心霊スポットだと思って調査しに行ったら異世界美人をひろった話

爆滓

第1話

「よっ・・・と。大体これで足りるはず・・・」

家のガレージ内、サンバーの荷台から断熱材や板材などをおろす。

これらは荷台に作ろうとしているキャンピングシェルの材料だ。

元々車中泊なんかが好きで、そのうちキャンピングカーが欲しいと思っていた。

でもシェルを自作した方が使い勝手良さそうなので、作ってみることにしたのだ。

なにより作るの楽しそうだし。


俺は長谷川イツキ。

数年前に宝くじ当てて仕事はリタイア。

既に両親は亡くなり、兄弟ともここ数年は疎遠になっていた。


家、ロードスター、RRのサンバー、SRX4、MUSICMAN STINGRAY・・・

当面の物欲を満たした後は、一日中、やりたいことに時間を使っていた。

今やっていることの一つがキャンピングシェルの製作(まだ材料買っただけだが)。

そしてもう一つがオカルト、主に心霊スポットなどの調査だ。


幼稚園の頃、病気で入院した。

特に痛いとか気分が悪いって症状は全く無かった。

血小板が少なくなって出血が止まらないってだけ。

まあちょっとの怪我でも最悪出血多量で死ぬから、”だけ”ってことはないのだが、

子供の俺にしてみれば、そんな理由でも遊べないのは辛かった。

気を紛らわせるためだったのだろう。親父がたくさん本を買ってくれた。

その中で特に興味を惹かれたのがUFOやUMA、幽霊なんかの本。

俺がオカルト好きになったのは多分このころ。

あ、病気はもう完治しているよ。

治療は中学までかかったけどね。


大人になってもオカルト好きは変わらなかった。

夜中に心霊スポットに行ったり、〇太郎ってUMAがいるという池に行ってみたり。

しかし未だ幽霊もUMAも見れていない。

UFOらしきモノは見たことある。

夜、ふと空を見上げると、街灯のまわりの蛾みたいな飛び方してる人工衛星くらいの光。見たまま蛾だと思った。

それが雲に隠れたので、遥か上空を飛んでいたと気が付いたんだ。

雲の上であのスピード、あの軌道で動ける飛行体を人類はまだ持っていないはずだ。

その体験から、現在の科学で解明できていない現象はあると確信している。

なんでもいいから、何か納得できる答えがほしい。

とか言ってみたが、オッサンになってもオカルト好きだから、今でも心スポ行ったりしてるだけです(笑)


直接心霊スポットに行く以外に、こんな感じのこともやっている。

車で走行中、〇〇〇〇レーダーや電磁波計測器などをダッシュボードに置いて、反応があったら場所をナビに登録。

運転中にそんなの見てたら危ないが、○○○○レーダーも電磁波計測器も反応時に音を出すからわかる。

そしてナビに登録された地点から有望そうな場所を選び、後日調査するってわけ。


で、以前俺が仕事でやってた軽トラでの配送。

福島方面は主に国道4号線沿いが多く、行きは高速で帰りは大抵下道。

俺は国道4号線よりも国道349号線を帰ってくるのを好んだ。

場所によってはクソ狭いし4号線より時間がかかる。

だが信号も交通量も少ないために、停まらずに走り続けることが出来る。

その方が自分にはストレスが少なかったし、なによりこっちの方が景色がいい。


その国道349号、阿武隈川沿いにいくつかトンネルがあるのだが、その一つで時々電磁波計測器が反応することがあった。

特に心霊スポットになっているって話も聞いたことがない場所。

これまでのデータから、反応するのは16時から17時までの間。

他の時間でも反応している可能性はあるが、いつも俺が通っていた時間が15時から18時くらいの間なのでその辺は不明。

今回は7時から19時までの12時間の反応を調査する。

仕事で通った時はいつも走り抜けたときに反応をひろっていただけだった。

もしその場所にとどまった場合はどんな反応をするだろう?

泊りがけで調査するのも考えたが、時期的にまだ朝晩は気温が下がる。

加えて山の中だし、おまけに川のそばだ。

サンバーの荷台は今は幌だけ。キャンプ道具も積んでるがちょっとキツイ。

ロードスターは車中泊する車じゃねえ(笑)

とりあえず二日かけて同じ時間帯を調査する予定。

結果次第ではその後にもまた来ることになるだろう。


トンネル内の歩道は狭い。

車道より高くなっているため轢かれることは無いが、すぐ脇を車が走り抜けるのはやはり怖い。

多分普段から人はほとんど通らない(俺も歩行者は見たこと無い)ため、通る車は全然歩行者を気にしていない様子。

何故かこのトンネル、途中から明かりが無くかなり暗い。俺も怖いが、車のドライバーも多分人がいてびっくりしてるだろうな。


昼過ぎまでは何の反応も無し。

この状況は予測してたし、一番可能性が高いのは16時からだ。

だからそれほど気にせず、一旦トンネルの近くに停めた車に戻って昼食。

ガソリンコンロでお湯を沸かしてカップ麺。

こんなことでも外でやってると楽しい。


午後も反応は無い。自分でもこんな長時間よくやるわと思う。

時間はもうすぐ16時。反応あればいいが。

いつも反応があるのはトンネルのほぼ真ん中のあたり。そこを行ったり来たり。

16時を過ぎてすぐ、電磁波計測器に強い反応。

空振りになることも考えていたため、反応があって嬉しくなると同時に、少し怖くもなる。

一時的に反応して終わる可能性も考えていたが、数分たってもまだ反応は続いている。


ここでもう一つのガジェットを使ってみる。

よく動画サイトのオカルトチャンネルなどで使われている、飛び交う電波から幽霊の声をひろうガジェット。あれに似てるが少し違う。

コイツは調査の邪魔になるラジオなどの周波数を設定すると、それ以外の周波数をサーチする。

そして強い電波を検知するとサーチをストップしてその周波数を音声で流し続ける。

車のラジオでよくある、スイッチを押すと周波数を変えていって、受信するとそこで止まるのと同じ原理かな?

かなり前にネットオークションで手に入れたものだが、出品者の自作だとのこと。

今回はトンネル内でラジオ等の電波は入らなかったため設定なし。


スイッチを入れる。サーチを初めてすぐに静寂。ということは受信してるってこと。

受信していなければ雑音のままサーチを続けるはずだ。

と、女性?の声で「・・・イヌマデュッテ」

めっちゃビビった!まだ昼間とはいえ、暗いトンネルに一人ではやはり怖い。

何語?おそらくだが、俺の知らない言語だと思う。

そしてとてもきれいな女性の声。見えないがここにいるのだろうか?

ガジェットからは時々同じ女性の話す声が聞こえる。正直相手が何なのかわからないので怖い。

知らない言語だから何を話しているかは理解できないが、所々で最初に聞いた「イヌマデュッテ」が入っていることから、

この言葉がこの人?が話している中で重要なのかもしれない。

日本の田舎のトンネルで知らない言語を話す存在ってのは何なのだろう?

何かこちらからもアクションを起こすべきか?

しかしこれが霊だった場合、とり憑かれるかもしれないという恐怖が頭をよぎる。

とり憑かれたらそれはそれで成果だろうが、この時は踏ん切りがつかなかった。

今回はこちらからのアクションは起こさないでおこうと決め、動画で記録することに専念する。

この現象はきっかり17時まで続いてパタリと止んだ。

予定通り19時まで調査を続行するも、その日は二度とガジェットが反応することは無かった。


帰宅後、メシも風呂も後回しで動画を見返す。

特に何かが映り込んでいるといった事は無かった。

そうすると声について調べてみるしかない。


こんな言語は聞いたことがないが、世界には俺が知らない言語なんていくらでもあるだろう。

発音は日本語的で、英語やフランス語などのような、日本人からするとあいまいな発音はほとんど無い。

カタカナで全文書き出してみた。

これが実際にある言語だとして、俺が読んでもこの言語を話す人に通じそうだ。

いたずらの線も考えているが、それだと誰が何のために?って思う。

やるならもっとメジャーな心霊スポットでやるよね?


先ずはこれが何語なのか?

一番印象に残った「イヌマデュッテ」

俺の耳ではこう聞こえるが、俺が話すと微妙な違いがあるかもしれないので、動画の音声をそのまま使って音声検索。

何か引っかかればと思ったんだが、そのままカタカナになった(笑)

しかも一致するもの無し。他の単語でもやってみたが同様。ネットじゃ無理そうだなこりゃ。

明日の調査で何かとっかかりが見つかることを期待しよう。

同じ時間帯でやるつもりだったが、この様子なら16時からでいいか。

何か新しい発見があると良いのだが・・・

この時の俺は、翌日の調査であんなことが起きるとは想像も出来なかった。



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