「姉さん、この度は大変ありがとうございました。またお会いできるのを楽しみにしております」

「進め! 進め!」

ザルトは、エデンヤードに向けて侵攻を続ける。彼は、自分の軍勢を率いて、森を抜け、平原を駆け、丘を越えた。彼は、エデンヤードの姿を見ると、目を細めた。そこには、堀と壁と門が築かれていた。そして、その上には、魔法陣や罠が張り巡らされていた。


「くっ……。この程度の防御など、無意味だ!」

ザルトは怒鳴った。彼は、自分の呪詛力で、エデンヤードの防御を破壊するつもりだった。彼は、自分の手に持っていた杖を振り上げた。


「我が軍勢よ! エデンヤードを攻め落とせ! そこには、裏切り者がいる! 彼らを滅ぼせ!」

ザルトは叫んだ。


「ウォオオオオ!」

ザルトの軍勢は、ザルトに続いてエデンヤードに突撃した。



その時、エデンヤードから二筋の光が放たれた。二つの光は絡み合い、ザルトの軍勢に向かって突き進んだ。ザルトの軍勢は驚きと恐怖で叫んだが、間に合わなかった。爆発と炎と煙が空に舞い上がり、軍勢を吹き飛ばした。


「今のは、まさか、呪魔法か?」

ザルトは呆然としながら言った。

「今のエデンヤードにアリシアはいない。こんな強力な呪魔法を放つなど、不可能なはずだ!」




「やったね! ルナちゃん! 練習の成果がでたわ!」


「え、ええ、そうですね……」

ルナは呪魔法の光が消えた後、自分の手を見つめた。自分が放った呪魔法が、あんなにも強力で破壊的だったとは信じられなかった。ルナは魔術の才能があると言われていたが、それはレナやアリシアに比べれば大したことないと思っていた。しかし、今回の戦闘で、レナとの連携で呪魔法を発動させることに成功したのだ。


セイレンとアリシアは、ルナに呪魔法のコツを教えてくれていたが、それを実践するのは難しかった。呪詛と魔術のタイミングを合わせるだけでなく、相手の精神にも触れる必要があった。ルナはレナの精神に触れることに抵抗を感じていたが、レナは優しくて楽しい人だったので、徐々に心を開いていった。そして、今回の戦闘では、レナの精神と完全に一体化した感覚を味わった。それは恐ろしいことではなく、むしろ心地よくて幸せなことだった。


「ルナちゃん、どうしたの?」

レナはルナの頬をつつきながら言った。


「あ、あの……すみません……」

ルナは恥ずかしそうに目をそらした。


「何も謝ることないわよ。私たちは素晴らしい呪魔法を放ったんだから。ザルトもビビってるし、セイレン君も喜んでるわ。私たちはエデンヤードの英雄よ!」

レナはルナを抱きしめて言った。


「は、はい……そうですね……」

ルナはレナの胸に顔を埋めて言った。



「これほどうまくいくとはな」

セイレンは、エデンヤードから放たれた光を見ていた。レナとルナは強い精神のつながりを持ち、魔術と呪詛を見事に調和させていた。その結果、ザルト軍に対して圧倒的な威力を発揮したのだ。


ザルト・ヴァイオレットは、自分の反乱軍が次々と敗れていくのを見て、憤怒と恐怖に震えた。彼はアリシアに匹敵するほどの呪詛力を持っていたが、それでもレナとルナの呪魔法には敵わなかった。彼はエデンヤードの破壊を企んでいたが、その夢は潰えてしまった。


「くそっ、このままでは…!」

ザルトは、残った部下を引き連れて、エデンヤードから逃げ出した。彼はアリシアやセイレンに復讐することを誓ったが、その声は呪魔法の轟音にかき消された。


セイレンは、ザルト軍が撤退するのを見て、安堵の息をついた。彼はエデンヤードの平和を守ることができたことに喜びを感じた。




「私たちは天才だからね!」

レナは、ルナの手を引いたまま、アリシアに話していた。彼女は満面の笑みで、自分たちの活躍を誇らしげに話し始めた。

「アリシアにも見せたかったなー、お姉ちゃんの大活躍を! ルナちゃんと一緒に呪魔法を使って、ザルト軍を一気に吹き飛ばしたのよ!」


「すごいわね、姉さん。ルナと一緒に呪魔法を使えるなんて。私とセイレンが使うのにも相当な訓練が必要だったのに」

アリシアは、レナとルナの手を優しく握り返した。彼女は、姉と友人の活躍に感謝の気持ちを込めて微笑んだ。


「うふふ、お姉ちゃん、嬉しいわ」

レナは、アリシアに抱きついて、頬を寄せた。


「これで私も名誉エデンヤード領民として、永久にこの地にいられる資格を……」


「姉さん、この度は大変ありがとうございました。またお会いできるのを楽しみにしております」


「妹がつれないこと言うの。セイレン君助けて」


「ルナ、本当にありがとう。おかげでエデンヤードは平和を守ることができた」

セイレンは、ルナの目を真っすぐ見て言った。


「いえいえ、お兄様。エデンヤードは私たちの大切な場所ですから」

ルナは笑顔で答えた。


「アリシア、とうとうセイレン君もつれない態度に」


「あはは、冗談ですよ、レナさん」

セイレンは改めてレナへ向かって言う。

「レナさん、本当にありがとうございました。あなたのおかげで、この戦争は終わりました」

セイレンは、レナに深く頭を下げた。彼は、レナの呪詛力と戦闘経験に感服していた。


「いやいや、私はただ楽しんでやっただけよ。私は戦争なんて嫌いだからね。でも、アリシアやセイレン君のためなら、どんなことでもするわ」

レナは、セイレンの頭を軽く叩いて、笑った。彼女は、妹の幸せを願っていた。


「それに、ルナちゃんと一緒に戦えて楽しかったわ。あなたの妹さんは本当に素敵な子ね」

レナは、ルナに目を向けて、優しく微笑んだ。

「ルナちゃんも私のことを気に入ってくれたみたいだし、これからも仲良くしてね」


「はい、もちろんです。レナ様は私の大切なお友達ですから」

ルナは、レナの手を握って、うれしそうに言った。


エデンヤードの館の中庭は、夕方の光に染まっていた。セイレンとアリシア、ルナとレナはいつまでも仲良く笑っていた。彼らは、エデンヤードの平和と幸せを守るために、これからも力を合わせることを誓った。

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呪魔法で宇宙からの侵略者を撃退したら、元国王と元魔王が恋に落ちた!?~エデンヤードで始まる新しい物語~ 風見 ユウマ @kazami_yuuma

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