第5話

 いつもと何も変わらない実に平和な学園生活。


「じゃじゃーん。僕が新しく作った小物。自慢は魔法なんて使っていないのに動く子の頭だよ」


「「おぉー!」」


 いつめんといえるアレナとサーシャが僕の作った可愛い置物を前に感性を上げる。


「どうだろう?これは貴族の方々にも売れるかな?」


「売れるんじゃないかしら?少なくとも私は欲しいわ」


「ですです。私も欲しいです!これは間違いなく売れると思います!アレス様って手先も器用なんですね!」


「まぁね。僕ってば結構何でもできる万能っ子だから」

 

 この置物は魔法でちょいちょいと作ったわけではなく、ちゃんと僕が木から手で彫ったお手製のもの。

 僕は器用度すらカンストしているのだ。

 本当にこの体のスペックが高い……僕が僕じゃないみたいだ。


「流石は呪文研究者……といったところね。ということで更に金を得るルートが増えそうだし、そろそろ私たちに何かおごってもいい頃合いだと思うわ」


「ほう?守銭奴でおなじみ呪文研究者たる僕にたかるかね?」

 

 呪文研究者以上にお金をけちる存在もいない。


「たからせて頂戴。私たちの分のごはん代くらい余裕で出せるじゃない。毎日あなたたちが食べている最高級のランチを私たちにも」


「ぜひお願いしたいですねぇ」

 

 アレナとサーシャが僕に揉み手をしながら頼みごとをしてくる。


「ふー。やれやれ、自分のもの以外には一銭もお金を使わない……そう言われる呪文研究者からたかれるなど……随分と君たちも傲慢になったものです」


「うぐっ……やっぱりダメか」


「うぅ……」


「良いでしょう。おごってあげる」


「えぇ!?良いの!?やりぃ!」


「ありがとうございます!」

 

 僕の言葉を聞いたアレナとサーシャがハイタッチを交わして喜びをあらわにする。

 ……結構僕はお金遣いが荒いのだ。商会作ってみたり、土地買って家作って賃貸やったり。

 色々しているので、たくさんお金が入ってくるし、たくさんお金が飛ぶ。


「……ちょっと、良いかな?」

 

 僕がアレナとサーシャが話していたところ……僕と席が隣の女の子。

 とてもきれいでクールっぽい見た目……そして、その見た目通りにクールで僕のことを無視するまでに至るほどクールな女の子が僕へと話しかけてきた。

 ……初めて声聞いたぜ。

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