第9話 百合さんとアミュレット

百合さん 今日は貸し出した小説を手に部屋まで遊びに来てくれました。



「雪ねえさま アミュレットは作れますか」


「お守りですか」


神社の方が得意そうです。



「違います。 聖なる力を込めたアミュレットが欲しいです」


こだわりますね。そしてブレませんね。私は聖女ではありませんよ。

でも可愛い百合さんのお願いです。何か作ってあげましょう。



「アミュレットの効果は何が欲しいのですか お勉強ができるようにしましょうか」


意地悪な私です。学業成就なら私にお願いしませんよね。

そんな困った顔をしないでくださいな。



「好きな人が振り向いてくれるアミュレットにしましょうね」


恥ずかしそうな笑顔で小さくうなずく百合さん

先日好きな男子はいないって言っていましたよね。


想い人さんはもう振り向くどころか百合さんを見つめていますから今更・・・


まあ良いでしょう。私は恋する乙女の味方です。少し背中を押しましょう。



「少し待っていてくださいね」


「はいっ」


良いお返事です。


さてどうしましょうか。

先日作った匂い袋 まだ香りを付けていないものがありましたね。

そしてひと手間かけましょう。


エリザベス先輩から頂いたアロマオイルを使います。



部屋に戻ると百合さんがキラキラして待っていました。

さあ作りましょうね。


匂い袋を見ただけで飛び跳ねそうな勢い ぴょんぴょんしていますね。



「このアミュレットに効果を付けますよ」


かなり和風なアミュレットです。和風でもお守りではなくアミュレット

愛用のアロマオイルで香り付けしましょう。



「これが『聖なる水』ですか」


いえ オイルですよ。

素敵な瓶に入っていますから聖水っぽいですね。



「雪ねえさまの匂いがします」


よく気が付きましたね。



「だから雪ねえさまは男子にモテるのですね」


私でも小学生男子にはモテるようです。

残念ですがちょっと年下すぎますね。犯罪になってしまいそうです。


――――


丁寧に丁寧に 百合さんの真剣な表情が微笑ましく感じます。


これで素敵な香りも付きました。さあ百合さん完成しましたよ。


完成しましたよ・・・



「『聖なる術』をかけてください」


やらなければいけないのですか。



「『聖なる水』を使いましたよ。もう効果は付いていますよ」


「『聖女の術』が重要だと思うのです」


百合さんのキラキラには弱いのです。



「聖女ではないですよ」


「わかっています。 ないしょのひみつですね」


わかっていませんよ。



「それでは最後の仕上げをします。 百合さん廊下で待っていてください」


「はいっ」


良いお返事です。


すぐに部屋から出ていきますが、扉が少しだけ開いていますよ。

やっぱり覗いていますね。わかりやすい子です。


子犬さん事件の時と同じです。

いえ 今回は百合さん服を着ていますね。(危ない記憶)



仕方ないです。やりましょうか。えっとアドリブ アドリブ


私は聖女 私は聖女 私は聖女



『聖なる力よ 内なる魅力を届けよっ ミューズ』



【聖女の術ワンポイントレッスン】再び

  必要なもの : 迫真の演技力

  いらないもの: 羞恥心


いけません。 完全に癖になりそうな私がいます。




満足そうに部屋に戻ってくる百合さん


まだ終わったって言っていませんよ。

覗いていたのバレますよ。



「私のアミュレット・・・」



大切そうに胸に抱く百合さん


私の中の何かを失ったような気がしますが、百合さんが満足そうで何よりです。

聖女「ユキ・オトナシ」頑張りました。



大事なアミュレットの効果は発揮されるのでしょうか




今日も夕日がきれいです。

(遠い目)

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