第6話

 二人きりで話したい。

 そう隣の女の子から言われた僕は教室から離れ、中庭の方へとやってきていた……これまでずっと無視されてきた女子と二人きりとかかなり気まずいな。

 帰っていいかな?


「まずは自己紹介からかな?僕の名前はわかっている?」


 そんなことを考えながら僕は口を開く。


「……えぇ。わかっているわ。隣の席だもの……今まで無視しちゃっててごめんなさい」

 

 隣の少女も口を開いてちゃんと言葉を話し、これまでの自分の行動についての謝罪の言葉も口にする。


「別に気にすることではないよ」


 ……何故無視したか、これを聞く必要はないか。

 聞いても僕が傷つく答えが返ってきそう。


「それでも私は自己紹介しておくべきよね。私は貴方に名乗ったことないし」


「ぜひ、お願いしたいね」

 

 隣の少女の名前を僕は知らない……日本の学校と違って出席確認とか特にしていないからね。

 ちゃんと名前がわからない。


「私はレゼ・ローランス。ローランス伯爵家の次女よ。得意魔法は氷結系の魔法。特許はお世話になっているわ」


「なるほどね……ん?ローランス家?」

 

「えぇ、ローランス家よ」

 

 家名を聞いて首を傾げた僕を前にレゼが念押すように再び家名を口にする。


「……それじゃあ?」


「えぇ。現在国家に対する重大な裏切り行為をした疑いをかけられて当主が拘束状態。一家存亡の危機にあるローランス家の次女が私よ」


「なるほどね」

 

 僕はレゼの言葉に頷く……ローエンス家の内情は僕も聞き及んでいる。

 お得意様だったのだ。当然情報は集めている……まぁまぁヤバめの状況だと聞いている。


「それで?そんなローエンス家の次女様がしがない呪文研究者に何の用かな?」


「用件は単純よ。冤罪を晴らすため、貴方に協力してほしいの」


「対価は?」


 ローエンス家は結構お金を落としてくれるお得意さまだ。

 お客さんを守るためなら別に対価なしでも助けてあげて良いけど……これでも僕は色々とがめつい呪文研究者。

 とれる対価がありそうなら取っておくべきだろう。


「対価はこの国が画策しているあなたの暗殺計画についての情報提供でどうかしら?」


「……へぇ?」

 

 何でもないことを告げるようにレゼの口から出てきた僕の暗殺計画と言う興味深い内容に僕の興味はかなり注がれた。

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