第3話

 黄金の魔力。

 一般的には発動する魔法の威力を高めてくれる特殊な魔力。

 これだけでもかなり強い魔力であるが、呪文研究者にとってその魔力は更なる価値が生まれる。

 黄金の魔力は僅かな呪文の変化による些細な変化を色濃く出し、呪文つくりの際に非常に役立つ個性となっているのだ。


「ふひひひひ。とうとう僕も黄金の魔力持ちだぁ」

 

 風呂に入れ、散髪し、身なりを整え、アクセサリー類で着飾ってあげたリスタを眺めながらニマニマと口を緩ませる。

 

 異世界に転生して早いことでもう14年。

 ただの一般庶民生まれだった僕が前世の科学技術を利用して魔法の呪文を作り、金を稼いで個人の店を持ち、多くの太客を得てこの国でも有数のお金持ちとなった僕がついに一流の呪文研究者への入り口と呼ばれる黄金の魔力を手にしたのだ。

 嬉しくないわけがない。


「そ、それで……その呪文の方は……」

 

 ここまで黙って僕のされるがままになっていたリスタがおずおずと僕に対して声を上げてくる。


「あぁ……ごめん。忘れていたよ。リスタってばどんな魔法使う?」


「え?……その、既に特許が切れているような魔法しか使ったことなく……」


「あー、あれらか……あれらじゃ何の参考にもならないな」

 

 前世の創作じゃ古代魔法とかがクソ強いみたいな風潮があったが、この世界だと全然そんなことない。

 今の魔法の呪文の方がべらぼうに強い。

 火縄銃とM4A1カービンくらいの差がある。もう別物と言って良い……魔法の呪文の進歩は尋常じゃないのだ。


「まぁ、これだけ使えれば問題ないような魔法のセットの特許を渡しておくよ。この国の特殊部隊の基本装備として配備されている呪文だからちゃんと使えるようになれば十分強くなれると思うよ」

 

 僕の大切な大切な黄金の魔力。

 失うわけにはいかない……結構高額でプレミアな魔法の呪文セットの特許をリスタへとプレゼントする。

 渡すものとしては呪文が書かれた紙と特許を認定するという紙だけだ。

 これだけでおっけー。

 

 魔法の呪文にかかる特許の仕様として基本的には呪文一つ一つに特許料がかかり、回数ではなく時間で区切る。

 一日契約、一週間契約、月契約、年契約と言った感じだ。

 うちの場合は呪文のばら売りと並行してこれだけあれば十分戦えるよ!というセット売りもしていて、僕の呪文の特許のほとんどは年契約となる。

 なので僕の店に来るのは一年に一回、様々な業種の客が特許料の更新を行うために来る場合がほとんどでいつもお店はガラガラだ。

 ……小物の販売とか始めて見ようかな?


「……ッ!?!?こんな高級品を良いんですか!?」

 

 僕の言葉を聞いてリスタが驚愕の声を漏らす。


「もちろん。君の魔力にはそれだけの価値があるんだよ……ふふふ。黄金の魔力。あっ、君は僕の愛人だからね?ちゃんと毎日学校が終わったらこの店に来るんだよ?あっ、家もこっちに引っ越してもらおうかな……ちょいと改築して」


「わかりました!」


 リスタは僕の言葉に素直かつ元気に頷いた。

 うむうむ……素直な子は良いよォ?

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