第35話 魅惑の果実③ ※性描写あり 閲覧注意!
「とりあえず中身見て決めましょう」
「あい、とりあえず縦割っと」
黒刀でサクサクっと蔓と果実を切断してみた。
「あら、中身は意外と普通ね。それにいい匂い」
トゲトゲの赤い果実は外観はアレだが部分だけ見れば南国フルーツのようだった。
肝心の中身は瑞々しい白桃のような白い果肉で、切断面から美耶華さんの言うように何か物凄く甘ったるい独特な匂いが漂ってくる。
「見た目はともかく食べられそうですね」
「そうね……………?……んんっ……ふくっ」
甘い香りが辺りに漂うにつれて何だか非常に唾液が出てくる。お腹はまだ空いていないがこの果実を食べたいという衝動に駆られてくる。
美耶華さんも何となく食べたそうにしているのがわかる。だが、ダンジョン産の植物を調べもせず口にするのは危険なため我慢しているのだろう。
「正宗……君……」
「何です? って、美耶華さん大丈夫ですか? 顔真っ赤で苦しそうですよ。まさか熱でもあるんじゃ……」
「う、ううん……ちが……くはないかも。はぁはぁ……」
「どうしよう。解熱の薬もないし。
「……お願いあるの……いいかしら」
「はい。僕にできることなら何でも言って下さい」
「ありがとう。このままじゃヤバいから……ボス部屋へ……」
「ボス部屋? 確かにこのままだとモンスターに遭遇するとヤバいのは確かだけど、よりによってボス部屋は危なくない」
「正宗君なら……大丈夫。信じてるから……ふくっ!」
「美耶華さん!」
これは一刻を争いそうだ。確かにボスさえ排除してしまえば、その部屋は安全地帯になる。美耶華さんの看病のためにも危険を承知でやるしかないか。
「わかりました。もう少しの辛抱です」
一人で歩けそうもないので肩を貸し、ボス部屋の扉の前までやってきた。
「行きます。美耶華さんは壁際で隠れていてください」
美耶華さんが小さく頷くのを確認して、その扉を押し開けた。
実質一人で戦う階層主の大広間。果たしてどんな階層主なのだろうか?
どんなであれ僕のやることは一つ。
僕たちが広間に踏み入ったことで、暗闇に包まれていた左右の壁に設置されている松明に火が灯る。その松明は、ぼっ、ぼっ、と順番に奥へと向かってその数を増やしていく。
松明の灯りが最奥へと到達すると同時に階層主がジェネレートされる。
だが、そのシルエットは今までと違い、えらく小さく感じる。
あれは人型? 次第に輪郭がハッキリしてくる。
深々と被ったローブのフードで顔は見えないが、杖を持っていることからゲーム的感覚から魔法職だとすぐに理解できた。
敵はその魔法職の人物ただ一人。
その人物から溢れ出す強大な魔力、その意味するところは……。
魔法戦になると厄介だし、美耶華さんは動けない状態だ。
ならば先手必勝! 魔法を撃たれる前に接近戦に持ち込み機先を制するのみ。
幸いなことに変態男ほどの重圧は感じられないことだった。
ローブ姿の階層主までざっと 20m。
「参る!」
次の瞬間―――黒い閃光が広間に迸る。
一瞬にしてローブ姿の階層主の横をすり抜ける。
抜き身の黒刀には確かな手ごたえがあった。
振りかえると初老の男と思わしき首が地面に落ちていた。
だが、何だ? このぞわりとする感覚は?
「クヒヒヒヒッ」
驚きことに地面に落ちた生首が笑いだした。
その声は不気味に広間に響き、カッと目を見開くとローブ姿の胴体が膨れ上がり、ローブを破り筋肉が肥大化するように変異していく。
ぐちゃぐちゃと膨れ上がるソレはハッキリ言ってグロイ。
黒色に変色したその身体は手が 2本増えて3mほどの巨人へと変異しようとしており、切断された首からは触手のようなものが伸びて生首と接合しようとしている。
「………キモイ」
敵が変異し終わるのをわざわざ待つほど僕はお人好しではない。
生首が接合される前にその胴体を細切れにする。
「貴様! ズルいぞ! ここは待つのがセオリーだろうが!」
六つ目になった生首が抗議の声を上げてくるがそんなの知るか。
生首をサッカーボールのように蹴り上げると生首を輪切りにして更に火を放つ。
燃え上がる巨人の肉塊。流石にこれ以上再生はできないようだ。
その肉塊も粒子となって消えていった。
第三形態はないようで安心したが、仮にも階層主がこんなんでいいのだろうか?
簡単に倒せたから良いんだけどさ……イマイチ敵の強さがわからん。
「美耶華さん。階層主倒したよ」
「はぁはぁ……正宗くうん」
美耶華さんは苦しそうに身体をモジモジと揺らしている。
何? 熱があるのは間違いなさそうだが、どうにもその表情が艶めかしい。
ボディスーツの胸元を開き、そこから見えるのは大きな谷間。
水浴びで見た光景が脳裏に浮かび慌てて視線を逸らすとそこには、あの赤い果実の皮脂が転がっていた。
「ふぅ……ふぅ……んっ……」
「美耶華さん? 大丈夫? じゃないよね」
美耶華さんは茹で上がったように顔を真っ赤に染め、両足をモジモジと擦り合わせていたかと思うといきなり僕に身体を預けてきた。
「ごめんなさい……身体が火照って……ふくっ……全身がむず痒いの……もう我慢できなくて………お願い正宗君……はぁはぁ」
「ちょっと美耶華さん⁉」
まさか発情してる? これどう見てもそうだよね。ひょっとせんでもないけどこの謎の果実のせい? 媚薬効果が出てるのか。
「美耶華さん、しっかりして! この実、媚薬成分が含まれてるんだよきっと」
「……そうみたいね……だから……」
美耶華さんがそう呟いた瞬間―――艶っぽい顔が迫り、柔らかい唇が僕を求めてくる。突然のことに戸惑うも美耶華さんは更に激しく僕の口内を求めてくる。
穂香とは違う大人のキス……ヤバいこれ気持ちイイ。
誰もが憧れる ‟みやりん” とのキス。
駄目だとは思っていても抵抗することはできず、されるがままになっていた。
美耶華さんに押し倒され、肌を重ねていく。
そして、いつしか僕も果実を口にしていた。
そこからはあまり記憶がない。
気が付くと二人とも裸で抱き合って寝ていた。
憧れの女性とエッチなことをしてしまった。しかも、どうみても 1回やそこらではない。これは夢? だが、肌の温もり、汗と〇液の匂い、僕の妄想や夢にしてはリアリティがあり過ぎる。
どれくらい寝ていたのかは不明だが、この部屋に入ってから18時間以上は経過している。流石にお腹もすくし、喉も乾いた。
現実とは厳しいものだ。一度誘惑に負けるとそのまま流されてしまう。
水分補給をするとまた行為に没頭してしまう。
「穂香ちゃんに悪いわね」
「穂香? 何でそこに穂香が出てくる。アイツとはただの幼馴染だよ」
「そうかしら? とてもそうは思えないけど」
「………」
幼馴染の悲しそうな顔が脳裏に浮かぶ。
「まあ、正宗君がそれでいいなら私は構わないけど」
「美耶華さん……」
「悪いのは、私とこの果実。それだけよ……」
それが免罪符になるとは思えないけど、この快楽は麻薬のように僕の体を侵食していった。
人は何かを口にしないと死んでしまう。
空腹と発情効果で頭が回っていない、食べ物がない状況なので仕方がないとはいえまた果実を口にしてしまう。
結果、ダンジョンの攻略や脱出のことなど忘れ、行為に耽続ける。
もうどれくらい経ったか見当もつかない。
それくらい夢中になっていた。
ぶっ倒れるまで繰り返し、起きてからも求め合った。
体位を変え激しく求め合う。
動物のような行為。
そんな時だった。
目の前の入口の大扉が音を立てて開いた。
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