40.初陣

 『前方5000mにマジックセンサー、感アリ。魔族集団、五万ほど。総員戦闘準備開始せよ!!』


 アイン=カーン艦内に放送が流れる! きたか、いよいよ!!


「ステッド君。艦内訓練で、だいぶコツつかめてるでしょ?」

「それに、マニュアルも暗記するほど読みましたよ、ローニさん!」

「実戦、だよ。ビビってんじゃないよー?」

「ビビりゃしませんって」


 アームドアーマーに乗り込む前に。ローニさんは俺の頬にキスしてくれた。


「おまじない。生きて帰れるように」

「……照れるな。でも、魔神が出てきているワケでもないのに。死にゃあしませんって」

「たいちょー。子供が好きだから」


 アンシェルさんが、そんなことを言う。


「ショタコンじゃないんだけどね。純粋に子供好きっていうか」


 エルアンさんも言う。


 その他、補充人員で総勢十人になったローニさんのルールメーカー分隊は。

 出撃の時を迎えた。

 俺も、新兵扱いで含まれている。いささか若すぎるって、艦長さんが眉しかめてたけどな。


「戦場上空までは、アイン=カーンが運んでくれる。そこから、落下傘で降下。あたしたちフライングギミックを装備している部隊は、空襲をかけるから。降下部隊は、陸上戦闘で敵を蹴散らして。いい?」

「了解!!」


 ルールメーカー分隊は、一度三名まで減っているので、フライングギミックを使いこなせるのは生き残りの三名のほかには二名しかいない。つまり、半数は降下部隊になるということだ。

 それでも。帝国軍の開発したこのアームドアーマーって兵器は強烈な破壊力を持っている。


「よし、動くっ!!」


 俺は、アームドアーマーの挙動を確かめなおすと。


 飛行空母、アイン=カーンの甲板から飛び降りた。


   * * *


「さーて、やりますかね!!」


 用が済んだ落下傘を切り捨てた俺は、前方を見る。


 魔族がうようよいる。一地方の動物がほぼすべて魔族化したんだ。これでも、まだごく少数の群れだろう。

 俺がまず選んだ武器は、大口径ガトリングガン。コイツの乱射で、あの魔族どもを粉々にしてやる。

 そう思って、指先に力を込めた。

 ほぼ同瞬に。アームドアーマーの指が、ガトリングガンの引き金を引く。


「ららあああああ!!」


 目前の魔族が片っ端から後ろにふっとんだり、砕けたりする。あははは!! コイツはいい。鬱積がスッキリするってもんだ!!


 おれは、ガトリングガンをぶん回して、ホバー移動で前面に進む。

 

 敵の密度が高いところにぶち込んだ方が、効率がいいな。

 そんなことを考えつつ。


 生き物を殺すにも、効率って大切なんだなって冷静に考えてもいた。


   * * *


『周辺の魔族、殲滅完了。ローニさん、そっちはどう?』


 俺は、無線でローニさんに呼び掛ける。


『ナパーム弾を使って、大概焼き尽くしたよ。生き残りは、もうほとんどいない。アイン=カーンが地上に降下次第、帰投して。ステッド君』

『了解です』


 これが、俺の初陣だった。

 いや、戦争は、帰るまでが戦争です。

 訓練中に言っていたローニさんの珍言が思い出された。

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