第20話 ヘラる感情

「じゃあ、俺は風呂に入るから」

 そんな当たり障りのないことを言って優吾は私との通話を半ば一方的に切った。

 彼に電話を切られた。その辛い事実が私の胸に重くのしかかる。


 正直、私を愛してくれるのなら誰でもよかった。けれどみんなして最後は私の元を去って行ってしまう。

「どいつもこいつも…最後は私のことを捨てるのね…」

 私は優吾とのやり取りを見つめながらそんな言葉を零していた。優吾は今まで会ってきた人とは違った。私が相手に何百通ものメールを送ろうものならば「怖い」と言われる。何十回も電話を掛けようものならば「ウザイ」と言われる。そして最終的には男子も女子もみんな私のことを見捨てていくのだ。


 でも優吾だけはそんな私からのメールを返してくれる。私からの電話を取ってくれる。なんて優しい人なんだって思った。この人ならば私を愛してくれる。私にいっぱい構ってくれる。私のワガママを全て聞いてくれる。そう信じていた。なのに、このザマだ。彼は私のことを拒絶した。


「ねえ、何してるの?」

「まだお風呂から出ないの?」

「お風呂に入ってたって通話くらい出来るでしょ?」

「なんで一方的に電話を切ったの?」

 心の底から湧き出る感情をたくさん優吾にぶつけた。これならば彼は後悔してくれるだろう。優吾は優しい人なのだから。


 けれど、いつまで経っても私が送ったメッセージに既読が付くことはなかった。

「既読は1分以内に付けて?」

「未読スルー、既読スルーしたら絶対に許さないから」

 私は立て続けにメッセージを送り続けた。けれど何分経っても既読が付くことはない。

 誰かに構ってもらいたくて同じクラスの草平にメッセージを送ったが既読が付くことは無かった。


「なんでなの…?なんで誰も構ってくれないの?」

 気が付けば誰も居ない部屋に向かって呟いていた。

 容姿には人一倍気をつかってるのに。そこら辺の人よりも可愛いのに。


「誰でもいいから…私のことを愛してよ…」

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