第2話

翌日


昨夜は興奮して、眠りに落ちるまで時間がかかった。

起きたのは13時。

自宅からトンネルまで下道2時間。

シャワーを浴びるくらいの時間はある。

今日も反応してくれるとよいのだが。



昨日反応があった場所には、目印にガムテープを貼っておいた。

その場所で待機。

16時、電磁波計測器が反応。

今日は最初からスイッチオンな霊の声を聞くガジェットも、雑音が消えて声をひろっている。

「イルナーサウ、ナナニミルテニア」

昨日と同じ声。

昨日と同じことを話しているかはわからないが、今日も同じく「イヌマデュッテ」は何度も出てくる。

この話し方は、誰かに語りかけている?

今日は覚悟を決めてこちらからも話してみることにする。

「こんにちは!あなたは誰ですか?俺はイツキといいます」

ガジェットは受信機で送信機能は無い。

相手に声が届くかはわからないが、話しかけるしか方法は無い。



相手の声が止まった。少しして「イミテ?」

こちらの声が聞こえたのか?

びっくりしたような、興奮しているような感じがある。

「はじめまして。あなたの声はこちらに聞こえていますよ?」

言語が違うので意味は通じないだろうと思いつつ、話しかけなきゃはじまらない。

少しの間、なんとかコミュニケーションをとろうとする。

声の主も、話し方から同じくコミュニケーションをとろうとしてくれていると思われる。

相手からなら見えるかなとジェスチャーでもがんばってみたが、やはり見えていない様子。

と、急にトンネル内が明るくなった!

俺の前に人くらいの大きさの光が表れたためだ。

それは段々人の形になっていく。

ものすごく怖い!だけどこんな現象逃してなるものかと根性でカメラを向け、撮影を続ける。

現れたのは外国人?の女性。幽霊なのか?

俺を見る彼女。なんかオロオロしてる?

が、少しの沈黙の後に一言、「シミナリーア!」。

頭の中に何かが流れ込んでくる感覚と同時に強烈な頭痛!

もう一度、「シミナリーア!」同時に頭の中に響く(ごめんなさい!)!

テレパシー?ごめんなさいは単語の意味か?

話しかけたことへの後悔、激しい頭痛、対象への恐怖を感じながら、俺は意識を失った。



「・・・・・・あれ?ここ荷台?」

なんでここに?車中泊してたっけ?

俺をのぞき込む女性。膝枕してくれてる。

すげー綺麗な人・・・・トンネルに現れた人!!

「大丈夫?」

びっくりして飛び起き、女性と向かい合う。人か?幽霊か?

頭に彼女の足の感触はしっかり残っている。人の方が可能性高いか?

「わたし、名前、は、テニア、いいます。怖い思い、して・・・させて・・・ごめんなさい」

謝ってきた。まだ信用出来ないが、悪意は無さそうに思える。

ここまで運んできてくれたみたいだし、悪意があれば意識が戻る前に何かしてるだろう。今のところ何かされたって様子もない。油断は禁物だが。

ん?なんでこの車が俺のだとわかった?



「あの・・・」「あの・・・」同時に声出たw

「俺から先にいいですか?」

「・・・はい」

「俺の名前はイツキです。いくつか質問させてください。あのテレパシーはあなたがやったのですか?」

「テレパシー?・・・はい。わたし・・・あなた・・・言葉、違う。話・・・出来ない・・・困る。だから・・・そうしました」

申し訳なさそうに話す彼女。

見た目は白人って感じ。ヨーロッパの方?ロシアとかウクライナかな?すっごい美人さん。

髪は濃い目の茶色でショート。目は薄い茶色。

服装は青のロングコートみたいな上着、下は青のショーパン、上品な感じのやはり青い靴。

文にすればなんてことないが、見た感じの雰囲気が現代っぽくない。

なんて言えばいいか・・・そうだ、異世界アニメで出てくる感じ?

冒険者って感じじゃないな。神官とか?

スラっとしたきれいな足。ガン見しそうになるが、今はそれどころじゃないわな。


「今は日本語を話してますよね?」

「はい。あなたの・・・知識?・・コピー?した・・・しました」

コピー?

「テレパシー・・・相手・・・負担、かかる・・ます。コピー・・・もっとかかる。意識・・・無い・・・眠る・・・気絶・・・負担無い、大丈夫」

知識をコピーするために気絶させてごめんなさいってこと?

しかしこんなの、どっきりか何かで騙されてるって方がまだ納得できる。

「じゃあ先ほど俺と話をしていたのはあなたで間違いない?」

「わたしです」

「シミナリーアの意味はごめんなさいで合ってますか?」

「シミナリーア、はい、ごめんなさい。ほんと、ごめんなさい」

シュンとなるテニアさん。なんか泣きそうだぞ。

「あーあー!それはもういいですから!」

いつの間にか恐怖は無くなっていた。


「それよりも!」

そう、それよりも!これはもしかしたら心霊現象なんかよりよほどレアなことかもしれない。

「はい?」

泣きそうだぞこの人。なんか俺が悪いことしてる気分になる。

「あなたが先ほどまでいた場所はどこ?どうやってあのトンネルに出てきたの?正直俺はいたずらだと思いたい。それが一番納得がいくから。でもあの空間から現れたことやテレパシーがそれを否定するんだ。だから教えてほしい。あなたがなんなのかを」

こんなに一気に話しても通じないだろと今なら思う。

しかしこの時はそんなこと考える余裕はなかった。

「私、いた・・・別・・・異世界」

心霊調査のつもりが出会ったのは異世界人?

「あなた・・・一緒に・・・いたいです」

「え?俺と?それは何故?」

「それは・・・・・・」

なんか恥ずかしそうにして俯いちゃったんだけど?

今回のオカルト調査、大成果だがさて、困ったことになったぞ。



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