超幸運

俺の背後から魔狼が迫っていた。

3歳の俺からしたら絶対に死ぬ。死にすぎる。

とりあえず、木の上に登った。

これで、魔狼が木を登ってきたとしても、上を取った俺が圧倒的有利。

ポケットに入れていた尖った石を、服の布を使って投石準備する。

より遠心力を最大にするために、両手で布の入った石を振り回した。


「これ、絶対威力足りないだろ。まあしょうがないか。せめて一矢報いて死のう。」


魔狼は当たり前のように跳躍して、木を登ってきた。

しかし、跳躍中は方向転換ができずに直線上の動きになる。

ジンの目の高さと魔狼の目の高さが重なった時。

ジンの投石が魔狼を襲う。


「ガッっ!!」


狙ったのは、口。(初手の噛みつき攻撃を封じるために)

一瞬魔狼は怯むが、威力は足りずにジンに襲い掛かる。

体制を崩している魔狼の目をめがけて、錆びたナイフを突き立てる。

魔狼の右目に錆びたナイフが生える。


それでも止まらない。魔狼はジンをこの状態でも勝てると思われているのだろう。


「正解だよ。お前の食い残したゴブリンで生き残ったんだ。それで死ぬのはしょうがないな。」


ジンはそう呟いて、死を受け入れるために目を瞑った。


そうすること3秒。いまだに死は訪れない。

どうしてだと思い、目を開けると。魔狼がアホみたいに苦しんでた。


「なんでだ?錆びたナイフに毒なんか塗ってないぞ?」


魔狼は逃げていった。目にナイフが刺さりながら。

なぜだろう。


「なるほどな。レモンみたいな果物の汁が残っていたのか。だから、傷口から

染みて激痛が走ってたのか。

唯一の武器の錆びたナイフが使えなくなったから、初めに戻っただけだな。

ポジティブにいこう」



それから、ジンはいつも通り食物と水を探した。

そうして森を彷徨っていると、小屋を見つけた。


「村の狩人の休憩場所か?運がいいな。何か武器でもあるだろう。」


この小屋を物色して、3歳の俺が持てるような解体用のナイフを武器にした。

これ以外使えそうにないし。


「それにしても不用心だ。ゴブリンが武器を奪うかもしれないのに。

魔物除けのための道具でもあるのか?」


更に、小屋を物色していると、干し肉と酒があった。

もしもの時の非常食なのだろう。


「干し肉ラッキー。一回死にかけてから、運が途轍もなく良い。」


7日分ぐらいの食料と水分の酒があった。


「状態異常のスキルがあるし、酒を飲んでも大丈夫なのか?いざとなったら飲もう。」


ジンはこの場所を拠点にしようと思った。

誰か来たら、精一杯命乞いをしよう。森よりは安全だろ。

ここにはベッドもあるし、最高だ。


「とにかく、火魔法だ。それさえできれば、焼肉が食える。

もしくは、投石の強化だな。」


ジンは5日間、修行の日々を送った。

食糧がつきそうなので、森に出る。


「とりあえず、周辺の調査だな。俺の予想では近くに川があるはずだ。」


あった。川があった。

仕留めた獲物を解体する。そしてその解体した獲物をきれいにするために

大量の水が必要だから、あると思った川。


「なんか寄生虫とかいそうだけど、飲んでも大丈夫か?まあ、飲めなくても魚が取れたらいいか。」


川を眺めていると、魚は泳いでいた。

これをどうにかするために、俺は罠を作った。罠といっても狩猟の部屋にあった

籠を使って、周りに石を置いただけだけど。

何匹かゲットしたところで、罠を解除した。

ぴちぴち動いていたが、解体用ナイフで殺して、捌いて生で食った。

骨も含めて。


「1匹で十分だったな。3歳児には魚一匹で満足だ。寄生虫がいたらどうしよう。やっぱり火が欲しい。」


その日から、ジンは魚くって、レモンみたいな果物食って、小屋で寝る。

魔力を感じようとしたり、投石の練習をしたりもした。


そんな生活が1月はたった。








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