第17話:ギャル猫が来る

 第17話:ギャル猫が来る


 カラオケに行ってからしばらくはいつも通りな毎日。

 学校に行って、ノートくんと喋って、録音をして、家族と過ごして。

 幸せな日々が心を満たしていく。


 クラスメイトと喋る事も少しずつ増えたと思う。

 劇的になんてことはないけど、ゆっくりと少しずつ仲良くなれてるのかな。

 そんな日常が続く内に、気が付けば七月に入って十日程経っていたりする。


「もうすぐ夏休みになるけど、クッキーくんは何か予定あるのか?」

「ん……家族で田舎に……でも長くないし……八月の終わりくらい……」

「ふーん、せっかくだしどっか遊び行ったりしたいよな」

「うん……プール……とか……?」

「なになにー、プール行くのー?」


 ノートくんとのんびり昼食。

 何気ない話をしながら、まったり過ごす時間。

 たまにネコちゃんとミカちゃんが混ざるけど、それも楽しい時間の一つ。


「夏休みどっか行こうぜってさ、楽しまなきゃ損だし?」

「あーね、夏祭りとか楽し気じゃない? 花火も見れるしー」

「お祭り……花火……浴衣……いいな……」

「じゃあ祭りは決まりな、メンツ集めて行こうぜ」

「あーしも絶対行くしー」

「うん……ネコちゃんと……行きたい……」

「ととととーぜんだし? あーしといて楽しくないなんてあああありえないしー?」


 ゆったり、のんびり。

 騒がしくも笑顔が溢れる時間が過ぎていく。

 休み時間もっと長ければいいのにな。


「そだ、クッキーくん、今日家行く時お土産あるから。 母ちゃんが持ってけってさ」

「わかった……」

「家遊びに行く仲だったのー? ……いいなー」

「ネコちゃんも……来る……? 何もないけど……」

「いや何も無いってこたないだろ……あの部屋でさ……」

「行く! 絶対行く!」

「じゃあ……放課後に……教室で……」

「わかった! やったー!」

「ははは……よかったな」



 ----


 家に行ける!

 マジか!

 両親に挨拶とか?

 まさか部屋に二人きりとか!

 うあーきんちょーしてきた!


 LIME 見守りグループ


 ネコ:どうしよ! 正ちゃんの家行くことなった!

 優子:ガタッ!

 ソラ:ガタキリバッ!

 まりあ:ガタタッ!

 桐斗:ガタドタドンガラガッシャーン!

 ミカ:オタと腐女が最高すぎるwww

 純奈:ノリが高度すぎて追いつけないわね

 ネコ:どうしよ、お母様とお父様に挨拶必要だよね? 手土産は? 婚姻届も? わかんない(飛汗)

 ミカ:いや落ち着けしwww

 ソラ:結婚?! ってなるでござるよwww

 俊治:気が早すぎですよ、段階踏みましょうね? まずは手を繋ぐところから

 ネコ:そんなんとっくにしたわ!

 俊治:不純です!

 純奈:あなたがそんな小学生みたいなこと言うとは思わなかったわ

 睦美:とりあえず、手土産とかいらないと思う。 学生だし、仲良く友達やってますって言葉にしてあげれば喜ぶんじゃないかしら?

 ネコ:腐ママ! ありがとう(ハート)

 睦美:そこはかとなく嫌な呼び方ね(汗)

 白枝:腐ママおやつ欲しいでござる

 ミカ:腐ママ買い物行こ~

 歩夢:腐ママ~

 睦美:あだ名なんか小学生以来だから、嬉しいけど恥ずかしいわね


 正優をきっかけに仲良くなり始めているクラスメイト達。

 ギャル男グループはまだ傍観しており、スポ根グループはソワソワ。

 クラス全体がまとまるまであと少し……。



 ----


 放課後。

 ノートくんと帰り支度をしてるとネコちゃんとミカちゃんが来た。


「あたしは弟達にご飯作らなきゃだから~、先帰んね~」

「そっか…………校門まで……一緒に……」

「うっ!……ふう……もちっしょ、帰ろ~」

「ノートくん……ネコちゃん……行こ……?」

「おう。 ネコちゃんさん、先ウチ寄ってからだから、ごめんな」

「よきよきー。 正ちゃん家行けるならなんでもー」


 他にも何人か混じって下駄箱に。

 ノートくんとネコちゃん以外とは校門で別れたんだけど、ネコちゃんが応援されてる?

 何かあったのかな? 僕も応援した方がいい?

 あわあわ迷ってたら、気付けば三人になってた……。


「商店街の中だからちょっと歩くぞ」

「はいはーい」

「う、うん……」

「悪いな。 んじゃ行くか」


 …………

 ……


 オープン前の焼肉屋さん。

 おばさん--今はそう呼んでる--と弟くん達がパタパタ動き回ってる。

 ノートくんが発泡スチロールの箱を持って戻ると、今度は僕のお家に向かう。


「お待たせ」

「良奴くん家って焼肉屋だったんだねー、今度こよっかなー」

「マジか、なら半額券やるよ。 家族とでも友達とでも来てくれよな!」

「太っ腹すぎ! マジ最高なんですけど!」

「よかったね……美味しいから……オススメ……」

「俄然期待値上がったわー、ひゃくぱー来るわ!」

「ははは、よろしく!」


 …………

 ……


 程なくしてお家に到着。

 玄関を開けると、珍しくこの時間にお母さんが帰ってるみたい。

 二人を連れてリビングに入る。


「正ちゃんお帰り♪ ノートくんもいらっしゃい♪」

「おかえりー、良奴さんいらっしゃい」

「ただいま……」

「お邪魔します! あの、母ちゃんから渡してくれって。 試作品のデザートなんで、みんなで食べて感想貰ってこいって言ってました!」

「あらあら、お母様からLIMEで聞いてたやつね、ありがとう♪」

「せ、正ちゃんあの……」


 ネコちゃんがちょいちょいと鞄を引っ張る。

 忘れてたんじゃないよ? タイミング見てたんだよ?

 本当だよ? ……ごめんね?


「お母さん……優香……友達……」

「あら新しいお友達?」

「あのあーし、じゃなくてアタシ同じクラスの新宿猫子です! はじめまして!」

「はじめまして、正優の母です♪」

「妹の優香です……ギャル……?」

「よ、よろしくお願いいたします!」

「リラックスしてね、いつも通りの喋り方があるなら変えなくて大丈夫よ♪」

「いつものが……いいな……」

「うっ……あーしバカだから、失敗しちゃわないかなーって……」

「気にしちゃダメよ? きてぃちゃんはきてぃちゃんなんだから、私も優香も否定なんかしないわ? もちろん今は居ないけどお父さんもね♪」


 そう言うとネコちゃんをそっと抱きしめる。

 しっぽがピーンと立ったように見えたけど、生えてないから気のせいだよね?

 隣ではノートくんが優しくニッと笑ってた。


「部屋で……遊ぶから……」

「あらそう? なら後で飲み物とクッキー持って行くわね」

「うん……僕はコーラで……」

「俺は麦茶でお願いします」

「え、あーしは……えっと……」

「何飲みたいか言ってくれたら、出せるものなら出すわよ♪」

「言わないと特製野菜ジュースになるから、ちゃんと言ったがいいぞ?」

「マジで! じ、じゃあタピオカミルクティ! あ、じゃなくて……」

「はいはーい、タピオカミルクティね♪」

「じゃあ……行こうか……僕の部屋……」

「おう、楽しみだなー♪」

「え? タピオカ……出てくるの? マジで?」


 なんかネコちゃんが混乱してるけど、お母さんが言うなら大丈夫。

 出せないならちゃんと無理って言うからね。

 ネコちゃんこっちだよ、おいでおいでー。



 ----


 お兄ちゃんがギャルを連れて帰ってきた。

 どう見てもギャル、制服をダルっと着たギャル、髪型もネイルもギャル。

 一瞬本当に友達か疑ったけど良奴くんも居るし、本当にそうなのかも?


「さてと準備しますかねー♪」

「タピオカなんてあるの?」

「近くに飲めるお店ないじゃない? 家で作れるって聞いたから試しに買ったのがあるのよ」

「そうなんだ! わたしも飲んでみたい!」

「せっかくだし二人で飲もっか♪」

「やったー! 初タピだー!」


 人生初のタピオカ!

 ギャルさんに感謝だね!

 明日学校で自慢しよーっと♪

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る