第7話 どうして
沙友理のやつ、いきなりどうしちゃったのかな…。そんなことを考えながら自転車を漕ぐ。
家に帰ってからも沙友理のことが頭から離れなかった。
「ありがとう!本当に気持ちだけで充分だよ!」
俺はもう一度同じ返事を書いて沙友理に送信する。
課題をやろうとリュックから筆箱とノートを取り出した時だった。スマホから通知音が誰もいない空間に鳴り響いたのは。確認すると、彩夏からだった。
「沙友理と春夏って人といつも何話してるんですか?」
いつもなら絵文字で彩られている文面がやけに淡白だった。極めつけに、春夏と沙友理とSNSのリプ欄で話した内容がスクショされて俺の方に送られている。
「優吾さんとこの2人ってやけに仲良いですよね」
「もしかして私よりも仲が良いんですか?」
「なんでこんなに楽しそうに話しているんですか?」
止まることのない通知音。俺はその場で軽く頭を抱えた。
「2人は友達なんだ」
こう言えば彩夏も納得してくれるだろう。けれど俺の考えは甘かった。
「優吾さん、どうやったらあの二人が離れてくれると思いますか?」
「なんであの二人は優吾さんにベタベタしているのですか?」
「どうやったらあの二人を消せますか?」
彩夏からのメールは止まらない。
「あの二人は俺の大切な友達なんだ。だから許してほしい」
俺は彩夏にそう返事をしてスマホを閉じた。その日は、それ以上彩夏からメールが来ることはなかった。
今日も課題をやって風呂に入って寝るか。多過ぎて嫌で嫌で仕方がなかった課題も今になっては日常の一部だ。
課題に取り掛かろうとした時、スマホから着信音が鳴った。春夏からだ。俺は課題を一旦置いて直ぐに電話にでる。
「もしもし」
「もしもし。春夏か。どうしたんだ?」
「今日、一緒に帰ろうって言ったよね?なんで先に1人で帰っちゃったの?」
スマホの向こうから春夏が不機嫌そうに不満を漏らす。そうだった…俺は昨日、春夏と約束していたんだ。つい沙友理とのやり取りに夢中になって春夏のことを忘れていた。
「悪い!つい忘れてた!」
俺は思わずスマホの前で両手を合わせてしまう。
「過ぎたことだもん。仕方ないよ。」
春夏の一言にほっと胸を撫で下ろした。しかし、
「まさか、他の友達に夢中になって私との約束を忘れたんじゃないでしょうね?」
ギクリ…。正しく図星だ。
「私ね、優吾と長い付き合いだからあなたのことなら何でも分かるの。だから私に隠し事をしたって無駄だよ?」
「だって優吾、SNSとかで他の人と仲良くしてるもんね。付き合いの長い私よりも仲良さそうにしてるもんね。私は優吾のことなら何でも知っている。小さい頃からずっと一緒だったもんね?」
春夏が不気味に笑いながら言う。そのなんとも言えない様子に俺は思わずブルっと身震いをしそうになる。
「本当に悪かった!今度スイーツを奢るから許してくれ!」
俺は何とか春夏に許しを乞う。
「言ったからね!私、優吾の言ったことは全て覚えているから」
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