第22話

 僕のお店の地下……魔法によって強化され、頑丈に作られた地下室。

 そこで魔法の研究を僕はしていた。


「リスタ、この呪文を唱えて見て」


「わかりました」

 

 リスタは僕の言葉に頷き、手渡されたメモ用紙に書かれている呪文を読み上げる。


「この世界の主たる我が命ず。すべての人を絶やそうと決心せし我が唱えしそれは大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。雨が四十日四十夜地上に降り続ぐ。それは彼らが地を暴虐で満たしたからである。それは彼らが傲慢故である……」

 

 長ったらしい呪文を省略せずも唱えるリスタの魔力の流れを見て、僕はどんどんと記録を取っていく。

 神話の再現魔法。

 今、僕が作っている魔法は神話シリーズである。


「……やっぱり神話を交えると魔力の動きが不規則になるな。法則が変わっているのか?神話の存在が謎。現実世界の理をどう支配し、操ろうとも神話の再現は不可能……だけど、再現できる。これはどこから……?神話が絡むと新しい魔法発動プロセスを踏むのか?」

 

 神とは何か。

 アンタッチャブルとも言えるようなところを解明せんと研究を続ける僕は口をもにゅもにゅさせながら頭を回す。


「この世界の神話も試したいよな……って。このままは不味いな。■■■」 

 

 長ったらしい呪文の末にリスタが発動した魔法によって出現し、際限なく増え続ける水を吹き飛ばす。


「……お、おぼれ死ぬかと思いました」


「これくらいの対処は造作もないよ。じゃあ、ちょっと待っててね。少しだけ文言変えて些細な変化を見たいから」


「わかりました」


 完璧に聖書の言葉を引用しての呪文は微妙だった……ちょっと改変しての呪文は引用よりマシだった。

 どう改変するのが一番いいのか……旧約聖書だけじゃなくて他の洪水伝説も引っ張ってくるか?

 ……僕の記憶がどれだけあてになるかだよなぁ。


「まぁ、こんなもんで良いか」


 とりあえずは些細な改変を加えた魔法の呪文をリスタへと渡す。


「今度はそれを唱えてね」


「わかりました」


 僕が唱えるよりも呪文の変更による繊細かつ些細な魔力の変化、魔法発動効果の変化を色濃く見せる黄金の魔力を持つリスタのおかげで僕の呪文研究は順調に進んでいた。

 本当に黄金の魔力はデカい。

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