第44話 百合さんと聖女の涙



師走


年の瀬も押し迫って参りました。


この時期は来客が多く気疲れします。


お嬢さまの笑顔を保ちながらの接客は精神的に疲労致します。


疲れたぁ なんて言っておりますとあっという間に年末でございます。



――――


日頃より清掃しておりますので、大掃除はしなくても・・・

駄目ですか


台所の清掃につきまして今年は業者の方に入って頂きました。

どの世界もプロって凄いですね。驚くほどにピカピカですよ。

見違えてしまいました。


私もお部屋の掃除 頑張りましょうか。


リビング兼図書室 埃をはたいて床を拭いて

棚に飾ってある調度品も拭き上げまして

本棚も並べ直しましょうか。


どうしても本の順番は乱れてしまいます。

どの順番で並べましょうか


今回は作者ごとに並べてみましょうか


――――


いけません いつの間にか写真集などを開いておりました。

本の整理のお約束をしてしまいました。

進まなくなるんですよね。


本の整理は終わりがありません。

このあたりで区切りと致しましょう。



次は私の『謎の部屋』・・・ 掃除したくないです。

でもやらねばっ 突入ぅ


――――


疲労困憊の中、最後に寝室です。

こちらは常に綺麗にしてありますよ。百合さんも入りますからね。

写真立てや飾り棚 今年増えた物も多くあります。


色々ございました。 


この部屋の整理をしながら心の整理もしておきましょう。


大丈夫です。想い出はすべて抱えて未来へと持って行きますからね。

捨てる物はありませんよ。


年に一度の大掃除 意外と良い物ですね。


――――


思いのほか早く片付きました。

日頃から綺麗に生活することに心がけていますからねっ

えへん


世界樹広場も綺麗にしておきましょうか

一年お世話になりましたからね。



あら あの子達・・・



――――


世界樹広場に出てみると沢山の子達

十人以上居ます。


「雪ねえさま きれいになりましたよ」


真っ先に元気な声を聞かせてくれる百合さん

手にはぞうきんを持っています。

テーブルを拭き上げてくれたのですね。


見渡せば落ち葉のひとつさえ落ちておりません。

石のテーブルの脚に付いていた苔でさえ綺麗に落とされています。


「ひーくんがみんなを集めたんだよ」


誇らしげな百合さん 照れくさそうなひーくん


ひーくんの呼びかけで世界樹広場の清掃のために集まったようです。

小学生だけでなく中学生まで居るではないですか。


私の知らないところでみなさん繋がりを広げているのですね。

先輩にも仲間として呼びかけるのですね。

小学生の呼びかけに応える優しい心を持って育っているのですね。


お姉さん 涙が出てきてしまいましたよ。

みなさん素晴らしい行いです。


「聖女見習いですからっ」


クリスマス会で『聖女の術』に感動してくれた子達

お遊びではなく『聖女』を目指してくれているようです。


聖女『セイ・タカナシ』さん あなたは尊敬を集める存在になっていますよ。

私も本物の聖女に憧れるようになって参りました。

どうしたらあなたに近づけるのでしょうか。


純粋な気持ちで清掃に協力した聖女見習いさんの方が聖女に近いようにも感じます。

なんちゃって聖女も頑張らなければいけません。


――――


世界樹広場から離れて姿が見えない庭まで戻って参りました。

楽しそうな声が聞こえてきます。


ひーくん あなたの行動力にはいつも驚かされます。

大人でも同じ事をするのは難しいのですよ。


学級委員長くんは水玉さんからの声がけだったのでしょうか。

心の中は分かりませんが水玉さんを見つめてあげてくださいね。

とても良い子ですよ。


みどりさん しおりさん 友達がまた増えましたね。


中学生のマミさん 葉月さん そしてその想い人さん

こんな優しい繋がりを見せて頂きました。ありがとうございます。


あなたたちから沢山のことを学んだ一年でした。年下でも先生です。


大掃除 良い物ですね。



――――


年越しそばを頂きまして我が家三人で家族団らん


「来年はそば打ちでも挑戦してみようか」


お父さま妙にやる気ですね。試食ならお付き合い致しますよ。



「雪は今年も男の子連れてこなかったわね」


お母さま その件に関しましてはじゅうななさいということでお許しくださいませ。


「百合ちゃんのお婿さんみたいな子連れてきなさいよ」


ひーくんは我が家でも百合さんのお婿さんとして確定しているようです。

お母さま情報ネットの中ではどのような扱いになっているのでしょうか。


きっと そのうち うん 何とかなりますよ。


「相変わらず女の子とは仲良いからね 姫子さんお嫁さんにするの」


最終手段にとって置いてください。


「百合ちゃんも懐いてくれているし・・・ 聖女さまだって」


おふっ お母さまそれは忘れてくださいませ。



「姫子さんならお嫁さんにしても良いぞ」


お父さま・・・ 殿方は全面的に反対するのに・・・


何かを諦めている家族に除夜の鐘が鳴ります。


――――



近所の神社ではかがり火が焚かれます。


年明けをここで迎えようと姫子さんと一緒に参りました。

私の『お嫁さん』候補ですからね。

父と母は仲良くお留守番です。


世界樹広場清掃隊も集まっています。

清掃で絆が深まったようですね。


お汁粉や甘酒の振る舞いをいただきながらその瞬間を待ちます。


――――



あけましておめでとうございます。


本年もじゅうななさいをよろしくお願い致します。

(※今年もじゅうななさいです)



拝殿にて二礼二拍手一礼

神様 手のかかる私ですが本年もよろしくお願い致します。



百合さんも水玉さんもお参りできましたね。


水玉さんは何をお願いしましたか


「えっと・・・」


ちらちらと学級委員長くんを見ながらモジモジする水玉さん

それ以上言わなくて良いですよ。

糖分過多で倒れそうでございます。


百合さんは・・・



「神様にも良い事ありますようにって」


・・・百合さん そういう所ですよ。

お姉さん 視界が滲んで参りました。


姫子さんも百合さんの頭撫でていますね。

私の妹 良い子でしょ 自慢の妹ですよ。


――――


聖女見習いさんの希望で世界樹広場へ移動します。


灯りはありますが人の居ない静かな場所


「おれいを言いに来ました」


「世界樹さん まもってくれてありがとうございます」


「ことしもよろしくおねがいします」



私よりも聖女ですよね。

嬉しいという言の葉では表せないような感情


こんなに優しい世界です。


最近涙もろくなったようです。

今日は泣いてばかりです。

涙が止まりませんよ。


どうかこの優しい子達に世界樹のご加護がありますように

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