第42話 百合さんと聖女見習い


街角でも行き交う人が空を見上げて私の名を呟く季節となりました。


じゅうななさいの事情により年中タイツ姿の私ですがようやく季節が追いついて参りまし

た。

これで周りから浮きません。


寒がりな私はすでに防寒の用意は万全なのです。

暖かな肌着も懐炉もいっぱい用意致しました。


あとは隣で心を温めて頂ける殿方ですねっ


どこかに落ちていないでしょうか



――――



「雪ねえさま クリスマスの日は忙しいですか」


百合さん 悪意はないとわかっていますが、お姉さんの何かが削られていますよ。


単なる予定確認のはずですが、この時期だけはちょっとだけ意味が違うのです。

もう六年生の淑女なのですから気をつけましょうね。



「今年も姫子さんがお泊まりに来ますよ」


そうなんです。爆乳姫子さんは聖夜を私と過ごすのです。

・・・と言いますとちょっと百合の園な感じもありますが家庭の事情があるのです。



姫子さんのご両親 結婚記念日がクリスマスなんですって 


求婚したのもクリスマス 一年を経てクリスマスにご結婚



クリスマスに幸せが渋滞を起こしております。


そこで気を遣って・・・といいますか



「親が目の前でイチャイチャしているのを見せられるのは辛いのよ」


と避難して来る訳でございます。ご苦労様です。



――――



「いいなぁ 雪ねえさまとお泊まり会 いいなぁ」


駄目ですよ。百合さんのお父様が一緒に過ごすことを楽しみにしていらっしゃいます。

ご家族でお楽しみくださいな。



「雪ねえさまと姫子お姉さんだけが集まっているのはあやしいです」


いえいえ 別にそんな関係ではございませんよ。

私が一方的に揉んでいるだけの関係でございます。片お揉みの関係でございます。



「聖女さまの祈りをする夜だからですか」


何ですかそれは 聖女の私でも知りませんよ。初耳でございます。


聖夜と名が付いていますから聖女たる者何かしなければいけないかも知れませんね。

百合さんのお話は勉強になります。



「大丈夫です。

 姫子お姉さんとないしょのひみつだってお母さんには言っておきますから」


いや お母さま困惑しますよ。



――――



百合さんはお友達と過ごさないのですか



「お昼にクリスマス会をします。水玉ちゃんとどうしようかと考えていました」


だから声をかけてきたのですね。その気持ちは嬉しく思います。

他のお友達は呼ばないのですか。



「クラスのお友達五人でクリスマス会です」


男子くんたちは来ないのですか



「おこさまは呼びませんっ 淑女だけのクリスマス会です」


あら残念です。

淑女を目指すあたり先日のエリザベス先輩の影響はまだまだ残っているようです。


女子会にしたいのですね。


それではお部屋を貸し出しますよ。

当日は姫子さんも早くから来ますからご一緒させて頂けますか



「お友達に姫子お姉さん紹介したいです」


決まりですね。





クリスマスは淑女だけのクリスマス会となるようです。


本日はその準備のために参加するご学友さんに集まって頂きました。



初めてお招きするご学友さんもいらっしゃいますね。

緊張しないでくださいよ。



当日に着るためのワンピースドレスを差し上げます。

ちょっと早い私からのクリスマスプレゼントです。


全部私の着ていた中古品ですので型は古いですが・・・ 



ずっと保存したままでしたので気に入った物を差し上げますよ。


みなさん背格好が同じくらいですので大丈夫ですよね。

お胸がキツいなんて言ったらお姉さん泣きますよ。



――――



それはもう賑やかでございました。


乙女は年齢に関係なくおしゃれをするときには気持ちが高揚してしまいます。


初めは遠慮していましたが、百合さんが次々と試着している姿を見て緊張が無くなったようですね。




華やかな空気に誘われて、いつの間にか私の母まで参加しております。


私の母までそれはもうキャイキャイ致しましたよ。


二度と袖を通すことのないいワンピースドレス また活躍できます。




「やっぱり女の子はいいわよねぇ」


目の前にいるあなたの娘は「女の子」ではないのですか



ドレスが決まったら母による淑女教室(予定外です)



椅子の座り方、歩き方、お辞儀の仕方


みなさん 淑女の教育を受けていること自体に興奮しているようです。


カーテシーだけは妙に慣れている百合さんと水玉さん

エリザベス先輩のご指導で練習しましたからね。



髪型まで整えて五人の可愛い淑女が出来上がりました。



一番満足したのは私の母のような気がします。


クリスマスが楽しみです。





と言うわけでお昼には五人の淑女が集まる予定ですよ。


衣装合わせまでしましたからね。



「可愛いね。全力でお持て成ししましょうか」


初々しい淑女の会にご一緒させて頂けるのです。

お姉さんたち張り切ってしまいますよ。



「当日のドレスは任せてね。お雪に来てもらいたいドレス作ってもらったから」


えっ ドレスを新調したのですか 話が見えないのですが・・・



「先輩にオーダーメイドで作ってもらったからね。期待してね」


ドレスを先輩にオーダー・・・ あの先輩ですよね。



「そうだよ」


不安しかないのですが・・・ 



「聖女見習いが五人も来るんでしょ 本物の聖女を見せつけないとね」


だからですね・・・ 私は聖女ではありませんよ。


『聖女の術』もやりませんからね。



「でも聖女の祈りをする日なんでしょ そこは頑張らないとね」


何をする気ですかっ


やるなら魔女さんも一緒ですよっ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る