第39話 〜冒険者ロイ〜

 ロイの事を心配で,何故か全員で付いて行く事に……


 「何故こんなコソコソして付いていくのじゃ!?」

 クロエが痺れを切らして話し出した。


 「バカ! あんまり大きい声で話すなよ! バレるだろ!?」

 「そんなに心配なら依頼を受ければ良かったのじゃ!」


 「今はそんな事いいんだよ」

 ローレンツ達までも付いて来て大渋滞だが,そんな事にも気付かずロイは彷徨っていた。


 「おいおい! こんな事にも気付けないで大丈夫なのか?」

 ローレンツが言うように,こんな事に気付けないようじゃ危ないと素人の俺でも思う。


 「ライム,ロイの事頼めるか??」

 ライムにそう俺は頼むと,ライムはロイの側に向かっていき,場所を導くかのようにぴょんぴょん跳ねてロイを先導し始めた。


 「なんだよライム。こっちだって言うのか?? まてよーー!!」

 ロイはライムが行く方向へと向かっていく。


 俺達も一緒に大移動をする。

 しばらくすると,大きな建物が見えて来た。

 もう使われていないだろうと思わせる程朽ちている建物だが,かなりの広さがあり,アジトとして使うなら恰好の場所だ。

 近くの物陰にロイは隠れて何かを伺っている。


 「どうやらあそこが,盗賊のアジトのようじゃな」

 「クロエ分かるのか??」

 「人間の気配が多くあるのじゃ。それに血の臭いもするのじゃ」

 

 ロイは鞘から剣を出して,一人で物陰から出たり戻ったりを繰り返している。

 「あ〜もう見てられないのじゃ。何してるのじゃロイは」


 リングストンが立ち上がってロイの方へと向かっていく。

 「おい! おい! リングストン!」


 ロイに何か話しているリングストン。すぐさま二人でアジトの中へと向かっていく。

 「あ〜もう仕方ないなぁ」

 ローレンツが立ち上がってリングストンとロイを追いかける。


 「あ〜あ〜もう仕方ないわね」

 「ワシらも行くしかないかの〜」

 「待って下さい……」


 「皆して行ってしまったぞ」

 「何してるのよ! 私達も行くわよ。ロイは私達の仲間なのよ」

 ルイーザが飛び出していく。俺はルイーザが仲間だと認識していた事に驚いた。


 「結局全員で行くことになったのじゃ」

 俺とクロエもアジトに乗り込みに行く。


 アジトに入ると,あちこちで怒号と声,そして魔法を使った爆音が所々で聞こえる。


 クロエとミーナもアジトに居る盗賊を撃退していく。

 俺はクロエとミーナの後ろに隠れ,ことの成り行きを見ていた。


 戦闘をしている気配がだんだん消えてくると,ローレンツ達がロイと共に戻ってきた。           


 リングストンの手には,盗賊の首があった。


 「ロイが盗賊のボスを倒した……」

 「カナデどうだ!? オイラだってやれるんだぜ!」

 興奮してるのか,ロイは剣をブンブン振り回しながら話す。


 「とりあえず,何事もなくて良かったよ! じゃあ帰るぞ」

 結局俺達は全員で盗賊のアジトを殲滅した。


 辺りはすっかり暗く,村に戻ってもほとんどの灯りが消えているような時間帯だった。


 村長の家は灯りが点いていて,ずっと起きていたようだった。

 ドアを開けると,椅子に座った村長がテーブルに肘をついて頭を抱えていたが,帰ってきた俺達を見て安堵の表情を浮かべている。


 「心配してたんですよ……」

 「悪かったな村長。まあでも盗賊はロイの坊主がちゃんと始末してたぞ!」

 「うむ……」

 リングストンが盗賊のボスの首を村長に差し出した。


 「本当なんですか?」

 「本当じゃ。その首がボスが分からんが,アジトにいた盗賊達は全員始末したから問題ないじゃろ!」


 「そうなんですか!? 本当にありがとうございます!」

 村長を俺達に向かって頭を下げる。


 「感謝するなら……ロイに。ロイが盗賊を始末した。お金はロイにやってくれ」

 リングストンがそう言葉を発した。


 「ありがとう!」

 村長はロイの手を掴みロイにお礼を言った。


 「良いってことよ!」

 ロイは照れくさそうに応える。


 「さあ問題は解決しんたんじゃ! 宴でもしようぞ。酒もってこーい!」

 「おお! いいな! 酒もってこーい!」

 ローレンツがクロエに乗っかった。


 「私は久しぶりにカナデの音楽聴きた〜い!」

 「拙者も聴きたい」


 「全く……しょうがないなぁ」

 俺はクロエに頼んでピアノを出してもらい,音を奏で始める。


 村長の家で大人数のどんちゃん騒ぎが始まる。宴は朝まで続いた。


 寝不足でフラフラになりながら俺達は村を出発する準備をする。

 村長からロイは盗賊を討伐した事で報酬をもらう。嬉しそうにそして大事そうにロイは受け取り抱えていた。

 

 村の入口でローレンツ達と挨拶を交わす。

 「まさかこんな所で会うとは思わなかったが,また会おうぜカナデ」

 「ミーナ!! 帝国に捕まった同胞を助けてあげてね。私も本当は付いて行きたいけど,依頼の途中で行けないのよ」


 「ルイーザさん任せて下さい。クロエやロイ,それにライムも頼りになりますから大丈夫です」


 「んッ!? おい! ミーナ。俺の名前が無かったと思うんだが……」

 「カナデは凄いのは音楽だけ! 戦えないでしょ?」

 「いやぁ……まあその通りなんだが……」


 リングストンがロイの頭をくしゃくしゃと撫でる。

 「なんだよ!? トカゲのおっさん」

 「……」

 「無言かよ!」


 「じゃあ俺達はそろそろ出発するよ。じゃあね皆」

 村出て,ボルダ帝国へと再び向かう。

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