第2話辛苦の刻(しんくのとき)

 スリュムが襲われたというのはかなりの衝撃であった。だが、心配を悟られてはいけない。なぜならばロキはヨトゥンヘイムの巨人族に殺されかけて、追放されてここまで来たという話をしたからだ。オーディンの発言もロキが喜ぶと思ってのことなのである。ロキは喜びの表情を見せた。その裏でスリュムと連絡がとれないために自分で行動しなければならなくなり、自分にのしかかる巨人族の未来という重圧に押さえつけられていた。

 ある日、ロキはオーディンに呼び出された。オーディンは告げた。「お前の子供達が私たちアース神族を滅ぼすとの幾つかの予言が出た。よって、フェンリルを幽閉、ヨルムンガンドは海へ追放し、ヘルは冥界へ追放とする。」我が子達がアース神族を滅ぼすという予言が出たのは嬉しかったが、散り散りになることは反論しなければならないと思った。が、しかしふとよぎる。オーディンはまだ巨人族出身である私のことを疑っているのではないか、と。今はまだだ、と自分に言い聞かせ、その言葉を鵜呑みにした。そして、それぞれを見送った。

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