背伸び

ジンはスキルは増えなかったが、

レベルが2になっていた。少し体が軽くなったぐらいの感覚だ。

もしかして、レベルアップの恩恵はそこまで大きくないのかもしれない。

魚を毎日殺したのが良かったのだろう。


「それにしても、この小屋に人が来ない。使ってないのか?

それとも季節ごともしくは年ごとに狩場を変えているのかもしれない。」


ジンはこの小屋がかなり気に入っていた。命の恩人だ。

魔物がなぜか近寄らないし。


「10歳ぐらいまではここで粘りたい。なんなら一生ここでいいな。」


ジンは最近訓練に疲れたら、ダラダラしていた。

酒を少し飲んでほろ酔いになるのがコツだ。

3歳にして酒のおいしさを体に覚えさせてしまった。

この酒が尽きたら、どうしよう。

酒なんて甘い果物の果汁を集めてほっといたら、勝手にできるか。発酵して。


「ていうか。魔力って本当にあるのか?何も感じないぞ。

俺には才能がないのだろうか?火が使えたら。もう少しまともな飯が食えるのに。」


ジンは楽観的だった。小屋の外に出るときは毎回命がけなのだが。



今日も魚を仕留めようとしたある日、水場で頭にツノの生えたウサギを見つけた。


「ウサギなら、勝てるだろ。」


川の近くに落ちていた石を拾い、服の布で石を包み、振り回して

遠心力を使って、石を投げつける。

命中して、ウサギが痛んでいる。同様に5回石を投げつけると

ウサギは絶命した。

ウサギを解体して、生で食った。


「味の違いがわからん。どちらも生だから、血の味しかしない。」


ゴブリンみたいな生活をしている。ジンはそう思った。

レモンみたいな果物を生肉にかけても血の味しかしない。


「異世界転生ってもっとキラキラしたものじゃなかったのか?

なんか、生肉食ってるだけなんだが。」


3歳の自分の可愛い顔をムニムニするしか楽しいことがない。

魔法も今は、使えないし。

今日は、ウサギを倒してレベルが3になった。特に体に変化なし。

もしかしたら、レベルが上がると魔力量が増えて、魔法が使えるかもしれないと思った。

だって、そう考えないと虚しいし。


「明日からは、ウサギを殺して回るか。」


その日から、ジンはレベル上げと魔法の練習を頑張った。




ーーーー1年後



名前 ジン


職業 なし


レベル 9


スキル 魔力操作1 魔力感知1 火魔法1

状態異常1

気配察知1 気配隠蔽1


ジンは4歳になった。

最近ではゴブリンも投石で殺せるようになっていた。


「自分の才能が怖い。4歳でこれは世界最強じゃないか?」


レベルが上がったからか、それとも毎日訓練してたからか、火魔法が使えるようになった。

今日は、ウサギを仕留めて、焼いてレモンのような果物で味付けする。

最高のご飯だ。


「でも、飽きたな。他のご飯を食ってみたい。栄養も偏っているだろうし。」


ジンは村を探し当て、真夜中の村から麦を各家庭から少しずつ盗んでいった。

加工の仕方がわからないから、粉のまま食ったけど。

パンが食いたい。スープも食いたい。

近くに町がないかな。そこで俺の獲物と交換したいし。


「そのためには独り立ちできるように魔狼ぐらいは倒せるように無なっておかないと。」


魔狼はかなりめんどくさい。

機動力の高さと危険察知能力の高さだ。

せめて、弓矢が使えたら勝てるかもしれんが。

弓矢は俺にはデカすぎる。弦を引く力も足りない。


「よし、明日から新しい食い物の開拓をしよう。」


そこら辺生えてるキノコでスープを作った。

あらゆるキノコでスープを作った。

中には、毒キノコも麻痺するキノコも入っていたが。

一舐めしただけで死ぬかと思った。

そんな中、無茶苦茶コクのあるスープができた。

それから、野生の野菜と思われるものを食って、そこら辺に種を植えといた。


「これで、パンか米があれば最高の生活なんだが。」


小麦の粉に水を少し混ぜて、捏ねてから、焚き火で燃やす。

なんか、それっぽいものができた。クソ硬かったけど。


「街に行って、人と喋りたいな。暇でしょうがない。星はきれいだけどな。」


ジンにとってこの森は庭みたいになってきたので、かなり余裕が出てきた。


そんなある日だった。

小屋に帰ると11歳くらいの少女がいたのだ。

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