代的に不自然とか関係ないから。早くやんないと、締め切り来ちゃうから。


 あーあ。生物系の創世企業は少ないから手出したけど、なかなかどうして、楽じゃないなあ。

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