第7話 神殿地下探索中

 俺は床に叩きつけられる事を覚悟した。


 その時、ズボンの尻ポケットがバンと弾け、リリーのシャボン玉がボヨンと広がり膨らむと、クッションのように俺を包んだ。


 これ、前にリリーから貰った転落避けのお守りだ。


 凄いなリリー。マジで女神様じゃん!


 だけど、破れたポケット側の尻が痛い! そっと手を当てると……穴があいてる。ちょっとそこだけ寒いかも。


「とにかく、ここを抜けてみんなと合流しないと」


 うっすらと光る床。地下はダンジョンのようだ。


 リリーがいれば、ここがどこかわかったかもしれない。動物みたいな直感が働くマサラさんがいたら、分かれ道だって迷わないかもしれない。レディオさんがいてくれたら、あの強力な明るさで、オバケだって裸足で逃げる。


「怖くない。怖くない」


 時々出会う魔物をUNKバズーカで蹴散らしながら進むけど、狭い回廊では取り回しが効きにくいし、そのうち持っていたウンコ弾もなくなり、時々落ちているウンコを拾いながら、俺は仲間を探した。


 そのうちどこかから、ドンドン! ドンドン!とドアを叩くような音が聞こえてきた。音の出どころを探して歩く。


「誰かいるんですかー?」


 散々歩いて、やがてその場所を見つけた。


 どうやらトイレのようだ。とはいえ、中はガタガタに壊れている。


「いるのよぉ!! ここにいるのぉ!」


 大きな木の梁が、トイレ用具入れと思しきドアを塞いでいた。女の人の声はそこから聞こえる。


「ドア壊します。だからできるだけ離れて!」


 俺はそう呼びかけて、最後のウンコを力いっぱい投げつけた。






「ありがとう、助かったわ……」


 用具入れから、綺麗な女の人が出てきた。


「ほんとにあの、クソドラゴン……」


 雰囲気がリリーに似ている。


「あのぉ……」

「あぁ、ありがとう少年。私は女神セッラ。あなたに最大のかん……うしろぉぉお!」


 振り向くと、平べったく黒光りする魔物と、コオロギをでかくしたような、虫型の魔物がカサカサと現れた。


 俺めがけて振り下ろされた奴の前足を、バズーカで防ぐ。その時、キンと音がしてバズーカにヒビが入った……ヤバい


「ふぉりゃぁぁぁぁぁぁ」


 ブンと耳元で鋭く空気が動き、次の瞬間巨大便所コオロギが真っ二つになった。


「きえろぉぉぉぉぉぉぉ」


 続けざまに棒のようなものが振り下ろされ、黒いアイツが叩き潰された。


 振り向くと、デッキブラシとフロアワイパーを持って、仁王立ちする女神セッラの姿があった。


 リリーのお母さん。強い。

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