第9話:ギャル襲来
第9話:ギャル襲来
恥ずかしいことをしてしまった……。
泣きはしなかったけど、衝動的にノートくんに抱きついてしまうなんて。
でも、すごい安心感があって嬉しかった。
「小山内くん、もう大丈夫ですか?」
「あ……はい……ノートくん……ありがとう……」
「気にすんな、俺たち友達だろ?」
「うん……! うん……!」
「ふふっ、さあ教室に入りましょう。 みんな待ってますよ」
「隣に立っててやるから、安心しろ」
「ありがとう……行きます……」
頼もしいな、嬉しいな。
ノートくん、やっぱり良い人だったな。
ふとノートくんに目を向けると、良い笑顔で僕を見てくれた。
よし……最初の一歩だ。
先生が先に入って、その少し後ろをノートくんと一緒に入っていく。
教室の中のザワめきが一瞬にして消え去った。
息を呑む音や熱い視線が飛んでくる。
「……お待たせしました。 みなさんには少しだけお話してましたが、療養が必要なため休学していた小山内くんが今日から通学開始することになりました。 とても大人しい性格ですので、グイグイ行くのだけは避けてあげてくださいね」
「お、小山内です……よろしく……お願いします……」
頭を下げると、一気に教室内がワッと盛り上がる。
「うわっ! かわいい!」
「めっちゃ美少女じゃん! やったぜ!」
「きゃー♪ 抱き締めたい♪」
「え、制服俺たちとおなじのじゃね?」
「マジじゃん、男装美少女? アリなんじゃね?」
「ま、負けた……ぐぎぎっ……」
「同い年なら合法、即ち合法ロリ! イエスタッチ!」
「同士落ち着くでござる! ノータッチ、ノータッチでござる!」
「オタどもきんも~www でもタッチしたいのはわかる~www」
「メイクとかどうしてんだろねー? ナチュラル? ノーメイクってことはないっしょー」
「前世より交わされた契約が今果たされる時……我が愛しのロリィフィア姫……」
好奇の目を向けられて俯いてしまう。
怖い……どうしよう……。
思わずノートくんの手を探して握る。
「っ! ……お前ら!!」
「「「「「「っ!!!」」」」」」
「先生も言ってただろ! 大人しい奴なんだ、ちょっとで良いから落ち着いてくれ!」
「お、おう。 すまん」
「あう……ごめんね、小山内ちゃん」
「すまぬ……」
「それからな、ちゃんじゃなくて君だ! 正真正銘男だから、女扱いするなよ!」
「「「「「「…………」」」」」」
「そうですよ、正優くんが男の子であることは、先生と権田原校長が保証します」
「「「「「「ええええええええええええええええええええええええ!!!」」」」」」
教室全体が揺れた気がした。
さっきまでのとは違う怖さが襲ってくる。
ノートくん……背中にお邪魔します……。
ごめんなさい……。
「とにかくそういうことだから。 話しかけるな、じゃなくてグイグイ来るな、な?」
「ってか、なんで田ノ上はそんな仲良さ気なんだよ」
「覚えてないか? 先生からノート取ってくれる人いませんか? って言われたの」
「ああ、あったあった」
「二ヶ月ぐらいずっとノートのやりとりやってたからだよ」
「うらやま~。 知ってたらあたし立候補したのに~」
「下心ありすぎっしょーwww」
「あ、ばれた~?」
「はいはい、みんな仲良くしてあげてね? 席は教卓の前ですよ」
「わかりました……」
「先生、俺の席隣に変えてもらっていいですか? 色々フォローしやすいと思うんで」
「そうですね、分かりました。 同じ班の人たちも助けてあげてくださいね」
「「「はい!」」」
「あ、ありがとう……」
まだ始まったばかりの高校生活。
今は不安しかないけど、なんだか楽しくなりそうな予感。
お母さんの言った通り……なのかな。
中学までとはちがう、そう思わせてくれる雰囲気を肌でかんじた。
…………
……
今日は五限まで。
ノートくんのお陰で授業はちゃんとついて行けた。
とは言え五日分の遅れはあるから、机をくっつけてフォローしてもらった。
今は二限目の後の十分休憩中。
「おっは~小山内っち~」
「おはろー」
「お、おはよう……ございます……」
「ちょびっちお話しよ~?」
「お、さっそくか。 よかったな」
「あはは、ちゃんと男子と同じにするけど~、最初は色々聞いてみたいじゃ~ん?」
「それなー、嫌がることはしないから安心してーって感じで」
「ありがとう……ございます……」
クラスのギャルグループの二人が話しかけてくれた。
「あたしは
「あーし
「小山内……正優です……ミカちゃん……ネコちゃん……」
「「うっ!」」
「……?」
「威力ヤバ気……」
「キュン死するかと思った……」
「ふう…………正優っちは~、好きな音楽とかあるの~?」
「好きな……。 アニメの曲……かな……」
「アニソンってやつー? いーじゃーん、あーしも盛り上がるやつなら好きで歌うよー」
「カラオケでな~。 あたしらに慣れたらさ~一緒に行こうよ~」
「そうそう、慣れたらでいいしー。 こうやって喋って仲良くなってからー」
「うん……! うん……! やった……お出かけの約束……嬉しい……」
「「ふぐっ!」」
「……?」
「ぷくくく……」
隣でノートくんが静かに笑ってる。
頭に手を置いて、よかったなって言ってくれた。
小さく頷くとチャイムが鳴った。
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三限目終わり~。
はい、みんなしゅ~ご~。
「集まってくれてありがと~」
「ミカどしたん?」
「ななななんで拙者まで……」
「わ、わたしもなんで……」
「おー! なんだこの集まり!」
「次の授業の準備したいんだけど、話ってなに?」
クラスにできてるグループの、それらしい人ら集めてみました的な?
大事な話なんでごせ~ちょ~。
「正優っちのことなんだけど~」
「「「「「っ!」」」」」
「あたしが言うことじゃないと思うんだけど~、さっき話した感じの意識きょ~ゆ~ってゆ~の? そういうのしといたがいっかな~的な?」
「どうだったん? なんか壊れそうで触れられないってか、そっとしといたんだけど」
「学級委員として不甲斐ないけど、私も同じだったわね」
「あたしとネコっちで喋って~、しんぞ~二回も止まるかと思ったっていうか~」
「ぶふっwww どういうことでござるかwww」
「まぢヤバいんだって! 可愛すぎて死ねるんだって! オタっちたちが言ってる萌えっての知っちゃったっていうか~!」
「萌えか! 俺は分からん!」
「ロリショタ美少女系男子という新ジャンル……わかる!」
「グイグイいっちゃダメなのもわけわかったし~、同盟っていうか? クラスみ~んなで見守ろ~的なのを伝えたくて~」
「あなたが言うほどなのね」
「とりま、LIMEで見守り隊グルは作るつもり~。 あたしらのメンツは全員入るの決まってるから~、入隊きぼ~なら声かけてって感じ? カラオケ行く約束もしちゃったし~」
「おう、とりまわかった」
「そ、そうでござるね……」
「話は回しておくわ……」
「よくわからんが、わかった!」
「この後校内案内するし、その時に考えさせてもらうわ」
「んじゃよろぴく~」
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こうして裏で密かに動き始めたグループたち。
これが切っ掛けでクラスがまとまっていくのだが、それはまだもう少し先の話。
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