第44話:夏の終点・一駅前
第44話:夏の終点・一駅前
八月三十日。
今日の投稿はどうしようかな?
前に続けて夏をテーマにやりたいんだけど……うーん。
『ひぐらし〇なく頃に』かな、去年うみねこに続く新作もやったから話題性もあるし。
というのも、業・卒が無かったかのように次世代編が新しく作られた。
それで話題と人気が再熱して、その流れで去年『ひよどりのなく頃に』が発表・放映。
久しぶりの完全新作とあって爆発的な人気で、今は映画化まで決定してる。
って色々それらしく並べたけど、やっぱり無印と解が好きだからだよね。
ちなみに、実写版の個人的な賛否は真ん中くらい、可もなく不可もなく。
かなり昔の映画だし、今の映像技術と比べたら大概の古い映画が……ねぇ?
おっと、この後予定あるし早く予約投稿しないと。
久しぶりの秋葉原だし、すっごく楽しみだなあ♪
…………
……
「お待たせ……」
「おう、全然待ってないから大丈夫だぜ!」
「おはろー」
「良かった……おはよう……」
「んじゃ行くか、みかりんさんも待ってるだろうし」
「うん……」
「おー」
最寄りの駅前で待ち合わせ。
そのまま改札を抜けて電車に乗って、待ちに待った秋葉原に到着♪
「オタクダンサーの人達、今日も居るな!」
「うん……やっぱり……格好良い……」
「ぐるぐる回ってるねー」
ん? なんだろう、視線を感じるような?
「どうしたんだ?」
「ん……なんか……見られてる……ような……」
「あーしも思ってたー。 なーんか見られてるきーするんだよねー」
「配信で顔出ししてるし、ここは聖地秋葉原だろ? クッキーくんを知ってる奴が見てるんじゃないか?」
「かな……?」
「かもねー、ゆーめーじんみたいじゃーんwww」
「あんま気にするな、疲れちまうぞ?」
「うん……そうだね……」
たまにチラッと見て何か話してる人が居るし、たぶんそうなのかな。
顔を出して配信してる以上しょうがないし、覚悟して始めたんだから気にするだけ無駄か。
「あ……みかりんさん……」
「お、ホントだ。 いつの間にか店の前に着いてたんだな」
「おーい、おまたー」
「おはようございます、お待ちしておりました」
「おはよう……」
「申し訳ありません、こちらの方が家から近いものでして」
「無駄に往復するのも交通費かかってアレだし、大丈夫大丈夫!」
「うん……大丈夫……」
「ありがとうございます」
一頻り挨拶を済ませて、毎度おなじみのめいどり〇みんに入店。
いつも通りのお出迎えを受けたんだけど……。
「みかりんさん……二人……?」
「ビックリしたー、なんでもう一人居るんだ?」
「はえー!」
「以前お話した分体でございます。 検証を重ねたところ、今のところ秩父までは離れてても大丈夫です。 また、三日経っても消滅せず元に戻すと記憶が統合される事も分かっています」
「それで働く自分と分かれて活動してるってわけか!」
「いえ、本日は掃除洗濯係と買い物係が一人ずつと、仕事係五人と私本人に分かれています」
「す……すごい……」
「べんりそーでいーなー」
「めちゃくちゃ便利だな、ホントに羨ましいぜ」
「ご主人様方と私、席はこちらでございます」
「邪魔になっていましたね、失礼致しました」
入口前で話し込んでしまって、気付いたらドアを開けて覗き込んでる人が。
お客さんの邪魔になることをしてしまって申し訳ない……。
「お前が……」
「……え……?」
「お前がのなめかああああ!」
「うわっ!」
「「きゃっ!」」
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後から来た客がドアを足蹴にして思い切り開く。
勢いで猫子と海香里にドアが当たりそうになるが、良奴と分体海香里が咄嗟に庇った。
「女を盾にして避けてんじゃねぇよ! 軟弱者の卑怯者が!」
「なっ……!」
「漸く見つけたと思ったら、女を侍らせてダラしない顔でニヤケやがって! どれだけの女を不幸にすれば気が済むんだ女の敵が!」
「お前なんなんだよ!」
「うるせえ! こいつは俺様を狙って邪魔してきやがる声真似師を名乗る詐欺師なんだよ! 知らねえのか馬鹿者が!」
「はあー? あーしらを危ない目にあわしてるあんたのがバカでしょーが!」
「はっ! 洗脳されてる可哀想な女か! 安心しろ、この俺様が整形ブ男の呪縛から救ってやるから感謝しやがれ!」
「意味わかんねーし! せんのーなんかされてねーっつーの!」
「洗脳されてる奴はみんなそう言うんだよ阿呆女が! それとも、ま*こだけじゃなく頭まで緩くされちまった真性の馬鹿売女か! 救えねえな!」
「お前……!」
「このクズ女男をぶっ殺したら、俺様がお前を使ってやるから安心しろ! はっはっは!」
「さいってー……」
「人間のクズですね……」
「分体さん、警察呼んで。 防犯カメラもあるよな? (コソッ)」
「わかりました、店長にも伝えておきます(コソッ)」
声高らかに大笑いをする獣人の男。
客席の方も当然ザワついており、中には男を知る者も居た。
来店したのはアライグマの獣人『まねマネ真似コピー』である。
コラボ告知から異常な程の集中力で徹底的に正優を調べ始めた。
その結果、正優と特徴が一致する人物の目撃情報を掲示板から発見。
それが秋葉原のメイド喫茶であることが分かり、確証を得るためにたまたま来店した。
この鉢合わせは、不幸な偶然であった事は間違いない。
「おいこらのなめ! 俺様と全ての女の敵! 今からぶち殺してやるからありがたく思いやがれ!」
「ぶさけんな! んなことさせるかよ!」
「うるせえ! 雑魚の洗脳員が邪魔すんじゃねえ! <水撃>!」
「あぶねっ!」
「はっはっは! 誰も俺様には勝てねえんだよ! <水撃>! <水撃>!」
「やめろ……!」
「弱者の演技なんかバレバレなんだよ大根役者が! 人類のゴミは綺麗さっぱり消し去ってやる! <水渦>!」
「「ご主人様!」」
咄嗟に駆け出した二人の海香里は正優を突き飛ばし、代わりに渦巻く水流に巻き込まれる。
良奴は猫子を庇って被弾し、少なくないダメージを受けてしまった。
「ひゃひゃひゃひゃ! 傷つけ! 苦しめ! 俺様を怒らせた事を後悔しながら死にやがれ!」
「お前は……」
「雑魚が俺様の覇道の邪魔をするからこんな目に遭ってるんだよ!」
「許さない……」
「分相応に世界の隅っこで静かに暮らしていればよかったものを!」
「僕の友達を……」
「生意気にも俺様の前に現れたのが運の尽きってやつだ!」
「傷付けやがって……」
「穴という穴から汚物を垂れ流しながら無様に死に晒せ! 真獣化!」
「周りの迷惑を考えず! 自分勝手な妄想で他者を傷付け! 罪の意識も持たず蛮行を繰り返すその様は許されるものではない!」
「はあ!? なに俺様に舐めた口聞いていやがるんだ! 真の力を解放した俺様に勝てるとでも思っていやがるのか! ああん!」
体に力を込めたと思った途端、全身の筋肉が膨れ上がり一回り巨大になった。
明らかにドーピングをしたような、目が完全に逝ってしまっているようにさえ見える。
しかし、正優にはそんな事は関係が無かった。
「反省の色を見せる気は無しと判断する……悔いるがよい!」
仄かに体が発光し始め、スーッとゆっくり浮いていく。
天井付近まで到達すると光が強さを増した。
「言葉の刃の痛みを知れ! <神罰>執行!」
直後、真似コピーの足元に緑に発光する魔法陣が現れる。
近くに居る者を優しく弾き飛ばすと、猛烈な勢いで風の渦が生み出された。
「な、なんだ! これは!」
「これが、神罰……」
「「ご主人様の力……」」
「す、すごーい……」
渦は球状に変化していき、内側の激しさが倍々に増していく。
そして、罪犯し者に神罰が下された。
「ぎゃあああああ! いだい! いだいいいい! ぎゃあああああああああああああああ!」
風の壁が皮膚を削り、風の刃が肉を裂く。
罰とは死ではない。
償いとは生きることである。
静かに風が止んだ時、そこにあるのは辛うじて息をしている罪人の成れの果て。
「悔い改めなさい……真の贖罪を成すまでは……寿命を迎えるまで死ぬ事は許されない……執行完了……」
ゆっくりと降りてきた正優は、言い終えると瞼を閉じて、そのまま意識を手放した。
状況に見覚えがあった良奴が誰よりも早く動き出して、傾く体を抱きとめる。
一瞬遅れた猫子と海香里も両隣から支え、分体が罪人を縛り上げるのだった。
店内は終始沈黙していたが、一人の男が鳴らした拍手を切っ掛けに静寂が破られる。
沢山の拍手と歓声に包まれながら、正優は静かに眠りに落ちた。
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