第10話

 クラスの女子たちに特許を配布し、感謝され、その後のぬるい授業を終えて昼。

 一緒にお昼ごはんを食べないかと誘ってくれるクラスメートたちの申し出を断り、リスタがいるであろう五年生のフロアへとやってきていた。


「みっけ」

 

 教室の隅っこで一人、縮こまっていたリスタを見つけた僕は一切の躊躇なく上級生の教室へと入っていく。


「……ッ!あんたは」

 

 リスタの前に立った僕に対してざわめく教室の生徒たちの声と僕の店に来ては封印され、そのままうっかり一時間強放置され、痛い目にあった三人の少女たちが引き攣った声を上げる。


「リスタ、昼食食べに行こ」 

 

 リスタの前に立った僕は笑顔で彼女を学食へと誘う。


「えっ、えっと……」


「学食の位置ってば僕、イマイチ把握しきれていないんだよね。案内頼むよ」

 

 僕はリスタの腕を強引に掴んで立ち上がらせる。


「良いね?」


「はい……」

 

 僕の言葉にリスタが頷く。


「おい!お前……下級生の癖にいきなり教室に入ってきて一体何様のつ」


「……」


 強引にリスタを学食の方へと連れて行こうとする僕に対して反感の意を示す男子生徒を僕に痛い目を合わされた少女が手で制する。


「ちょ、何だよ」


「……駄目よ」

 

 少女は男子生徒の言葉に対して首を振り、こちらへと敵意むき出しの視線を向けてくる。


「ふふふ……ちゃんとわかってくれたようで嬉しいよ」

 

 僕はそんな少女の方へと笑みを向け、口を開く。


「二度はないからさ……ちゃんと弁えてね?」


「……ッ!ただの平民がッ!」

 

 選民思想丸出しの少女は平民である僕に煽られ、一気に脳天へと血を上らせる。


「ただの平民を相手に何も出来ず、一瞬で無力化されたくせによく言うね」


「……あ、あまり調子に乗らないで頂戴」


「それはこちら側のセリフでもあるかもよ?ふふふ……ただの貴族が特権階級たる呪文研究者に喧嘩を売らない方が良いかもね」

 

 呪文研究者。

 僕の口から出てきた言葉を受け、クラス内でざわめきが起こる。


「リスタは僕のだから」

 

 僕は自分の隣にいるリスタを抱き寄せて微笑み、この場にいる者に対して牽制の言葉を投げかける。


「もしも、だよ?この場でリスタに対して何か害を与えるような真似をする輩がいるのだとしたら……それを僕は己への宣戦布告と捉えるからね?君たちが喧嘩を売る相手を選べる常識人であることを祈っているよ。それじゃあ、リスタ。ここまで長くなっちゃったけど学食の方に行こうか」


「……は、はい」

 

 僕の言葉にリスタは躊躇いながらも頷き、ともに教室から学食の方へと移動した。

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