第3話

─それから2ヶ月経った頃


土曜日の夕方、私が部活から帰ってくると恭平の家は空き家になっていた…。


突然の事で理解が追いつかない・・・


もうすぐあいつの誕生日だったからこっそりプレゼントも用意してた


こんなのって聞いてないよ・・・


『ただいま・・・。』


「凛、おかえりなさい。


何となくわかってるとは思うけど、恭平君のお父さんの転勤が決まってね。東京の方に引っ越すことになったの。


恭平君から言わないでって口止めされてて今日まで言えなかったの。


悪く思わないであげてね・・・。」


お母さんは申し訳なさそうに言いながら細長い箱を取り出した。


「これ恭平君から凛に渡すように預かった物なんだけど、多分誕生日プレゼントじゃないかしら?確か毎年交換してたわよね。」


受け取った箱を開けてみる。


『これ・・・。』


箱の中には前に恭平と買い物に出かけたとき、私が誕生日にはあれが欲しいな~と冗談交じりに言っていた


ー小さなターコイズブルーの石が輝くネックレスー


気付いたら私はその箱を抱きしめ子供の様に声をあげて泣いていた。


恭平と過ごした日々を思い出しながら、「好き」ただその一言を伝えられなかった自分を悔む。



─────────



どれだけ泣いただろうか・・・。


もう何が悲しくて泣いているのかもわからないほどに泣いていた気がする。


この歳になって母の前で泣いたのが少し恥ずかしいと思い始めてしまった。


涙が引いてきた頃そそくさと自分の部屋に戻っていった。


お母さんが何かを言っていたようだが、気に留める間もなく扉を閉める。


ネックレスを箱から出そうとしたところで、箱の中に小さな紙が挟まってる事に気付く。


取り出し中身を確認する


ー 凛 誕生日おめでとう。これ誕生日プレゼント。


欲しかったのってこれで合ってるよな・・・?


本当は当日に渡したかったんだけど、叶いそうにないから凛の母さんに預けておくことにしたんだ。


このネックレス絶対凛に似合うだろうな~


俺もこの目で見たかった。それだけが心残りだな(笑) 


突然のことで驚いたかも知れないけど、お前に泣かれたら置いて行けなくなっちゃうと思ったから


本当にごめん。 ー


これは恭平の本心だろう。


優しいあいつなりの配慮だったらしい。


『こんな優しさなら私は欲しくなかったな・・・。』


そう思いながら窓の外に見える月を見上げる。


『月が綺麗ですね・・・。』


そう呟いた言葉は、誰に聞かれるでもなく夜の闇に消えていった。

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