第56話 〜音楽が紡ぐ不思議な力と縁〜

 次の日,王国に居る俺達はローレンツ達を探した。

 ギルドに行くと簡単に見つける事が出来た。


 「おう! カナデじゃねえか! 久しぶりだな! ってちょっと待て――」

 ローレンツパーティーを俺達は拉致した。


 そのまま教会にも向かい,マリと教会に居る子供達を拉致していく。

 ドラゴンになったクロエの背中に乗り,移動する。


 移動先はドワーフの国だ。到着するとすぐにダマール,チッチ,トットを連れて行く。

 王宮に行き,ドワーフの王に頼んで協力を募った。


 すると多くのドワーフが王宮に集まり,俺達の事を手伝ってくれるようだった。

 全員を連れてまた移動をする。


 次はエルフの里へと向かう。

 突如空に現れた黒龍で大変な騒ぎになるが,そんな事は気にせずフーゴとミーナの元へと行く。


 フーゴに協力を求めると,協力してくれるエルフを集めてくれた。

 協力してくれる全員を連れてボルドーへ向かった。


 ミケラルドの城に突撃する。

 またかといった感じで兵士達とミケラルドが俺達を囲んだ。


 「ミケラルド様,ここに居る人達に部屋を用意してもらえませんか?」

 「部屋って……全員?」

 「全員です全員」


 バライティの富んだ種族の集まりに驚いているのだろう。

 ドラゴンに人間,それにドワーフ,エルフにリザードマンも居る。とにかく一箇所にこんなに集まる事なんてきっとないだろう。


 「ほう! 中々いい場所じゃないか」

 ダマールが言う。


 「久しぶりミケラルド。城の部屋使わせてもらうわね」

 ミーナが同胞を連れて城の中へと勝手に入っていく。


 「面白い人種勢揃いだな」

 俺の方をポンとローレンツが叩いた。


 「それで? カナデは何をするつもりなんだ?」

 カイゼル髭を触りながらミケラルドが俺に訊ねる。


 「ミケラルド様って音楽好きですよね? 音楽の力,可能性を信じていますか?」

 逆に俺はミケラルドに質問した。


 フフッとミケラルドから笑みが溢れた。

 「私にその質問を? 愚問だなカナデ。この世界で一番信じてるよ!」


 「なら良かったです! じゃあ俺達にしか出来ない事をしましょうよ」

 「どういう事……?」


 俺はミケラルドに思いを伝えた。

 早急にミケラルドがあらゆる人を城に呼び寄せてくれた。勿論ララも来てくれた。

 城の空いている場所を使って俺達は準備を始めた。



 時間が経ったとある日,俺は空を見上げていた。

 「今日はいい天気だな〜」

 「カナデ呑気じゃな」

 「オイラは何か楽しみだぞ」


 「あちきはちょっと緊張しちゃってるわ」

 「ハハハ。さあ,じゃあやろうか」

 風が程よく吹き,心地よい日に俺達はとんでもない場所に今いる。

 

 ゴルゴタ平原のド真ん中に俺達はいる。

 周りには帝国か王国,魔国か分からないが沢山の兵士が見える。


 空には飛んでいる魔物も居て,妖精族が生み出したであろうゴーレムが待機していたりしている。四面楚歌の状態で俺達は危ないド真ん中にいる。

 だけど,まだ彼らには魔法で見えてはいない。


 「じゃあ行こうか!!!!!!!!!!!!!!!」

 クロエが魔法で俺達を見えなくしていたのを解除し,俺達は姿を露わになった。

 ミミが魔力を使って特大のゴーレムを生み出し,俺達が注目を浴びるように仕向けた。



 クロエが多方面にお辞儀をする。

 台に上り,タクトを振りかざす準備をクロエがする。


 ライムはピアノを,俺はヴァイオリンの弾く準備をする。

 ミケラルドが集めた楽団も演奏する準備を始める。


 クロエとアイコンタクトし,俺達は演奏を始めた。

 「♫〜♪♪〜♫〜♪♪〜〜♪♪」

 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲『交響曲第九番 第四楽章 歓喜の歌』


 「♫〜♫♫〜,♫〜♫♫〜」

 「愛こそ歓喜に導く光,さえぎる苦難を超えて進まん」

 「歓喜の頂き,踏みしめた時,我らは兄弟世界は一つ」

 「歓喜の頂き,踏みしめた時,我らは兄弟世界は一つ」


 ハハハ! 全員バラバラだ。練習の時よりバラバラだ。でも最高だなおい!

 

 クロエは何してるんだ全く……。

 ジャンプしながらクルクル周りながら指揮棒を振ってやがる……でも楽しそうだ。


 ロイも楽しそうにトランペットを吹いてやがる。音はまだまだだな。

 楽しそうに演奏し,楽しそうに皆で歌っている。


 ミミにも急遽作ったカスタネットで演奏に参加してもらっている。

 皆で力を合わせて第九を奏でる。


 幻覚か分からない。俺達が演奏している場所から光の粒が空に昇っていくのが見える。

 

 一体何が起こってるのだろうか。

 これで戦争が止められるなんて思っていない。

 一瞬でもいいから動きを止めてくれないだろうか? 一瞬でもいいから考え直してもらえないだろうか? そう思っている。


 演奏が終わった。一気に静かになり風の音が聞こえる。

 「どうなったんだ?」

 周りを見渡すと,空を飛んでいた魔物やゴーレムが消えていた。


 馬がこちらに向かって駆けてくる音が聞こえてくる。

 「カナデ様……?」

 馬に乗ってやって来たのは,サラン侯爵だった。


 「あれ? サラン侯爵じゃないですか? どうしたんです?」

 「どうしたというのはこっちですよ! こんな所で何やってるんですか!?」


 「いや〜〜,音楽?」

 ハハハ! と俺は笑って見せた。


 「音楽が始まったら,何故か魔法が急に使えなくなってしまったんです。妖精族のゴーレムの召喚魔法も解けてしまいました。帝国側も魔国も同じような状況に陥って驚いて,兵を引いたのではないかと思われます」


 「取り敢えずは止まったんですか?」

 「実際に止まりました」


 「サラン侯爵,和平を結び事は出来ないんでしょうか?」

 「難しいと思いますよ本当に……」


 「クロエ,どうにかならないか? 頼むよ! どうにかしてくれ」

 

 「カナデがそんなに頼むなんて珍しいの。仕方ないのじゃ! ちょっと待っておれ」

 クロエはそう言うと物凄い速度で空に飛んで行き,何処かへ消えていった。


 「なあなあカナデ,オイラのトランペットの演奏どうだった??」

 「最高だったぜ!」

 「やっぱりそうか? 上手くなったと思ってたんだぜ」


 「何言ってるのよ! あちきの方が良かったでしょう?」

 カチカチとカスタネットの音を出しながらミミがやってきた。


 「二人共,いや全員良かったよ本当に。素晴らしかった」


 凄い速度と勢いでこっちに向かってくる何かが見えた。

 近づいてくるとそれは大きなドラゴン達だった。


 「お〜〜い!」

 ドラゴンを三体引き連れてクロエが戻ってきた。


 突風を撒き散らしながら俺達の目の前に着地した。

 「連れてきたぞ〜〜」

 「連れてきたぞ〜〜って誰をだよ!」


 「こやつらは,赤龍,青龍,白龍じゃ!」

 「!?!?!?」

 俺とロイ以外はびっくりした表情をしていた。イマイチ俺はピンと来てなかった。


 「伝説の龍って存在したんですか……」

 サラン侯爵は今にも卒倒しそうになっている。


 伝説の龍達もクロエと同様に人間の姿になっていく。

 クロエと同じく全員少女の見た目に変わった。


 「おい! 黒龍! 急に呼び出しやがって! どうしたんだよ!」

 赤い服を纏っている彼女が発言する。彼女が赤龍だろうか。


 「お主等,余に負けた時に約束をしたのを覚えておるか?」


 「覚えてますわよ。いつか黒龍の言うことを何でも一つ聞くという事でしょう?」

 白い服を着た少女が答える。

 「そうじゃ。それがその時じゃ!」


 「それで? 何すればいいんかえ?」

 青い服の少女がそう尋ねた。


 「それはこれから決めるのじゃ。サラン侯爵とやらどうにかして和平交渉に持ち込め! もし交渉しないって国がいたら伝説の四龍によってその国を滅ぼすと脅してもよいぞ。とにかく話し合いに持ち込め」


 「分かりました……どうにかしてきます」

 サラン侯爵は馬に乗って来た道を駆けていく。


 「なんだよ。ちゃっちゃと終わる訳じゃないのかよ!」

 「まあ待て赤龍。取り敢えずなんじゃが……」


 クロエが人間に起こっている事情と状況を話し,自分自身は現在俺の従魔になっている事,そして俺がこの戦いを止めたいと思っている事を話し,従魔としてご主人の願いを出来るだけ叶えたいと考えている事を他の龍達にクロエは話した。


 「へぇ〜,黒龍が人間の従魔にねぇ〜」

 青い服を着た少女が反応する。


 「意外と楽しいぞ。知らない世界を色々を見たり聞いたりして楽しいのじゃ」

 会話をしているとサラン侯爵が戻ってきた。


 「この場所で集まり臨時に会議室を設け,和平の話し合いをする承諾を魔国と帝国からもらって来ました」


 「良いぞ! では余達はここで待とうかの」


 サラン侯爵が連れてきた一行が大きなテントを張り出した。

 三方向から一団を連れて代表がこの場所に集結した。


 俺とロイ,ミミも一緒にテントの中に入る。伝説の龍達も勿論一緒で。

 サラン侯爵も国王と思われる人と一緒に中に入る。


 席に座るとクロエが開口一番に言い出す。

 「お主等,取り敢えず戦争をやめるのじゃ! 平和に暮らせ。和平を結ぶのじゃ」

 いきなり過ぎる発言だった。


 「ドラゴンが見えたのはこちらからも分かっていましたけど,本当に伝説の龍なのか?

 「私もそれは疑問に思っている」


 王国ではない帝国と魔国の代表がそう発言した。


 「ほう! オレ達の事を疑うってか?」

 「それはちょっと許せませんね」

 「滅ぼしてもいいんかえ?」

 各ドラゴン達がそう言うと,急に地面が揺れだした。


 「やめるのじゃ! 発言には気をつけるのじゃ人間共,余以外の三龍は刺激したら本当に国ごと滅ぼされるぞ?」


 皆が突然黙る。

 サラン侯爵が率先して話を進める。


 先程の影響なのか分からないが話がスムーズに進んでいく。

 王国側が出した和平条約を各国がすんなり呑んだ。今回の戦争を撤退し,やめる事も今ここで決定した。


 ここで取り決めた条約をもしも破った場合,四龍が手を組み,破った国に対して強制的に制裁を与える事も決まった。


 帝国や魔国,王国が勝手なことをしないようにと,抑止力で国境付近に四龍の住処を造る事が決まった。今まで世俗から離れていた伝説の龍達だが今回の事で世俗と関わる事となった。


 「なあクロエ,帝国の魔力を使えなくする魔具とかあるけど,大丈夫なのか? クロエでも魔法が使えなくなったらマズいって言ってたじゃないか」

 俺はクロエに耳打ちした。


 「大丈夫じゃ。そこには赤龍を置くから問題ないのじゃ。赤龍はほとんど魔法が使えん。圧倒的な腕力で敵を殲滅するスタイルじゃからな。魔法は関係ないのじゃ! それに圧倒的な防御力も有しているから人間の攻撃なんぞ全く食らわんじゃろ」


 「なるほどな……それなら大丈夫なのか」


 「そうじゃ最後に言うとくぞ! 四龍を討伐しようとか思うなよ人間共。一瞬で消されてしまうぞ! 消されてもいいと思っておるなら別に止めないがの」

 話し合いは呆気なく進んで和平条約が締結ていけつした。


 その後,宴が開催された。

 各国の交流と種族の交流,四龍の事を接待する為という事もあるだろう。


 各国の王がメイン席ではなく,四龍が座っているからそういう事だろう。

 テーブルに沢山の料理が運ばれてくる。俺達でも目にした事がない料理も多く,どれも美味うまそうだった。


 「おお! 何かめちゃくちゃ美味そうだなカナデ! コイツは最強飯だな」

 「あぁぁぁぁぁ,あちき食べ切れるかしら。妖精の大きさが妬ましい! いっぱい食べたい」


 多くの料理と酒が用意され,宴が始まった。

 ものの三十分しか経過していないが,一つ大事な事が分かった。

 四龍全員が酒癖が悪いという事だった。


 すでに酔っ払って騒ぎ始めていた。勿論クロエも酔っ払っている。

 案の定クロエは俺に絡んできた。


 「カナデ〜! 余はかなり頑張ったと思うのじゃ今回! 好きなだけ演奏を聞かせてくれても良くないか?」


 「わぁ〜ったよ。しょうがないなぁ〜。あんまりくっつくなよ!」

 ピアノを出してもらい,俺とライムは演奏を始めた。

 華麗に楽しく,優雅な音楽を,一緒に来た演奏隊の人達も一緒になって演奏をする。


 ララも参加して歌ったり踊ったりと,楽しい音楽を奏で最高の時を過ごした。


 気付いたら朝になっていた。

 四龍に挨拶を交わし,住処などの準備が出来たらクロエが呼びに行くと伝えた。

 ドラゴンの姿に戻り空へと飛び立って行った。


 クロエの背中に連れてきた全員を乗せて,それぞれの場所へと送り届ける。

 

 全員を送り届け俺達は今,空にいる。

 「だぁ〜〜,疲れた〜〜,ねむ〜〜い,腹減った〜〜」

 「カナデ! 余達は何処に行くのじゃ!?」

 「王国に戻るぞ。今度こそ本当にライデンで飯を食うぞ!!」


 「ほう! それはいいのじゃ! じゃ急いで行くぞ!」

 「マジ? いや! ちょっと待て待て,クロエ」

 一気に速度が上がり,振り落とされそうになる。


 「だぁぁぁぁぁぁ!! 死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 王国に着く頃になると,夕日が赤々と地上を照らす時間帯になっていて,ライデンが開店する丁度の時間だった。


 王国へと入り,ライデンに向かう。

 ボロボロだった店構えだったライデンはもうなく,すっかり綺麗になりしっかりとした店構えだった。


 「カナデ! 中々いいところじゃないの」

 「じゃあ行こうぜ皆!! オイラが一番乗り〜」

 ロイが走って店に入っていき俺達も後を追いかける。


 「いらっしゃ――」

 「おお! カナデじゃねえかよ! 久しぶりだな」


 「ただいまブライアン! 食事しに来たよ!」

 「ああ,席に座って待ってろ。美味いもん沢山出してやる」


 「おーーいカナデこっち!!」

 見るとローレンツ達も来ているようだった。


 一緒のテーブルに俺達は座った。

 「いつの間に王国に戻ってきたんだ?」

 「ついさっきだよ! 王国に戻ったらライデンの食事を食べないとな」


 「ああ久しぶりじゃの〜早く来ないかの〜」

 「オイラも待てないぜ!!」

 すぐにブライアンが食事を持って来てくれた。


 「おらよ! どんどん食ってくれ」

 「じゃあ頂くか」


 「「「「いただきまーす」」」」

 「久しぶりに食べたけど,ライデンの飯は本当に美味い」


 「「「@#$%#@%#」」」

 皆も美味いと思っているようだ。


 「そんなことよりさぁ〜,久しぶりにライデンに来たんだから何か弾いて行きなさいよカナデ〜」

 「何だよルイーザ。もう酔ってるのか?」

 「酔ってないわよ! 私達も手伝って大変だったんだから良いじゃないの」


 「本当助かったよありがとうな! 分かったよルイーザ。クロエ,ピアノ出してくれ」

 クロエにピアノを出してもらい着席する。


 俺は鍵盤に指を置き,ライデンで再び音楽を奏でる。


 「♪♫♫♪♪♫♫〜♪♪♫♫♪〜♫」

 スコット・ジョプリン作曲『ジ・エンターテイナー』

 

 俺が初めてこの店で弾いた曲を演奏する。

 この世界で楽しい音楽をこれからもずっと俺は奏でていく。


 〜 Fin 〜


【後書き】

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。この作品は,暑くもなく寒くもない季節の風呂上がりに涼しい風を感じながら,好きな飲み物を飲みながら星空の元,オルゴールを聴いてるかのような雰囲気の作品を創りたいと思い書き始めました。

 さらに言うと,もし自分の書いた作品が人気が出たとしてメディアミックスされた時に一番映えるのは何か?と考えた時に思い浮かんだのが音楽でした。


 アクションなどの戦闘シーンというのも映えるとは思いますが,音楽という開拓されていないジャンルで挑戦してみようと筆を取りました。

 ですが,そんな思いと雰囲気を文章で表現するには難しく,とても困難で苦労しました。結局の所,拙文になってしまい自分の思いが乗せきれたとは言えません。


 長々と物語を進める事も出来ましたが,次の執筆に繋げる為にも途中から急ぎ足で最終回を迎えさせて頂きました。

 個人的には打ち切りといった感想です。


 そんな作品でも最後まで読んでくれた読者にはとても感謝しております。

 皆さんの中に少しでも何か残せたのでしたら,光栄に思います。


 次回作も次々に考えています。続々と作品を載せていきますので興味があればまたご覧になって下さい。


 今回私の小説を読んで頂き。誠にありがとうございます。

 またお逢いしましょう♫

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天才ピアニストでヴァイオリニストの二刀流の俺が死んだと思ったら異世界に飛ばされたので,世界最高の音楽を異世界で奏でてみた結果 yuraaaaaaa @yuraaaaaaa

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