第12話 お正月の初〇〇

「3、2、1、あけましておめでとう!!」

お酒を飲んだわけでもないのに、いつもよりテンション高めのお父さん。

「あけおめ!お父さん、お母さん、お姉ちゃん」

小春は初めて年越しを起きて過ごした。いつも起きると言いながら11時ごろに寝てしまってたもんね。

その後、家族4人で近くの神社に初詣に行った。夜中なのに思ったよりもたくさんの人が来ていてびっくりした。

「あ、唯香ちゃん!あけましておめでとう、今年もよろしくね」

田中さんも初詣に来ていたんだ。田中さんも家族で初詣に来てたから、手を振っただけだけど、新年早々会えて嬉しかったな。


初詣から帰ったら寝て、気づいたら夕方16時。ちょっと寝過ぎたかも。

元日は家族とテレビを見て過ごした。年末年始はいつもと違った番組で面白いから、つい見てしまう。でもこんなのんびりした年末年始を過ごしたのは初めて。

毎年、年末年始は家族でおばあちゃんの家に帰っているから家でお正月を迎えたのは初めてだった。だから新鮮な感じだけど、おばあちゃんの家に帰れば親戚が集まってわいわいしていたから、少し寂しい気もした。


「実家帰りたかったけど、今年はお父さんが2日から仕事だもんねぇ」

お母さんも少し悲しそうだった。お父さんの仕事が明日から始まってしまうから、仕方ないのかな。すると

「唯香だけでもおばあちゃんに会ってくる?おばあちゃん、きっと喜ぶよ」

確かにおばあちゃんには会ってみたい。話すとすごく楽しいから。

「行ってみる」

そうは言ったものの、おばあちゃん家は私の家から電車とバスで2時間以上はかかるからな…でも出かける練習も兼ねて行ってみよう。


帰省ラッシュも終わった頃の1月5日、私はおばあちゃんの家に行くことに。

いつもより少し早い6時に起きて、準備をした。お母さんが

「これ、おばあちゃんに渡しといて」

と、お菓子の入った袋をおばあちゃんに渡すことになった。

さあ、お菓子の袋を持って出発。最寄りの駅から電車に乗った。

まだサラリーマンや学生は休みだから、電車は結構空いている。おばあちゃんの家の最寄駅には1時間ぐらいかかるけど、この電車に乗れば乗り換えなしで行けるから座っているだけでいい。何事もなく着くといいなぁ。


電車は大きめの駅に着いた。するとお客さんがたくさん乗ってきて、さっきまでガラガラだった車内が満席になって立ってるお客さんも結構いる。

私は見る場所に困って、車内の広告を見ていた。電車はいくつか駅に停まって、その度にお客さんが増えていく。

目の前に視線を戻すと、杖を持ったおじいさんが立っていた。おじいさん、座れたらいいけどどこも席が空いていない。どうしよう…

他の座ってるお客さんはスマホばっかり見ておじいさんに気づいていないのかな。正直腹が立った。誰も席を譲らないなんて。

でも、おじいさんの目の前に座っているのって私…

私は喋れないからって何でも他人がやってくれると思っていたけど、ここは私が勇気を出して席を譲らないといけないのかもしれない。


席を譲る時ってなんて言えばいいのだろう、どうぞだけでいいのかな。

でもおじいさんは席を譲られて嬉しいのかな、たまに怒る人とかもいるらしいし。

迷ったけど、いろいろ考えてても仕方ない。私はそう思って席を立った。


「座り…ますか…?」

声を出すことができた。

「いいのかい?お姉ちゃん。ありがとうねぇ」

と言い、おじいさんは席に座ることができた。

とても緊張したけど、何だか私も嬉しくなった。

誰かが喜んでくれたら、自分も嬉しくなる。


電車は降りる駅に着いた。電車を降りようとしたら

「これ、持って行ってくれ」

とお爺さんが言って、おせんべいの袋をもらった。

「ありがとうございます」

お礼も言えて、良かった。これからはもっといいことをしたいなぁ。


駅からバスに乗って、無事おばあちゃんの家に着いた。

「唯花、待ってたよ」

おばあちゃんが出迎えてくれて、お母さんからもらったお菓子の箱を渡す。

その後、おばあちゃんとお話をして1日が終わった。

今日はいい日だったな。今年はいい年になればいいなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る