第10話 〜新たな仲間〜

 あまり寝付けず俺は早くに目が覚めてしまった。

 せっかくだからピアノを弾く。

 少しするとクロエが起きてきた。

 「カエデ昨日の演奏も凄い良かったのじゃ!」

 「それはありがとうよ」


 「準備したら出発するぞ」

 「そうじゃの〜。ところでカエデの足元にいるのはなんじゃ?」

 「ん?」


 演奏していて,気付かなかったが足元に何かがいる。

 見ると青い色をした生物がいた。


 「なんだスライムか!」

 「スライムってあのスライム?」


 「そうじゃよ! 結界を張っていたが敵意もないし,スライムじゃ何も出来ないから入ってこれたのかもしれん」


 結界とか張ってるのかよクロエは。そんな事言ってないじゃん……

 「なんかカエデに懐いておるの〜」

 「ん〜よくわからないけど,スライムってどんな生物なんだ?」


 「よくわからん! 人間の子供でも倒せるモンスターじゃし,特に危ない事もない」

 「そうなんだ」


 触ってみるとぷにぷにしてて冷たくて気持ちがいい。

 しゃがんで触っていると俺の頭に乗ってきた。

 「なんか面白い生き物だな!」

 「謎が多い生物じゃからの〜。カエデと従魔契約したいんじゃないんか?」

 「え? 従魔契約ってやつ? クロエとしたやつか?」


 「そうじゃそうじゃ。良かったら契約してやれ」

 「名前をつけるんだっけか??」

 「そうじゃよ」


 「じゃあスライムだし,ライムってのはどうだ??」

 名前を付けると俺とスライムが光りだした。


 「これで完了したのか?」

 「ああ完了じゃ! ライムか。いい名前じゃないか」


 俺達の旅に新たな仲間が出来た。

 「じゃあそろそろ行こうか? ロックリザード討伐に!」

 「よし行くか」


 依頼書の場所に到着すると,大きな洞窟の入り口が見えてきた。

 「あそこにロックリザードの群れが棲み着いているらしい」

 「そうかそうか。じゃあ早速行こうかの」


 クロエが先頭を切って洞窟の中へと入っていく。

 中は暗くてよく見えない。クロエが指を鳴らすと洞窟の中が明るくなった。

 一本道で何か特にある様子はなかったが,奥に進むと,とても広い開けた場所に到着した。


 大きな亀のような姿をしたモンスターが群れになっている。

 きっとあれがロックリザードなのだろう。

 「おお! おお! モンスターが群れおって!」


 クロエが言葉を発するとロックリザード達がこちらに気付いたようだ。

 そしてこっちに向かってくる。


 クロエは手をかざすと,突然目の前が真っ白になるほどの閃光と轟音とどろきおんが起こった。

 俺は何が起こったのか分からず,視界が戻ると,ロックリザードの群れは黒焦げになって倒れていた。


 「な,何が起こったんだ??」

 「なーに! ちょっと雷魔法を放って殲滅しただけじゃ」

 「そうなのか……」

 たまにクロエの黒竜としての強さの片鱗を感じると,本当に危ない奴なんだと認識する。


 「それじゃあロックリザードをアイテムボックスに入れて街に戻るか」

 「うむ! そうじゃの。今日はライデンの食事を食べたいしな!」

 「悪かったな不味くて!!」


 「じゃあ帰ろうとするかの」

 もっと時間がかかると思ったが,一瞬にして終わったので今日中には街には着きそうだ。

 夕方になる前に街に着いた。

 さっそくギルドへと報告をしに行く。中へ入るといつもの騒がしい冒険者達の声が聞こえる。


 「あれ? カナデさんじゃないですか」

 声に反応すると,シスターのマリさんだった。


 「マリさん! どうしたんです? 珍しい所で会いましたね」

 「実はマンドラゴラがもう育って,ギルドに買取をお願いしてる所なんです」

 「ええ!? もうですか??」


 「なあクロエ。そんなに早く育つもんなのか?」

 「知らん!」

 まあそうだよな……


 「今日の朝起きたら,地面から声が沢山聞こえてきて,抜いたら立派なマンドラゴラが出てきたんです」

 「そうですか! 良かったです!」


 「本当に皆さんのおかげです。それに相当いい値段で買い取ってもらえるようで,これで教会の運営と,子供達の食事も,もっと良いものを食べさせる事が出来ます」

 嬉しそうなマリさんの顔を見て,俺も嬉しくなった。


 「良かったのマリ! また何かあっても余が守ってやるのじゃ」

 「ありがとうねクロエさん」

 「マリさんに伝えないといけない事が」

 「どうしたんですか?」

 

 俺達が街から離れて旅に出ることを伝えた。

 「それは……寂しくなります」

 「旅に出る前にマリさんの教会が大丈夫そうなのを確認できて良かったです。どうなってしまうか心配でしたから」


 「そんな――私達お礼もちゃんと出来ずに」

 「いいんですよ別に! 良かったら子供達も連れてライデンに来てください。ご馳走しますよ。それに楽しい音楽も用意してますから」


 「分かりました。必ず皆で行きます!」

 「楽しみにしています。俺達は依頼の報告があるので,これで」

 「マリきっと来るのじゃぞ!! 約束じゃ」

 「ええ勿論です」


 俺はマリさんと別れカウンターに討伐した事を伝え,ギルドマスターのルネさんに取り次いでもらった。


 部屋を訪れてネルさんに討伐の報告をした。

 「早かったですね。ありがとうございます依頼を受けてくださって」

 「カッカッカ! 余にかかれば簡単な仕事じゃったぞ!」


 「流石はクロエさんですね。感謝致します」

 ギルドマスターが頭を下げる。

 「よいよい」

 自信満々に誇らしい顔をするクロエ。


 ルネさんがこういうスタイルで冒険者を上手く操っているのかは分からないが,クロエの扱い方は凄い上手いと感じた。


 「倒したロックリザードはどうしたのでしょうか?」

 「アイテムボックスに入れてあるぞ」

 「それでしたら,私も行きますので,解体場へ行きましょう」


 ルネさんは立ち上がり,俺達を案内する。ギルド内の奥にある大きな扉の部屋を開けると,沢山の男達が血まみれになりながら解体作業をしていた。


 「クロエさんここにロックリザードを出してもらえませんか?」

 「わかったぞ」

 クロエはアイテムボックスから大小様々なロックリザードを出した。


 「なるほど……結構な数のロックリザードがいたんですね。本当にクロエさんがいて助かりました」

 「それじゃあ皆さん解体の方頼みましたよ!!」

 男達が声を張り上げて解体作業へと取り掛かる。


 「ロックリザードの買取は解体が終わらないと金額を出せないので,明日になりますがよろしいですか? 討伐の報酬はすぐに出せますが,明日一緒にして受け取りますか?」

 「それじゃあ明日来るので,報酬は一緒にして下さい」

 「分かりました。明日ギルドに来てカウンターに伝えれば受け取れるように手配しておきますので」


 「冒険者のランクもGクラスからFクラスに上げますので,プレートを貸して貰えますか?」

 「え? あげてもらえるんですか?

 「ええ勿論です。今回の討伐はかなりの功績ですから」

 ギルドマスターが俺達のプレートを書き換えた。


 「ありがとうござますネルさん!」

 「おお! プレートが変わったのじゃ」


 「いえいえ」

 「それじゃあ俺達はそろそろ行きます」

 「カナデさん,私からのプレゼントですこちらを」

 ルネさんからもらったのはこの世界の地図だった。


 「旅の役にきっと立つでしょう。実は結構珍しいんですよ」

 「いいんですか?」

 「ええ。今回の討伐依頼を受けてくれて感謝してますから」

 「ありがとうございます。遠慮なく頂きます」

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