第29話 必ず助け出す

「……!」


JAS.Labジャス・ラボの旧施設のそのサーバーの広間からツバメとわか、そして幾人かの超能力者たちが消えた途端、俺を押さえつけるサイコキネシスの力が弱まった。


「──クッ……ンヌヌヌッ……ラァァァァァッ!!!」


「っ!?」


俺が腕に力を込め動かそうとすると、バチリ、バチリと。何かが弾けるような音と共に、俺に向かってサイコキネシスを使っているのだろう超能力者たちの額に汗が滲む。


「……魔力が無くてもなぁ……! こんくらいの力なら、押し返せるんだっての……!」


「くっ……! 早く誰か攻撃を──」


「させるかぁッ!」


バチンッ! 俺の体を覆っていたサイコキネシスの力を完全に振りきると、俺はまず【異能抑止】の超能力者のアゴへと軽く一撃。その意識を飛ばす。


「……わかぁぁぁぁぁッ!!! どこだぁぁぁッ!?」


大声で叫ぶ。しかし、やはりどこからも返事は聞こえない。


「──撃てぇっ!!!」




──ズダダダダダッ!




小型のマシンガンの射撃音と銃弾が俺の体に当たる音がするが、正直そんなもの魔力が戻った今では痒ささえ感じない。


「おいっ……! ツバメ先生は、わかをどこへ連れて行ったっ!?」


「ひっ……」


正面のひとりの超能力者の、その手に持っていたマシンガンをグニャリと折り曲げながら問う。腰が抜けたらしく、その場に尻もちを着いた。


「どこだって聞いてんだっ!!!」


「あっ、あっ……」




──ズダダダダダッ!




「チッ、ラチが明かないな……【探索サーチ】!」


魔法でわかの居場所を探ると、どうやらかなり遠く、西南方面へとその気配があることが分かった。


「位置からして神奈川……いや、山梨かっ!? おい、JAS.Labジャス・ラボの本拠地か支部みたいなのがそこら辺の県にないかっ!?」


「あっ、あります……! 山梨の富士山近くの小室山に……!」




──ズダダダダダッ! カシュッ、カシュッ……


──ちっ、弾切れだっ! 早く次の弾倉をっ!




「じゃあ、そこにわかは連れて行かれたのかっ!?」


「わ、分かりません……私たちも、何も聞いていなくて……!」


「聞いていない、だと?」




──カチャッ、ズダダダダダッ!




「さっきからうるせぇぇぇぇッ!!!」


「「「うぎゃぁぁぁぁあっ!!!」」」


俺の背中にずっとマシンガンを撃ちっぱなしにしていたヤツらを【魔力剣ソード】が起こす風圧で壁へと叩きつけて一掃する。


「弾の無駄だってことが分からんのかコイツらは!」


俺は、正面で腰を抜かしながら怯える超能力者へとあらためて振り返る。


「ひっ、ひぃっ!」


「最後に訊きたいことがある。いまさっき逃げたヤツらの能力は?」


「え、えっと……サイコキネシスが数人と、あとはテレポーテーション……」


「ツバメ先生の能力はっ? ツバメ先生も超能力者なんだろっ!?」


「わ、分からない」


「おい、いまさらウソ言ってんじゃねーぞッ!」


「ほっ、本当なんだっ! ウソじゃないっ! 所長は謎が多くて、その素顔すらほとんど知られていなかったんだっ! だから俺も、JAS.Labジャス・ラボ創始者の孫で、現所長であるということ以外は……何も知らないんだって!」


俺に胸ぐらを掴み上げられたまま、その超能力者は必死で弁明した。


「唯一知ってることといえば、所長は他の職員や研究員にも隠して、ひとりで何かの超常現象の研究に打ち込んでいたということくらいだよ……」


「何かの超常現象の研究に……?」


「内容は知らねーよっ! でも、明らかに地下深くにJAS.Labジャス・ラボが使用していないけど通電している謎のスペースがあるんだ!」


「……そうか。分かった。情報はありがとう」


「じゃ、じゃあ……!」


「危害は加えない……と言いたいところだが、しばらく気絶だけしておいてくれ」


「えっ──」


軽くその超能力者のアゴを打ち抜いた。脳震盪を起こして白目を剥いたのを確認して、俺はその部屋を走り去った。


……山梨、JAS.Labジャス・ラボの本拠地、そして地下深くにあるツバメ先生──浜百合ツバメの謎の研究スペース。そこにきっと、わかがいる!


「待ってろよ、わか……!」

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