第16話 勇者SIDE ボロボロ

どうしたら良い…


日に日に生活がグチャグチャになっていく。


凛々しかったリダ


癒しのフリージア


可愛らしいミルカ


それがまるでゴミみたいに変わっていく。


街の中は良い…高級な宿に泊まり、世話役をギルドに頼めば良い。


事務仕事も専門の人間を頼めばどうにかなる。


だが、旅先はどうにもならない。

俺達について来れらる人間は居ない。


それでも誰かに頼らずには生活が出来なかった。


『こんな書類も碌にこなせないんですか?』


『聖女様の賢者様に剣聖様…家事が全くできないんですか幻滅です』


『どうやら、今までこのパーティが上手く回って居たのはリヒト殿が居たからですかね』


『リヒト様の代わり?馬鹿ですか? S級は世の中に10人満たないんですよ…他のS級冒険者が雑用をするとでも』


頼れば頼る程信頼は無くなる。


それなのに、問題の原因は解決しない。


結局、街での問題は、お金と信頼を失う事で解決したが、野営や旅、小さな村では何も解決しなかった。


そもそも勇者の危険な旅についてくるには、リヒトレベルの人間が必要で…同じ位の実力者は、金が稼げるからこんな仕事を引き受けてくれない。


評判はどんどん下がる…


人気があった幼馴染の3人は…戦うだけで『家事が何も出来ない』」女と知られる様になり、清潔感が無くなり…女として終わっている。


そういう陰口を叩かれる様になった。


ヨレヨレの服にボサボサの髪…誰が憧れるものか…


街で宿屋に泊まり…清潔感のある状態にするためにお金をかけ…旅に出てボロボロになり、お金を使いまた戻す。


それでも昔のようにはならない。


教会からも『無駄使いが多い』と責められる。


どうしようもない…


どうしてもリヒトに戻ってきて貰わないと、大変な事になる。


◆◆◆


「カイト…リヒトはどうなのよ…早く戻る様に言ってよ」


フリージアが限界に来たようだ。


「何回も連絡をしているが、上手くいってない」


「ちゃんと謝ったの? この際プライドを捨てた方が良いよ、真摯に謝ればリヒトだもん許して貰えるよ」


「ミルカ、俺なりに謝りの手紙も送ったが…駄目だ…」


「それじゃもう難しいね…ハァ~諦めるしか無いか」


「リダ、だけど誰に聞いてもリヒト以外は無理そう言うじゃない」


「あのさぁ、カイト…そもそも、只の待遇改善じゃ駄目だったんじゃない…かな」


嫌な予感がする…


俺も彼奴にしてきた事を考えると…それしか思いつく感じがしない。


「何かあるなら言ってくれ」


「そもそも、リヒトは私達と同じで小さな世界で生きていたのよ…男2人に女3人…それだけの世界…普通に考えたら私達3人しか恋人候補、婚約者候補は居ないわ…それなのにカイトが私達を独占したからリヒトは1人ボッチになったの…皆、同じ立場だったらどうかな? 耐えられる」


「「耐えられない(よ)」」


「カイトは?」


「同じだ…」


「続けるわね、誰も自分を好きになってくれる異性が居ないなか…親友のカイトが3人を独占してイチャイチャしていたら傷つくわよね…だから、リヒトは『此処に居たらずうっと1人』そう思ったから離隊をすんなり受け入れ出ていったのよ」


「だがフリージア、ならどうすれば良いんだよ」


「皆、リヒトは私達3人の中で誰が好きなのかな?小さい頃から一緒だったんだから絶対この3人の中に好きな女性が居る筈…その1人が今後リヒトの婚約者になる…それしか無いわ」


「俺は反対だ…」


「「私も」」


「そう…それならこのままの生活を続けるしかないわ…それにこれは今が最後のチャンスなのよ…」


「どうして?」


「ミルカ、リヒトに恋人が出来たら、もうこの話は通じなくなる…遅くなればなるほど不利になる可能性が高いから、やるなら今しかない」


「フリージア、一体どうすれば」


「リヒトが3人の中で誰が好きなのか考え…その1人がカイトと別れリヒトを迎えに行く…それなら帰ってきてくれるかも知れないわ」


「背に腹は変えられないな、話し合おうか」


俺にはこの話を即答で断る事が出来なかった。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る