第14話:カラオケ

 第14話:カラオケ


 正っちとカラオケの日。

 ちょっち早く来すぎたかな~。

 とか思いつつ校門が近くなる。


「ミカじゃーん。 おはよー」

「ネコっちはや~!」

「楽しみすぎて早く来ちゃった的な? そんな感じー」

「わかりみ~」


 なんかいつもよりオシャレしてるのウケる~。

 まああたしもちょっち気合い入れたんですけど~。


「てかネコっち~、オシャレしちゃってデートっすか~?」

「正ちゃんにダラケてんの見せられるかーっての」

「わかりみ~」


 二人してスウェットの時あるしね~。

 見られたら死ねるわ~。


「正っち優しいから~何も言わないかもだけどね~」

「それでもっしょー。 嫌われたくないしー?」

「なんすかなんすか~、ラブっすか~」

「…………」

「え、マジで?」

「まあ、好きぴ……的な……」

「うわ~ガチ恋じゃ~ん……」


 ガチで顔真っ赤じゃん、乙女かよ~。

 花飛んでるのが見えるわ~。


「ガードガチガチのネコっちがね~」

「正ちゃん優しいし? 浮気しなそうだし? こんなあーし嫌わないし?」

「あ~ね、そうね~」

「正ちゃんだったら……赤ちゃん欲しいし……」

「妄想でパコるなし~」

「…………」

「え、マジで?」

「妄想くらい許せし!」

「処女ネコがいいよる~www」

「殴る!」

「……混ざったほうがいいでござるかね?」

「……私にふらないでよ」

「もしかして、今日は勝負おぱんつ~?」

「…………」

「ぎゃはははははwww」

「殺す!」

「……ギャルは怖いでござる」

「……小山内くんなら妄想はするでしょ、普通」

「……え?」

「……小さいパターンと大きいパターンでするでしょ」

「……しますね、普通」

「……女子は怖いでござる」

「……禿同」



 ----


 校門に着いたら、ミカちゃんがネコちゃんに追いかけ回されてる。

 仲が良くていいな。


「お待たせ……しました……」

「やや、小山内殿。 おはようでござる」

「小山内くん、おはよう」

「おはよう……ございます……」

「落ち着くまで待っててほしいでござる」

「うん……大丈夫だよ……。 仲良しで……いいね……」

「あれ? 私たちと見えてる景色が違うのかしら?」


 しばらく走り回ってたけど、ミカちゃんが僕に気付いておいかけっこが終わった。

 すごく息が上がってるけど大丈夫かな。


「せ、正ちゃん! ……やっときたしー? ちょー待った的なー?」

「まだ十分前でござるよ」

「ふしゃー!」

「ひっ!」


 みんな仲良しでいいな。

 僕ももっともっと仲良くなりたいな。


「ふしゃー……」

「ふにゃっ! ま、真似すんなし……」

「照れ隠しでござるよ、照れ隠し」

「そうなんだ……」


 秋葉原くんが耳打ちで教えてくれた。

 ギャルさんの照れ隠しは初めて見たから勉強になった。


「は~疲れた~。 んじゃオケりに行こっか~」

「うん……! 楽しみだな……♪」

「「「「ほわっ!」」」」


 オタクさんの御門空みかど そらくんと秋葉原白枝あきはばら しろえくん。

 腐女子さんの市原優子いちはら ゆうこさんと竹井睦美たけい むつみさん。

 四人が胸を押さえながら空を見上げてしまった。


「その反応わかりみ~。 けど時間もったいないからカムバック~」

「心臓止まったかと思ったでござる……」

「尊死するかと思った……」

「おかえり~、んでしゅっぱ~つ」


 そっぽを向いたままのネコちゃんが移動始めたのに気付いてない。

 連れてかなきゃ。


「ネコちゃん……行こ……?」

「あ、手…………うん……」

「楽しみだね……♪」

「そう……だね……」


 あれ、俯いちゃった。

 でも遅れちゃうから、そのまま手を引いて歩き始めた。

 ミカちゃんが振り返ったけど、なんで笑ってるんだろ?


 …………

 ……


 駅前のカラオケに到着。

 日曜日だからかな、人がいっぱい居る。

 エンジョイサウンドにアニソン多いらしいから、そのお部屋だといいな。


 思ったよりすんなり入れて、みんなでガヤガヤ移動する。

 カラオケ初めてだからキョロキョロしてると、ネコちゃんの手がキュッと強くなった。

 どうしたんだろうと思ってネコちゃんを見たけど、そっぽを向かれちゃった。


「ここだね~、エンジョイサウンドだってさ~」

「やった……」

「正ちゃん、エンジョイサウンドが良かったの?」

「うん……アニソンいっぱい……入ってるって……聞いたら……」

「そっか……覚えとこ」


 最後が聞こえなかったけど、嬉しそうだから良いのかな?

 みんながドリンクバーに行くから付いて行く。

 さすがに手は離したほうがいいよね。


「どれにする……?」

「あ……」

「僕はコーラ……かな……」

「むう……あ、あーしはアンバサとオレンジのミックスにしよっかなー」

「そっか……作るね……」

「……ありがと」

「百合ってこんなに尊かったのね……」

「これは捗る……」

「一応ノーマルカプですぞ……」


 …………

 ……


 部屋に入るとみんな好きな席に座っていく。

 僕の隣にはネコちゃんと空くん。

 向かいに居るミカちゃんが早速曲を探しはじめる。


「別に順番とかないし~、今日はアニソン縛りにするから~」

「おお……!」

「まずはメジャーどころですかな、アキバ殿」

「ワ○ピ辺りが無難でござるな」

「ネコちゃん……何歌う……?」

「有名な歌手もアニソンあったりするしー、そのへんかなー」

「いいね……僕は……どうしようかな……」


 トップバッターのミカちゃんから始まって、メジャーなアニソンが次々流れる。

 僕だけなかなか決められなくてちょっと涙目になりそう。


「有名なのじゃなくてもいいし、好きなの歌いなー?」

「好きなの……うん……」

「有名なの縛りじゃないしー」

「じゃあ……」


 確かにそうだよね、分からない人が居てもいいんだもんね。

 ネコちゃんとミカちゃんのこと考えて探してたけど考え方を切り替える。

 その上で今歌いたい曲『糠漬け流星群』を入れた。


「糠星でござるか、いいチョイスですな」

「今更だけどー、正ちゃんって歌えるのー?」

「うん……お家ではよく……」

「……大丈夫かなー」


 順番はすぐやってきた。

 マイクを貰って立ち上がる。

 座っては歌い辛いから。


「素の声じゃ……歌えないから……演じるね……」

「どゆこと~?」

「演じるでござるか?」


 ~♪


 日差しの届かない部屋の端

 君が忘れた思い出拾い上げ

 暗い記憶だけ払っていく

 残る思いは胸にしまって


 ~♪


 まるで漬物とごはんのように

 寄り添い支え合う関係

 君のその手で漬けてほしい

 降り注ぐ星のカケラたちを


 ~♪


「糠渕の声! なんで!」

「歌うっま!」

「光彦が拡散してたやつと同じじゃん……」

「やば、混乱してきた」

「正ちゃん……格好良い」

「ぶふっwww」


 楽しい。

 気持ちいい。

 お家とは違った感覚。

 ああ終わっちゃう……まだ歌ってたいな。

 最後の一音まで大事に歌ってマイクを下ろした。


「ありがとう……ございます……」

「正ちゃん良かったよー」

「めちゃうまじゃ~ん」

「これでござる、のなめ殿の」

「やっぱそうだよね」

「まんま同じじゃん」

「どういうことでござるか? え?」


 ネコちゃんとミカちゃん以外がスマホを見ながら話し合いを始めた。

 どうしたのかな……。

 上手く歌えてなかったかな……。


「スマホじゃなくて正ちゃん見ろしー」

「どったの~?」

「小山内殿、ちょっといいでござるか?」

「え……うん……」

「今の歌、この動画と同じでござったが……」

「あ……それ僕……です……」

「「「「ええええええええええええええええええええええええええええ!!!」」」」


 マイクが音を拾って耳がキーンってなる。

 頭がグワングワンに……うう……。


「バッカ! 耳が!」

「ちょっ、なになに~?」

「小山内殿は声真似系ノッカーでござったのか……」

「謎の天才ノッカー……」

「天才では……ないかな……」

「なに、正ちゃんノッカーなのー?」

「え~、いが~い。 見るから垢教えて~」


 誰かフォロワーだったのかな?

 リアルではべつに隠してないからいいんだけど。


「有名声優の光彦と若王子が拡散し始めて、アニメ関係者とかミュージシャンまでフォローしてる謎の天才ノッカーって言われてるのよ!」

「まさか同級生だったとは、思いもしなかったでござる……」

「そんな有名なのー?」

「一部界隈では……」

「へ~」


 次の曲普通に始まってるけどどうしよう。

 僕が入れたのじゃないし、座っていいよね?

 ……座ります。

 なんか僕の動画で盛り上がってるけど、カラオケはいいのかな。


「あの……カラオケ……」

「それどころじゃないでござる!」

「一大事だよ!」

「うう……楽しみに……してたのに……」

「「うっ……」」

「「あっ……」」

「なんかすごいんだろ~けど、後にしよ~」

「正ちゃん……よしよし……」

「「「「ごめんなさい……」」」」


 ちょっと気まずい空気になったけど、御門くんと秋葉原くんが頑張って盛り上げ直した。

 僕もたくさん歌って、すごい楽しかった。

 結果的に最高に盛り上がって良かった。


「正ちゃん、また一緒に遊ぼうね? 今度は二人で……」

「うん……いいよ……♪」

「やった♪ 約束したかんね♪ そだ、LIME交換しよ?」

「うん……! うん……!」


 ネコちゃんとお喋りしている向こうで、スマホを突き合わせて何かやってる。

 連絡先の交換かな?

 みんなもっと仲良しになるのは良いことだね。



 ☆☆☆☆


 こぼれ設定集

 ※年齢は6月1日時点


 小山内優香 10月2日 11歳 143cm Acup

 綺麗系 キツめツリ目 背中中央まで長髪 八重歯


 小山内ちさ子 9月10日 34歳 150cm Acup

 和やか可愛い系 穏やかタレ目 肩くらい短髪


 小山内優 3月4日 47歳 186cm

 無表情厳つい系 キツめツリ目 短髪オールバック 子供甘やかす時デレ顔


 清川乙女 3月3日 15歳 162cm Ecup

 清楚綺麗系 ややタレ目 腰まで長髪


 権田原勝彦 1月4日 51歳 181cm

 好々爺顔 糸タレ目 スキンヘッド マッチョ

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